31 / 68
第31話 メアリー
しおりを挟む
ラズベリーが戻って来るとアレクとデイビスは
「戻ってきたらスペーダ公爵たちと会いましょう。あっアリスはカーラさんと会うだけですね」と言うと、用事をすませて来ると出かけた。
「戻るまで散歩でもしてましょう。子馬が可愛いと聞きました。行ってみましょう」と言うラズベリーについてアリスは歩いた。
「王宮には毎日来てたけど、部屋にこもってばかりだったから、どこを見ても珍しいわ。こんなだったのね」と言うアリスを見るとラズベリーは泣きそうになったが、その気持ちを振り払い意識して歩幅を長くした。
「あら、お騒がせアリス」と声がした。
「王女殿下」とアリスは言うと礼をした。
「楽に」とメアリーは言うと
「どうして、わたしの手伝いをちゃんとしなかったの?」と低い声で言った。
「手伝いって手紙の代筆ですか? それはわたくしの仕事ではありません。自分で書くのがいやなら侍女に書かせればいいのでは?言葉は同じですよ」とアリスが答えた。
「わたしはあなたもあちらと親しくなればいいと思っていたのよ。なんだか、お兄様があなたが忙しくしていたって騒いでいるけど、たかが、侯爵の娘がやれるような仕事よ。おおげさなんだから・・・だから許してあげるわ。ちょっと書いて頂戴。簡単よ。それにお兄様が教えて下さったのよ。遅れてしまったお手紙が届くまでの時間が無駄だから、いっそ早めにあちらへ行けと。だから少しだけ書けばいいの」とメアリーが言った時アリスのなかに少しだけ残っていた恨みが悪意に変わり育ち始めた。
「なるほど、わたくしもあちらと親しくなる?それはやめておきますが、書いてみましょう。でも最後に王女殿下に確認します。宰相も国王陛下も、王妃殿下もあちらの国について説明なさいました。それは理解していますね。縁談は、王女たる者。王室に嫁ぐのが当たり前と言う殿下の希望にそってこちらから申し込みました。お間違いないですね」
「えぇそうよ。しつこいわね。わかっているわよ」メアリーが返事をすると
「それでは、書きます。ほんとうに簡単にですが」とアリスも答えた。
「まぁこれでアリスに汚名返上の機会をあげたってことね。感謝してね」とメアリーが尊大に答えると
そばに控えているラズベリーを一瞥するとそのまま背を向けて去って行った。
「メニリーフ王国に嫁ぐのよ」とアリスがラズベリーに囁いた。
「え? あそこへ?」とラズベリーが驚いた。
「えぇ、合う人は合うでしょうけど・・・メアリーは無理ね」とアリスが言った。
「わたくしも無理です」とラズベリーが首を振りながら言った。
「誰でもそうだと思うわ。だから聞いていたと思うけど、皆が説明したの。何度も説明したの」とアリスが言うと
「随分、確認するなと思ってましたが・・・それはそうですね」とラズベリーが言うと
アリスが芝居がかった口調で
「説明は 彼女の耳を 素通りよ。
そんなこと ある理由ないわ ばかばかしい
メアリーはこんな反応なの。
手紙だってこの様式で書かなくても、この国の様式でいいのよ。あちらもご存知だから、面倒だからってことみたいなの。わたくしはもう関係ないけど・・・意地悪してやりたくなったの」と言うと
「それくらい当たり前でしょう。気にすることは、ないですよ。さっ行きましょう」とラズベリーは先に立った。
「おぉ可愛い・・・」子馬はしっかりと立って馬房の真ん中に立ってアリスを見ていた。母馬はやや離れたところから、やはりアリスを見ていた。
「おいで」とアリスがため息まじりで呼びかけると子馬はしっかりした足取りで近寄って来た。
まだ歯がはえていない子馬のまえに腕を出すと、歯のない口で吸い付いてきた。
歯が生えてしまうとこれは出来ない。いい時に来た。
「美味しいですか」と言うとその珍しい薄い青の目を見た。
子馬はアリスを見ながらチュパチュパさせた。っと母馬が近寄って来た。
アリスは母馬のまえに握りこんだ手を見せた。その手をそっと動かして母馬の頬を撫でた。
嫌がらないのがわかると手のひらで頬を撫でた。母馬はアリスに頬を触らせたまま、子馬の頭を鼻の先で撫でた。
アリスは子馬の頬も撫でた。母子を撫でながらアリスが
「いい子ね」「可愛いね「美人になるよ」「そのお目目でなにをみるの」とか言っていると
「アリス様。戻る時間です。明日また来ましょう」とラズベリーが声をかけた。
「またねーーー」と馬に声をかけた時、アリスのなかのもやもやは消えてメアリーの手紙に意地悪をするのはやめようと思った。彼女が不幸になったとしても気にしないけど、不幸に向かう背を押すのはやめよう。
「戻ってきたらスペーダ公爵たちと会いましょう。あっアリスはカーラさんと会うだけですね」と言うと、用事をすませて来ると出かけた。
「戻るまで散歩でもしてましょう。子馬が可愛いと聞きました。行ってみましょう」と言うラズベリーについてアリスは歩いた。
「王宮には毎日来てたけど、部屋にこもってばかりだったから、どこを見ても珍しいわ。こんなだったのね」と言うアリスを見るとラズベリーは泣きそうになったが、その気持ちを振り払い意識して歩幅を長くした。
「あら、お騒がせアリス」と声がした。
「王女殿下」とアリスは言うと礼をした。
「楽に」とメアリーは言うと
「どうして、わたしの手伝いをちゃんとしなかったの?」と低い声で言った。
「手伝いって手紙の代筆ですか? それはわたくしの仕事ではありません。自分で書くのがいやなら侍女に書かせればいいのでは?言葉は同じですよ」とアリスが答えた。
「わたしはあなたもあちらと親しくなればいいと思っていたのよ。なんだか、お兄様があなたが忙しくしていたって騒いでいるけど、たかが、侯爵の娘がやれるような仕事よ。おおげさなんだから・・・だから許してあげるわ。ちょっと書いて頂戴。簡単よ。それにお兄様が教えて下さったのよ。遅れてしまったお手紙が届くまでの時間が無駄だから、いっそ早めにあちらへ行けと。だから少しだけ書けばいいの」とメアリーが言った時アリスのなかに少しだけ残っていた恨みが悪意に変わり育ち始めた。
「なるほど、わたくしもあちらと親しくなる?それはやめておきますが、書いてみましょう。でも最後に王女殿下に確認します。宰相も国王陛下も、王妃殿下もあちらの国について説明なさいました。それは理解していますね。縁談は、王女たる者。王室に嫁ぐのが当たり前と言う殿下の希望にそってこちらから申し込みました。お間違いないですね」
「えぇそうよ。しつこいわね。わかっているわよ」メアリーが返事をすると
「それでは、書きます。ほんとうに簡単にですが」とアリスも答えた。
「まぁこれでアリスに汚名返上の機会をあげたってことね。感謝してね」とメアリーが尊大に答えると
そばに控えているラズベリーを一瞥するとそのまま背を向けて去って行った。
「メニリーフ王国に嫁ぐのよ」とアリスがラズベリーに囁いた。
「え? あそこへ?」とラズベリーが驚いた。
「えぇ、合う人は合うでしょうけど・・・メアリーは無理ね」とアリスが言った。
「わたくしも無理です」とラズベリーが首を振りながら言った。
「誰でもそうだと思うわ。だから聞いていたと思うけど、皆が説明したの。何度も説明したの」とアリスが言うと
「随分、確認するなと思ってましたが・・・それはそうですね」とラズベリーが言うと
アリスが芝居がかった口調で
「説明は 彼女の耳を 素通りよ。
そんなこと ある理由ないわ ばかばかしい
メアリーはこんな反応なの。
手紙だってこの様式で書かなくても、この国の様式でいいのよ。あちらもご存知だから、面倒だからってことみたいなの。わたくしはもう関係ないけど・・・意地悪してやりたくなったの」と言うと
「それくらい当たり前でしょう。気にすることは、ないですよ。さっ行きましょう」とラズベリーは先に立った。
「おぉ可愛い・・・」子馬はしっかりと立って馬房の真ん中に立ってアリスを見ていた。母馬はやや離れたところから、やはりアリスを見ていた。
「おいで」とアリスがため息まじりで呼びかけると子馬はしっかりした足取りで近寄って来た。
まだ歯がはえていない子馬のまえに腕を出すと、歯のない口で吸い付いてきた。
歯が生えてしまうとこれは出来ない。いい時に来た。
「美味しいですか」と言うとその珍しい薄い青の目を見た。
子馬はアリスを見ながらチュパチュパさせた。っと母馬が近寄って来た。
アリスは母馬のまえに握りこんだ手を見せた。その手をそっと動かして母馬の頬を撫でた。
嫌がらないのがわかると手のひらで頬を撫でた。母馬はアリスに頬を触らせたまま、子馬の頭を鼻の先で撫でた。
アリスは子馬の頬も撫でた。母子を撫でながらアリスが
「いい子ね」「可愛いね「美人になるよ」「そのお目目でなにをみるの」とか言っていると
「アリス様。戻る時間です。明日また来ましょう」とラズベリーが声をかけた。
「またねーーー」と馬に声をかけた時、アリスのなかのもやもやは消えてメアリーの手紙に意地悪をするのはやめようと思った。彼女が不幸になったとしても気にしないけど、不幸に向かう背を押すのはやめよう。
3,839
お気に入りに追加
4,912
あなたにおすすめの小説
言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!
朝山みどり
恋愛
大富豪に生まれたマリカは愛情以外すべて持っていた。そして愛していた結婚相手に裏切られ復讐を始めるが、聖女として召喚された。
怯え警戒していた彼女の心を国王が解きほぐす。共に戦場へ向かうが王宮に反乱が起きたと国王は城に戻る。
マリカはこの機会に敵国の王と面会し、相手の負けで戦争を終わらせる確約を得る。
だが、その功績は王と貴族に奪われる。それどころか、マリカは役立たずと言われるようになる。王はマリカを庇うが貴族の力は強い。やがて王の心は別の女性に移る・・・
今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。
王命なんて・・・・くそくらえですわ
朝山みどり
恋愛
ティーナは王宮薬師の下っ端だ。地下にある自室でポーションを作っている。自分ではそれなりの腕だと思っているが、助手もつけてもらえず一人で働いていた。
そんなティーナが王命で公爵と結婚することになった。驚くティーナに王太子は公爵がひとめぼれからだと言った。
ティーナだって女の子。その言葉が嬉しいし、婚姻届にサインするとき会った公爵はとても素敵だった。
だが、それからすぐに公爵は仕事だとかで一度も会いに来ない。
そのうえ、ティーナの給料の大半が公爵家に渡される事になった。ティーナにはいるのは端数の部分だ。
お貴族様っていうのはほんとに民から金とるしか考えてないねとティーナは諦めて休みの日も働いて食いつないだ。
だが、ある日ティーナがプッツンとなる出来事が起きた。
働いたって取り上げられるなら、働くもんかと仕事をやめて国一番の歓楽街のある町に向かう事にした。
「わたしは都会が似合う女だからね」
やがて愛しいティーナに会えると戻ってきたジルフォードは愕然とする。
そしてすぐに追いかけたいけどそれも出来ずに・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる