気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第36話 海の一族

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「乾杯」と声が揃った。

「アリちゃん。今日はアワビが最高だ」「アリちゃの好きなバター焼きにするからな」
「イカが透き通って、美味しい」とアリスが言うと
「そんなに食べるとアワビが」と慌てた声がした。

「皆さん、このわたくしの背が伸びてふっくらしたのに気づかないのですか?」とアリスの声がする。
「うん、そんな気がしたが、着てるもんのせいかと思った。それビザンの服だろ?」

「そうそう、よくわかりましたね。いえ!わかっていません。そんな気がした以上に背が伸びてます」とアリスが燥いでいる。

「どうかな?」と一人がアリスに並んだ。それを見て

「おぉ、ホントだ」と全員が驚いた。

「良かったなぁ、アリちゃん」という声があちこちから聞こえた。


一方で

「ほら、飲め」とおかわりを注がれる。

「美味しいですね、酒も料理も」と言うと

「そうだろ!」とわたしを囲んで声を揃える。アリスのそばに行きたいのに・・・

「アリちゃ。アワビ食べても、腹は大丈夫か?」

「うん、だから・・・背が伸びてふっくらしたのは食べられるようになったからよ」とアリスが返事をしている。

「そうか・・・良かった。食べて飲むのは最高だからな」

「だけど、アリちゃん調子に乗って食べ過ぎるなよ。まだまだ美味しいのが、出て来るからな」と言うのに
「うん、ちゃんと気をつけてる」とアリスは答えている。


デイビスは、飲みながら食べながら周りをみた。楽しく暖かい。海の一族はアリスを気にしながらも、かまいすぎることなく自分たち同士でも楽しんでいる。

アレクはアリスから目を離さない。一族はアレクを囲んで次々と料理をすすめ。酒もすすめている。

デイビスもご機嫌で、話し込んだ。ラズベリーの隣りにはいつの間にか長老がやって来て、料理をすすめている。

「アリちゃん、良かったなぁ」という声があちこちから聞こえてきたなぁと思ったのが最後の記憶だった。


アレクは目を覚まして、すぐに『しまった』と思った。そばのテーブルに水差しが置いてある。

水を飲んで起き上がるとカーテンを開けた。

ノックの音がして「起きてますか?」と声をかけられた。返事をしてドアを開けると見覚えのある若者が立っていた。

「よかったら朝食をご一緒に」
「ありがとう、行きます」と言うと
「右に行って下さい・・・賑やかだから分かります」と返事が返って来た。

身支度をすませて右に行くと
「そこの料理を取って好きに食べて下さい」

見ると、海の一族の料理だろうか?見慣れないものと知っている料理が並んでいた。

アリスは両方を食べているようだ。アレクに気がついて手を振っているが、席を立つと
「おはようございます。アレク様。お料理の説明をしますね。朝食はわたくしも始めてで欲張りしてます」と言うと説明を始めた。

「パンの代わりのご飯、昨日召し上がりました?まぁこの白いのは味がないけど、美味しいです。こちらは牡蠣の炊き込みご飯ですね。美味しいですよ。卵焼きはオムレツみたいだけど味付けが違います。納豆は知らない。味噌汁はスープです。海草が入ってます。こっちは知ってる料理ですね。少しずつ試しておかわりすればいいです」と得意そうに言うと席に戻って行った。

教えられた通りにすこしずつお盆に盛ってアリスのそばに座ると、一人がお茶を注いでくれた。
「番茶って言います」とアリスがやはり得意そうに言うと

「アリちゃん、仲良しだね」と周りが言うとアリスは

「はい、助けられました。頼りにしてます」と素直に答えた。すると周りがアレクに向かって

「アリちゃんを頼むよ」と笑った。

アレクが食べているとラズベリーとデイビスが部屋に入って来た。ラズベリーはアリスのところに真っ直ぐやってくると
「アリス様、寝坊してしまい」と謝罪を始めたが
「いいのよ、ラズベリー」と声を潜めて「あれだけ楽しいとそうなるのは仕方ないでしょ」と言って
「朝食を食べるといいわ」と席を立とうとすると一族が寄って来て
「ラズベリーさん、料理の説明します」と言って連れて行った。デイビスもついて行った。

アリスは自分のを食べ終わると

「アレク様、たくさん飲んだんですね」と笑いをこらえながら言った。

「運んで貰ったんですよ。デイビス様も。ラズベリーはなんとか自分で歩いてましたね」とアリスに言われてアレクは自分の失態にぞっとしたが、無事で良かったと今更ながらほっとして、迷ったが牡蠣ご飯のお代わりを取りに行った。

アリスが一人になにか言うと長老がやって来た。

「アリスちゃん用事だって、なにかな?」と長老が言うとアリスは

「わたくし、今回は遊びに来たから手土産を用意したかったのですが、なにが好きかわからないので、わたくしのお料理を食べていただきたいと思いました。王国の野菜を持ってきました。それでスープを作ります。お台所を貸して下さい」と頭を下げた。

「アリスちゃんが」「アリちゃんのスープ」と周りでささやき声が聞こえたが、長老はアリスをじっと見た。しばらくすると
「あぁ驚いた。アリスちゃん、嬉しいことを言ってくれた。ありがとうございます。楽しみだ」と言った。
長老がそう言うと、一族の雰囲気が少し変わった。アレクに向ける視線が少し厳しい。デイビスも居心地が悪そうになっている。ラズベリーが不安そうなにしているのをそばのものが話しかけて宥めている。

アリスは「アリしゃん。手伝うからね」「アリス野菜持って来るのは任せろ。馬車に積んであるんだろ」とか話しかけられながら、呑気に部屋を出て行った。

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