気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
12 / 68

第12話 アリス・・・すまない メイナード侯爵視点

しおりを挟む
「アリス」と王太子がノックをしたが返事がなかった。
「開けるよ」と王太子がドアを開けてなかに入った。わたしも続いて入って驚いた。
部屋はこざっぱりと片付いていた。というか殆どなにもなかった。王太子妃教育が終わった今はアリスは部屋で刺繍したり音楽を楽しんだりお茶をして、夕食を食べて帰ってきていると姉上から聞いていたが、ここには人がいた気配がない。

「アリスつきの侍女を呼んで」と王太子が言ったが反応はないので侍女長を呼ぶように王太子が言っている。この部屋のベッドの状態を見たらアリスがピクニックの日にこの部屋に戻ったとは思えない。もちろんそれ以降も以前も・・・なぜならベッドはあるが毛布もシーツもないのだ。たまに城に泊まると連絡が来ていたがどこに?
やがてやって来た侍女長は
「アリス様の?・・・いませんよ」とあっさり答えた。

「え?いない」と王太子が間抜けな表情で言うと
「いませんよ。最初から」と侍女長が自信たっぷりに答えた。

「最初とは?」
わたしまで間抜けな顔になったのを見て侍女長は
「婚約者となられてからだから最初からですね。侍女はついていませんよ。そう決まったと伝達されました。わたくしも不思議に思いまして、王妃殿下に確認しましたので間違いありません。それにアリス様はここに殆どいませんよ・・・最近ではピクニックのまえにここで厨房用の服に着替えたときでしょうか?」と記憶を辿って答えてくれた。
「厨房? なんだそれは・・・いや、その、アリスはここでお茶してのんびりとか?」とわたしが聞くと
「いいえ、お茶とはどういうことでしょうか?王妃殿下とも滅多に・・・なにをなさっているのでしょうかね」と侍女長が言うのを聞くとただでさえ冷えていた体がずんと冷えたのを感じた。

「殿下、ピクニックから帰る馬車は殿下と両陛下。メアリー殿下の四人で?」と言うと
「もちろんだよ。朝と同じだよ。アリスの警告を聞いてすぐに馬車に乗ったよ」と王太子が答えるのを聞いて置き去りにしたのかも知れないと思いいたり、立っていられなくなった。

しばし床に手をついて息を整えると立ち上がり、もう一度執務室へ戻った。

執務室には姉上が待っていた。
「アリスはどこにいるの?ピクニックの片付けもせずに遊びほうけて」と言うのを聞いて頭に血が上った。
「片付けとはなんでしょうか?姉上。いえ、王妃殿下。アリスの仕事ですか?」と口調が冷たくなるのを止められなかった。
「そう、片付けよ。あの子は慣れているからやらせてるのよ」と姉上が答えるのを聞いて
「慣れるほどやらせているのですね。毎年ですか?」と言うと
「えぇ、毎年よ。あの子はいままで、ずっと留守番だったからせめて片付けで参加させてあげていたのよ」
「留守番?」と不思議に思って聞くと
「えぇ、お城の責任者として留守番よ」と姉上があたりまえの顔で答えた。
なんてこと・・・わたしは・・・なにも気づいてなかったのか。

「爵・・・侯爵・・・侯・・・侯爵」
と王太子に呼びかけられていた。
「はい。殿下」と返事すると
「アリスが馬車にいないのを気にしなかったのですか?」と非難された。
非難されても仕方ない・・・王家と一緒だと思い込んでいたから・・・

「探すように手配しました」と王太子が得意げに言うのを聞いたが
「わたしも家の騎士団を動員して探します。これで失礼します」と家に向かった。


しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ
恋愛
この話は 『内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』 の続編です。 アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。 そして、アイシャを産んだ。 父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。 ただアイシャには昔の記憶がない。 だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。 アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。 親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。 アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに…… 明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。 アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰? ◆ ◆ ◆ 今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。 無理!またなんで! と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。 もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。 多分かなりイライラします。 すみません、よろしくお願いします ★内緒で死ぬことにした の最終話 キリアン君15歳から14歳 アイシャ11歳から10歳 に変更しました。 申し訳ありません。

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

処理中です...