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第14話 捜索 侯爵目線
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湖にはあのブランコが、まだ残っていた。遊びに来た平民が遊んでいる。片付けをしていないのだな・・・当番はどこなんだ? アリスに押し付けて楽しているってことか。
なにも残っていない。あの雨だ・・・残るわけない。
「血のあとも流れるよな」と誰かが言った。
え? 血ってどういう?だが次の瞬間アリスが血を流す可能性が現実のものとなった。
自分はなにをやっていたんだ。呑気に家で過ごしていた。
地面の捜索と聞き込み、それと地域の騎士団の詰所を回った。
なにか報告が来ていないかを探す為だ。
すると気になることがあった。何者かが、女性の捜索依頼が来てないか問合わせているのだ。
その問い合わせの最後は港だった。
問合わせた者は金髪で黒い目で、丁寧なもの言いだということだが・・・
何故、捜索依頼が来ているかを問題にしたのだろうか?
「父上、わたしは兄としてアリスを守っているつもりでしたが、なにも気づいていませんでした。あの日も早起きに文句を言ったりして。最低だ」
息子のチャールズがそう言って来た。
こいつは気づいたのか。アリスが戻って来たら一緒に謝ろう。
わたしはそう思い、チャールズの背中を軽く叩いた。
わたしはそれらしき人物を見かけたら知らせてくれるように頼み、アリスの捜索依頼を出した。
そしてわたしはアリスの生活がどんなだったのかを調べ始めた。
「アリスは朝食の卵はなにが好きだったのか?」と執事に聞いてみたことが始まりだった。
「アリス様は朝、召し上がらずに家を出られておりますが」と言う答えに驚いた。
姉上と打ち合わせたとき、朝は家で食べさせたいと自分が主張したのだ。一緒に食べたくて。それなのにどうして?
ただ、アリスの朝が早すぎて最初の一週間はがんばって一緒に朝食を食べたが、家族全員が音をあげてアリスだけ先に食べるようになったのだが・・・
「奥様から皆さんが召し上がる時にパンが冷めていておいしくないから、アリス様は別にとお話がありまして、アリス様にお城で朝を召し上がるようにと言いつけておられましたが」
城で食べていたのか・・・まだ子供だったアリスが誰よりも早起きして城に行くのを見送りもせずにのんびり寝ていたんだな・・・焼きたてのパンを食べたいから食事をするなと言う親ってことか。
そうだ、アリスと一緒に仕事をしていた者がいるんだ。話を聞こうと自分はアリスの執務室にやって来た。
あのときはいなかった男が二人、執務室のまえで宰相と話をしていた。
「バートと申します。わたしたちはここの配属ではありません」と一人が言うともう一人も
「そうです。たまたまアリス様の手伝いをするように命じられて来ていただけです。辞令もありませんよ。ヘドラーです」とうんざりした顔で言っている。
それに対して宰相が
「わかっておる。だが、おまえたちは慣れておるであろう」と言うと
「慣れておる。どういう意味ですか?ご存知でしょう。これには、文官がみてはいけない書類も混ざっております。見てもいい人は、国王陛下、王妃殿下、王太子殿下、王女殿下。それと正式な辞令を受けて手伝える文官ですね。ですがアリス様が皆様から頼まれて、わたしどもが手伝う。例外的に処理していました」
「そうだろうが、ここまで溜まってしまったのだ。処理をして欲しい」と宰相が食い下がると
「王室の方がなさればいいのではありませんか?」とヘドラーが言った。宰相は
「それは無理なんだ」と答えた。
「宰相様がやればいいのでは?」とバートが皮肉な笑いを浮かべて言うと
「そうですよ。朝食食べて来たんでしょ!食べる暇あるんでしょ!」とヘドラーが付け加えた。
朝食! アリスは姉上たちと食べているはずだよねと自分に言い聞かせる。とんでもないことを知るような気がする。
結局王太子殿下を呼んで、取り敢えず書類の山を見せようと言うことになった。宰相は急ぎ足で去って行った。
不機嫌な様子でやって来た殿下は、書類の山を見て
「なんで、こんなに溜まっているのだ?」と言ったが、なにげなく一枚手に取ると
「なに?これがここにあるんだ。甘えすぎだろう」と呟き、はっとして次を見て
「姉上と来たらこれは自分でやることだろう。婚姻する気あるのか?」
「母上もこれは見せたらいけないことだろう」
「父上・・・」
とか最初は賑やかに仕分けていたが、だんだん口数が少なくなり眉間のしわが定着してきた。バートとヘドラーはそんな殿下を薄笑いを浮かべて見ていた。
自分は二人に話しかけた。
「お二人はアリスとここで仕事をしていたのかな?アリスのことを教えてもらえませんか?」自分の言葉に
「アリス様のところの?」と言われてうなずいた。
二人はゆっくりと目上の人間に対する礼をとった。それは本当にゆっくりとした動作でその間二人の視線はわたしから離れなかった。
なにも残っていない。あの雨だ・・・残るわけない。
「血のあとも流れるよな」と誰かが言った。
え? 血ってどういう?だが次の瞬間アリスが血を流す可能性が現実のものとなった。
自分はなにをやっていたんだ。呑気に家で過ごしていた。
地面の捜索と聞き込み、それと地域の騎士団の詰所を回った。
なにか報告が来ていないかを探す為だ。
すると気になることがあった。何者かが、女性の捜索依頼が来てないか問合わせているのだ。
その問い合わせの最後は港だった。
問合わせた者は金髪で黒い目で、丁寧なもの言いだということだが・・・
何故、捜索依頼が来ているかを問題にしたのだろうか?
「父上、わたしは兄としてアリスを守っているつもりでしたが、なにも気づいていませんでした。あの日も早起きに文句を言ったりして。最低だ」
息子のチャールズがそう言って来た。
こいつは気づいたのか。アリスが戻って来たら一緒に謝ろう。
わたしはそう思い、チャールズの背中を軽く叩いた。
わたしはそれらしき人物を見かけたら知らせてくれるように頼み、アリスの捜索依頼を出した。
そしてわたしはアリスの生活がどんなだったのかを調べ始めた。
「アリスは朝食の卵はなにが好きだったのか?」と執事に聞いてみたことが始まりだった。
「アリス様は朝、召し上がらずに家を出られておりますが」と言う答えに驚いた。
姉上と打ち合わせたとき、朝は家で食べさせたいと自分が主張したのだ。一緒に食べたくて。それなのにどうして?
ただ、アリスの朝が早すぎて最初の一週間はがんばって一緒に朝食を食べたが、家族全員が音をあげてアリスだけ先に食べるようになったのだが・・・
「奥様から皆さんが召し上がる時にパンが冷めていておいしくないから、アリス様は別にとお話がありまして、アリス様にお城で朝を召し上がるようにと言いつけておられましたが」
城で食べていたのか・・・まだ子供だったアリスが誰よりも早起きして城に行くのを見送りもせずにのんびり寝ていたんだな・・・焼きたてのパンを食べたいから食事をするなと言う親ってことか。
そうだ、アリスと一緒に仕事をしていた者がいるんだ。話を聞こうと自分はアリスの執務室にやって来た。
あのときはいなかった男が二人、執務室のまえで宰相と話をしていた。
「バートと申します。わたしたちはここの配属ではありません」と一人が言うともう一人も
「そうです。たまたまアリス様の手伝いをするように命じられて来ていただけです。辞令もありませんよ。ヘドラーです」とうんざりした顔で言っている。
それに対して宰相が
「わかっておる。だが、おまえたちは慣れておるであろう」と言うと
「慣れておる。どういう意味ですか?ご存知でしょう。これには、文官がみてはいけない書類も混ざっております。見てもいい人は、国王陛下、王妃殿下、王太子殿下、王女殿下。それと正式な辞令を受けて手伝える文官ですね。ですがアリス様が皆様から頼まれて、わたしどもが手伝う。例外的に処理していました」
「そうだろうが、ここまで溜まってしまったのだ。処理をして欲しい」と宰相が食い下がると
「王室の方がなさればいいのではありませんか?」とヘドラーが言った。宰相は
「それは無理なんだ」と答えた。
「宰相様がやればいいのでは?」とバートが皮肉な笑いを浮かべて言うと
「そうですよ。朝食食べて来たんでしょ!食べる暇あるんでしょ!」とヘドラーが付け加えた。
朝食! アリスは姉上たちと食べているはずだよねと自分に言い聞かせる。とんでもないことを知るような気がする。
結局王太子殿下を呼んで、取り敢えず書類の山を見せようと言うことになった。宰相は急ぎ足で去って行った。
不機嫌な様子でやって来た殿下は、書類の山を見て
「なんで、こんなに溜まっているのだ?」と言ったが、なにげなく一枚手に取ると
「なに?これがここにあるんだ。甘えすぎだろう」と呟き、はっとして次を見て
「姉上と来たらこれは自分でやることだろう。婚姻する気あるのか?」
「母上もこれは見せたらいけないことだろう」
「父上・・・」
とか最初は賑やかに仕分けていたが、だんだん口数が少なくなり眉間のしわが定着してきた。バートとヘドラーはそんな殿下を薄笑いを浮かべて見ていた。
自分は二人に話しかけた。
「お二人はアリスとここで仕事をしていたのかな?アリスのことを教えてもらえませんか?」自分の言葉に
「アリス様のところの?」と言われてうなずいた。
二人はゆっくりと目上の人間に対する礼をとった。それは本当にゆっくりとした動作でその間二人の視線はわたしから離れなかった。
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読んでいただいてありがとうございます。感想を送ってくださいましてありがとうございます。なかなかお返事が出来なくて心苦しいです。どの感想もたいへんありがたく、励まされるものです。ただお返事が・・・本当にすみません。この作品とほぼ同時に「王妃はわたくしですよ」と言うのを投稿しています。こちらはしばらくお休みしていたものですが、なんとか再開しました。良かったらそちらも読んでみて下さい。
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