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第39話 メニリーフの王宮

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メアリーを乗せた馬車はガタゴトガタゴト跳ねながら、城に入った。

外からドアが開けられた。

「メアリー様、よく来て下さいました」と手が差し伸べられた。メアリーはその手を取り馬車を降りた。

ドアを開けたのはメアリーの婚約者の従兄弟で側近のニールだ。メアリーが勘違いしないようにニールはすぐに
「わたしはアッシュ様の従兄弟で側近のニールです。アッシュ様はお部屋でお待ちです」と言った。

メアリーが挨拶をしようとすると迎えの男が
「手土産は馬車だ」と言った。するとニールの後ろにいた男たちがすぐに動いた。

「ニール、アッシュ様に会う前に一度、部屋に言って身仕舞いをします。馬車が乱暴に動いたから・・・」とメアリーが言うと

「そうか?でも部屋がどこか知らないからし、挨拶は早く行ったほうがいいですよ。もう遅いから・・・」とニールはメアリーに言いながら、ライラの顔もしっかりと見る。

「王女殿下、ここはニール様のおっしゃる通りにしたほうが・・・」とライラも言うと
「わかったわ。案内して頂戴」とメアリーはニールに言った。


そちらへ向かうと話し声が聞こえて、目的地だとわかった。予想より人が多いようだ。

と部屋から男が出てきた。ニールがすぐに声をかける。


「アッシュ。様。客人が到着されました」と男はメアリーとライラを見て

「よくいらした。歓迎します」と軽く頭を下げると

「時間なもので失礼」と足早に去って行った。とりなすように

「待ってたようですが、ちょっと遅い到着になったようですね。そのうち正式な挨拶の場を設けます」とニールが言った。


メアリーが答える前にニールは向きを変えた。


「王女殿下が駆けて来られました」と入口に立ってニールが言うと


「そちらが、リーブルから来たメアリー様?」と地味に髪を引っ詰めた女性が応じた。

「・・・はい、こちらが王女殿下のメアリー様でございます」とライラが答えると

「初めまして、メアリー様。お手紙が素晴らしく、わたくしども拝読させていただいて感動しましたのよ。わたくしは第二王子殿下のお側に仕えております。パールと申します。わたくしが皆さまにメアリー様を紹介させていただきます」と言った。

『王女である自分をこんな侍女が紹介する??!・・・いや、いい。この礼儀知らずの田舎者達にわたしが礼儀と格式を教えてやる!』とメアリーは腹の虫をなんとか押さえ微笑んだ。

「では、順に回りますのでわたくしの真似をして頭を下げて下さい。カーテシーはなさらないで下さい」とパールに言われたメアリーはうなずく代わりにパールを睨みつけた。

パールはわずかに口角を歪めたが、顎をしゃくると歩き始めた。

「おば様、こちらがアッシュ様のお側にやって来たメアリー様です」とパールが頭を下げた。メアリーは座っているおば様を見た。

頭をあげたパールは

「あのお手紙を書いた方です。おば様のお待ちかねの人です」と言った。

おば様は
「あの方ですね。メアリー様よろしくお願いします」と言うと微笑んだ。


「おば様、こちらがアッシュ様のお側にやって来たメアリー様です」とメアリーが返事をする前に隣りに話しかけた。

二番目おば様も「メアリー様よろしくお願いします」と言うと微笑んだ。


「おば様、こちらがアッシュ様のお側にやって来たメアリー様です」と三番目にパールが告げると返事は

「メアリー様よろしくお願いします。末永いお付き合いを期待しております」と言うものだった。

五番目のおば様でおば様は終わった。

どのおば様も友好的だったが

『いちいち名前を教える必要のない人たちね』と思ったメアリーは軽くうなずくだけで挨拶を終わらせた。

「ちいおじ様、こちらがアッシュ様のお側にやって来たメアリー様です」とパールが告げると

「手土産はたくさん持って来たようだね。いい心がけだ」と返って来た。

「はい、ありがとうございます」とメアリーは答えた。

『後で配るからありがたく受け取ってね』とメアリーは思っていた。


「ちいおじ様、こちらがアッシュ様のお側にやって来たメアリー様です」二番目のちいおじ様の前でパールが言っていた。

メアリーが無言で頭を下げたところへ上座からパールへ声がかかった。

「もう、良い。皆もそれがメアリーだとわかったであろう。メアリーここへ来て仲間入りの挨拶をすればいい」

「「「仲間入り!長老様が・・・」」」「「仲間!」」「「「認められたの」」」「「長老様!」」と周りから声が上がった。

メアリーはパールによって部屋の隅に用意されていた台の前に連れて行かれた。

「その台に上がって挨拶して下さい」とパールは言うと後ろに下がった。

メアリーは台に上がると胸を張って全体を見た。するとライラが手帳を手渡した。

「異国より 嫁ぐ尊き このわたし が皆様に告げます。ここに集まった皆さまの誉れを讃えます。この身を燈明の油ともなし、婚家の皆さまに尽くすことこそ喜びとして皆さまと暮らして参ります。わたくしのものは皆さまのものでございます。これから」とここで
「「「聞いた?」」」「「聞いたわよね!」」と大きな声が湧き上がった。

「挨拶はもういいわ」とパールが後ろから囁いた。

戸惑ったメアリーに向かってパールは

「疲れたでしょう。部屋に案内するわ」と言った。

パールに案内された部屋は客間だった。

「正式に結婚してないからお客様よ。足りないものがあったら遠慮なく言ってね。着替えるならそこに普段着なんか一式用意してあるから。食事はお部屋に運ばせるから、今日はゆっくりしてね」

「国王陛下との謁見はどうなってるの?」とメアリーが言うと

「落ち着いてからです。メアリー様はお客様です。国が迎えた賓客ではなく個人の客。ですから今後、家族となれるお方とわかれば家族として、義母、義父をして会って下さいます」
そういうとパールは急いで戻って行った。

「あーー疲れたぁ。着替えたいわ。荷物をここに届けるよう言って来て」とメアリーが言うとライラはなにか言いかけたが

「かしこまりました」と部屋を出た。

さきほどの部屋から、大きな声が聞こえる。ライラの予想通りだ。ライラはそれをメアリーに知らせるのは明日にしようと決めた。もう間に合わない。

それに今晩はライラもゆっくりしたい。

部屋に戻ろうとしたら、ニールが部屋から出て来た。

手にカバンを二つ持っている。船に持ち込んでいた手荷物だ。

「これは君たちの席に置いてあったから確保できた。すまんがこれだけだ」と言うニールからカバンを受け取るとライラはお礼を言った。

二人はお互いを見たが、共に言葉が見つからず軽く頭を下げると左右に分かれた。
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