気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
41 / 68

第41話 メアリーは負けた

しおりを挟む
「いいねぇ。この羽は最高だ」と聞こえたメアリーは前を歩くティナを押しのけて部屋に入った。

顔合わせがあるからとやって来た部屋だ。

「え?」とメアリーは体が動いていた。

「これって・・・これって・・・なにやってるの? わたしのよ! なに?勝手に!」と言いながら、メアリーがおば様の一人から扇子を取り返した。乱暴な動作に羽が一枚舞った。

「おや、乱暴な・・・ちょっと見ていただけなのに」とおば様は言った。

「ちょっとなに?これ。これはわたしの荷物じゃない。なにしてるの。無礼だわ」とメアリーが言うと

「なに言ってるの? 手土産を見ていたんだよ。どうやってわけようかって」とおば様が穏やかに言った。

「なんだい、手土産だろ?どうしたんだい?無作法だね。まるでわたしらが泥棒みたいだよ。ほっほっほ怖いね」とおば様が言った。

「全部返して。ライラ取り返して! 他の箱はどこ?」とメアリーが言うと

「どこにあるんだい?」「その辺じゃないかい?」「知らないよね」「運んでる最中だろ?」とおば様同士で言い合ってはメアリーを見て馬鹿にしてように笑った。

「荷物は全部、わたしのものよ」とメアリーは言うと、全員を見渡して

「やってられないわ。こんなとこ。出て行くわ。ライラ、さっさと荷物を回収して!ぐずぐずしないの」と怒鳴った。

「メアリーさん、正式な顔合わせをしないで出て行くのはいいけど、どこに泊まるのかい? 宿まで馬車で送ってあげるけど・・・無骨な国だからね。お嬢さんが泊まるような宿はないよ」とおば様の一人が優しく言い始めた。
「ない?」
「そう、ないんだよ。いやね、わたしらも鬼じゃないよ。船が出るまで泊めてあげるよ」
「だけど、残念だね。メアリーさんの手紙を見せて貰って期待していたんだけどね」
「ほんとにね、やっと尊敬できるお妃さまが来たと思っていたのに」
「仕方ないよ。社交辞令を信じて荷物を勝手に見たしね」
「だけど、さすがの荷物だよね。お妃さまのお支度は凄いよ」
「メアリーさん、荷物はニール達がまとめているから、部屋で待っていたらいいよ」
おば様たちは口々にそう言った。

次にライラに向かって
「あんたさんの主人は、期待はずれだね。お仕えする価値があるかい?」
「あんたさん、ライラさんだっけ?ここで誰かのそばで働かないかい?」
「次の船まで長いよ。このご主人と一緒に過ごすのは大変だよ」
とおば様たちは言ったが、ライラは

「わたしはメアリー様に仕えます」と返事をした。

「そうよ、あたりまえじゃない。だいたいここはおかしいわ。朝だって、お盆をこんな風に持って」とお盆を目の上にあげてる真似をして「お皿を運ぶってなに?意味わかんないわよ」とメアリーが言うと

「それは尊敬を表してるんだよ」とおば様の一人が言うと
「そうそう、これから、そういうのを教えて貰えたのにね」
「惜しいね」と他のおば様も一緒になって言った。


そこにニールがやって来ると

「ライラさん、あなたのご主人の部屋の準備が出来た。荷物もそこに出来るだけ運んだから」と話しかけた。

「あら、荷物を運んだって言った? ちゃんと報告しなさい」とメアリーが答えた。
「あぁ、殿下、それが荷物が・・・先にライラさんに確認して貰ったほうが・・・と思いまして」とニールが答えてた。

その間に
「あの手紙はうその手紙だったんだね」
「嘘吐きは嫌われるよ」
「いいじゃないの。嘘を吐いてまでこの国に嫁ぎたかったんだよ」
「そうだね、宝石がたくさん取れるからね」
「アッシュのそばに仕えたら、宝石まみれになれるからね」
「そうだね、王妃殿下はいつも見事なものをつけてるよね」
「まぁ、いやなんじゃ仕方ないよね。無理は良くないしね」
とおば様たちは盛り上がっていた。

それを耳にしたメアリーは、嫁ぐなら王族。王族じゃなきゃ嫁がないと騒いだ頃を思い出した。従姉妹で侯爵の娘のアリスが王族のエドワードに嫁ぐのだから、王女の自分も当然王族に嫁ぐと言って探して貰ったのが宝石鉱山がたくさんあるメニリーフ王国だった。

そして、母も父も、宰相も何度もこの国について説明して来た。一対一で、お茶を飲みながら、両親揃ってきちんと向かい合って。宰相とどっかのおじさんたちに囲まれて・・・兄も・・・そう言えばアリス如きも・・・
紹介しておいて断わるのが当たり前と言うのが奇妙だった。王族に王族が嫁ぐ。どこが問題なんだ。

そうか?おばとちいおじとか、ティナ、パールとかそんなのじゃなく。本物のちゃんとした王族に会ってないからおかしいのだ。

王族は王族としか話が通じないのだ。

メアリーはそう結論を出すと、おば様たちとちいおじ様たちを睨みつけた。

そこにニールとライラが迎えに来て、メアリーは部屋に行った。

「随分、地味な廊下ね」とメアリーが言うがライラもニールも答えない。更に進む。

「なによ、これ壁がないわよ。どういうこと?」とメアリーがニールに詰め寄るが、彼は黙って

「この先でございます」とだけ答えた。

「・・・この先って・・・」と言ったメアリーの声は今までの居丈高さがなくなり不安があった。

「こちらがお部屋です」とニールはドアを開けて通路に控えた。

ライラが前に出て先に部屋に入りメアリーを招いた。

恐る恐る部屋に入ったメアリーは

「なによ。ここは・・・」と叫んでライラに掴みかかった。

通路でそれを見ていたニールは

「やめろ・・・それはだめだ」とメアリーをライラから離した。

「だから、説明したでしょ。みんなが説明したでしょ。それでも嫁ぐって言ったのはあ・な・た・さ・ま!!!」とライラが仁王立ちして怒鳴った。

「ここまで理解してなかったとは・・・呆れました。便りも出せませんよ。船がないから。理解わかりますか?おまけに客じゃなくなりました」と続いて言うライラを見るメアリーは少し怯えているようだ。

「大丈夫ですよ。ライラさん。なんとかなります。あのお手紙のような態度で過ごせばいいんですよ。それだとこちらに馴染もうと努力する客です。許してくれます。やり直せます」とニールがライラに言うと、ライラはメアリーを見て

「今の聞きましたか?理解わかりますか?最初からやり直せるようです」と言った。

「最初からって・・・あの手紙って? あれはアリスが・・・」メアリーが力なくつぶやくと

「頑張りましょう。船が来たら・・・帰りましょう」とライラが言うとメアリーはうなずいた。

「荷物のそばに今は人がいません。必要なものを取りにいきましょう」とニールが言うと、ライラが

「殿下・・・いえ、これからはメアリー様と呼びますね。それのほうが無難ですので」と言って、改めて
「メアリー様、ニール様と一緒に行きましょう。荷物をどうにかしなくては」と言った。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ
恋愛
この話は 『内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』 の続編です。 アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。 そして、アイシャを産んだ。 父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。 ただアイシャには昔の記憶がない。 だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。 アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。 親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。 アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに…… 明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。 アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰? ◆ ◆ ◆ 今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。 無理!またなんで! と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。 もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。 多分かなりイライラします。 すみません、よろしくお願いします ★内緒で死ぬことにした の最終話 キリアン君15歳から14歳 アイシャ11歳から10歳 に変更しました。 申し訳ありません。

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。 そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。  私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?  自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?

処理中です...