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第25話 王国に戻って
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船がリーブル王国に近づく。アリスは陸をじっと見ていた。
「こんな形で王国を見るのは始めてです。まぁあまり見たことはないですけど・・・海の一族がこうやって働いているとは・・・王族や貴族はこうして助けて貰っているんですね。実際見るとわたくしはなにも知らなかったと思います。あの書類のなかでしか把握していませんでした」
「これからは、わたしと一緒に見ていこう。アリスの視点はわたしを補っている」
そこにラズベリーがお茶の支度が出来たと呼びに来た。
「行こうか。アリスの一番大事な仕事だ」とアレクが手を差し出した。
「アリスの気持ちはわかるが、王室や侯爵家にあなたの無事を連絡しないわけにはいかない」お茶が終わった時、アレクが改まって切り出した。
「・・・はい。アレク様。わたくしもそう思います」とアレクを見てアリスははっきりと言った。
「難しいことではないですよね。単純ですよね。置き去りにされた娘が戻って来た。わたくしのあちらでの扱いがどうなっているのか?」と言葉を切ってアレクを見たがアレクはなにも言わなかった。
「わたくしの扱いはどうでもいいです。わたくしのやっていた仕事は誰でも出来る仕事です。その程度の仕事です。わたくしは大変でしたし負担でしたが・・・
王太子の婚約者も、もう御免です。侯爵家の娘も御免です。
姿を見せなければ死んだとされ終わりになると思います。それがいいと思ってましたが、わたくしの手で終わりにします。もう御免だ。いやだ。大嫌いと言ってやりたいです」とアリスが言うと
「わたしが思っていたより、強いな。たのもしい。わたしの力も利用して欲しいな。これでも頼りになるよ。皇族だぞ」とアレクが腕をさすると
「お願いします」と思いがけず素直なアリスの言葉にアレクは顔をほころばせた。
上陸するとさっそく服を買いに行った。一着だけ落ち着いた緑のドレスを買ったが、後は可愛いフリルやレースの物を買った。デイビスがアレクをなだめて
「まだこれから、仕立てることもあるんだから、これくらいで」と言い聞かせた。
それから、待っていた馬車に乗り込んだ。
「メイナード侯爵の所に使いを出した。縁切りの為に帰ると」と告げるとアリスは
「はい、ありがとうございます」と答えた。アレクはなにか言いかけたがなにも言わなかった。
「アレク様。わたくし意地悪なことを考えてます。少しは良いですよね。それとお給料の前借りをお願いします」と言うと
「給料?そうか渡してなかったね。すぐに用意しよう。だけどなにが欲しいのかい?」
「買い物じゃなくて、食費を払いたくて」とアリスが恥ずかしそうに言うと
「そうだったね。だけどそれは、わたしのほうからお礼を」と言うと
「いえ、アレク様、わたくしが払いたいのです。わたくし本当に・・・本当に・・・えーっと感謝してるのでわたくしが自分で働いて払いたいのです」
アリスの言葉をうなずきながら、アレクは聞いていたが
「そうだな。アリスは働いているんだった。自分で払えるな。だけど前借りじゃないと足りないな」と言うと
「はい、わたくし、働いて返しますね」と明るく言うアリスにアレクは調子が狂ってしまい、あいまいに笑ってしまったが
「急なことだから、わたしが立て替えよう。それでいいな」とアレクが言うと
「はい、甘えます」とアリスが言った時、アレクは何故か泣きたくなって
「うん、そうしてくれ」と窓に目をやった。
護衛が警戒態勢に入ろうとしていた。
「騎馬の一団がやって来ます」護衛の一人がそう告げた。
「こんな形で王国を見るのは始めてです。まぁあまり見たことはないですけど・・・海の一族がこうやって働いているとは・・・王族や貴族はこうして助けて貰っているんですね。実際見るとわたくしはなにも知らなかったと思います。あの書類のなかでしか把握していませんでした」
「これからは、わたしと一緒に見ていこう。アリスの視点はわたしを補っている」
そこにラズベリーがお茶の支度が出来たと呼びに来た。
「行こうか。アリスの一番大事な仕事だ」とアレクが手を差し出した。
「アリスの気持ちはわかるが、王室や侯爵家にあなたの無事を連絡しないわけにはいかない」お茶が終わった時、アレクが改まって切り出した。
「・・・はい。アレク様。わたくしもそう思います」とアレクを見てアリスははっきりと言った。
「難しいことではないですよね。単純ですよね。置き去りにされた娘が戻って来た。わたくしのあちらでの扱いがどうなっているのか?」と言葉を切ってアレクを見たがアレクはなにも言わなかった。
「わたくしの扱いはどうでもいいです。わたくしのやっていた仕事は誰でも出来る仕事です。その程度の仕事です。わたくしは大変でしたし負担でしたが・・・
王太子の婚約者も、もう御免です。侯爵家の娘も御免です。
姿を見せなければ死んだとされ終わりになると思います。それがいいと思ってましたが、わたくしの手で終わりにします。もう御免だ。いやだ。大嫌いと言ってやりたいです」とアリスが言うと
「わたしが思っていたより、強いな。たのもしい。わたしの力も利用して欲しいな。これでも頼りになるよ。皇族だぞ」とアレクが腕をさすると
「お願いします」と思いがけず素直なアリスの言葉にアレクは顔をほころばせた。
上陸するとさっそく服を買いに行った。一着だけ落ち着いた緑のドレスを買ったが、後は可愛いフリルやレースの物を買った。デイビスがアレクをなだめて
「まだこれから、仕立てることもあるんだから、これくらいで」と言い聞かせた。
それから、待っていた馬車に乗り込んだ。
「メイナード侯爵の所に使いを出した。縁切りの為に帰ると」と告げるとアリスは
「はい、ありがとうございます」と答えた。アレクはなにか言いかけたがなにも言わなかった。
「アレク様。わたくし意地悪なことを考えてます。少しは良いですよね。それとお給料の前借りをお願いします」と言うと
「給料?そうか渡してなかったね。すぐに用意しよう。だけどなにが欲しいのかい?」
「買い物じゃなくて、食費を払いたくて」とアリスが恥ずかしそうに言うと
「そうだったね。だけどそれは、わたしのほうからお礼を」と言うと
「いえ、アレク様、わたくしが払いたいのです。わたくし本当に・・・本当に・・・えーっと感謝してるのでわたくしが自分で働いて払いたいのです」
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「はい、わたくし、働いて返しますね」と明るく言うアリスにアレクは調子が狂ってしまい、あいまいに笑ってしまったが
「急なことだから、わたしが立て替えよう。それでいいな」とアレクが言うと
「はい、甘えます」とアリスが言った時、アレクは何故か泣きたくなって
「うん、そうしてくれ」と窓に目をやった。
護衛が警戒態勢に入ろうとしていた。
「騎馬の一団がやって来ます」護衛の一人がそう告げた。
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