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第9話 夕食で
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ビザン帝国の港に着いた。さすがの特権で下船して迎えの馬車に乗り込むと、すぐに洋品店に行った。
アリスは嬉しかった。自分の好みの服を選べるのだ。アリスは黄色いワンピースを先ず選んだ。
丸い襟ぐりに白い襟がついている。アリスの年齢には少し幼いデザインだ。だがアリスはこういうのを着てみたかったのだ。いつも王妃の勧めで王妃よりも地味なものを着ていたのだ。だから好きなのを着る。もう一枚はピンクで袖がレースになっていて、可愛い。
「お嬢様二枚は少ないですよ。あと二・三枚必要ですよ」とラズベリーが言ったが
「ううん、二枚で充分よ。そういえばわたくしが着ていたのはどうなりましたか?」
「お手入れして綺麗になりましたが・・・お嬢様にはちょっと」とラズベリーが言った。
「わたくしもそう思うけど、綺麗になったならそれも着るから」と話していると
「こら、わたしが買いたいからもう少し買え。そこの水色と緑色はどうだ?それとその青・・・それとそのピンクの服はデザインがいいな。その色違いはあるか?とアレクが入ってくるなりそう言った。
「このデザインは人気で色違いを追加したところです。青と緑が揃います」と店主が答え店員が素早く品物を出して来た。
「お嬢様にはもう少し袖を長くすると綺麗ですね。明日のお昼までにピンクと青と緑の三着の補正が出来ますが」と店主が言うと
「頼む」とアレクが返事をした。
「せっかくですが、青は嫌いです」とアリスが言うと
「そうか青はやめておこう」とアレクが言うと店主は
袖なしのワンピースにボレロが付いている紺色のセットを持って来た。
「お嬢様、これも可愛いでしょ。ボレロが総レースなんですよ」と見せた。
「そんなには」とアリスが言ったが
アレクは
「そうだな、そういうのも一着は欲しいな。色がいい」と追加を決めた。そしてアリスに
「どうだ、アリス。黄色を着ていくか?」と話しかけた。
「はい」とアリスは答えた。
「ふっふふ、少し余るな。だが、ちゃんと食べて肉がつくから、それでいいな」とアレクが笑った。
そのあとは宝石店に行って金にダイヤをあしらった髪飾りと金とダイヤの小さなピアスを買って、今まで使っていた青い宝石のついた髪飾りとピアスを外してつけかえた。
それからも身の回りの物を細々買うと夕食の時間となった。
「今日はお茶の時間が取れなかったな。アリスは海の物は好きかい?」とアレクが尋ねると
「どうでしょうか?あまり食べたことがないのでわかりません」と返事が返ってきた。
「そうか、それなら試してみたらいいな。少し早めだが夕食にしよう」とアリスをレストランに連れて行った。
「わたくし、お店で買い物も初めてでした。レストランに来るのも初めてです」とアリスに言われたアレクはなんとも言えない気持ちが身内に溢れるのを感じた。
怒りなのか、哀れみなのか、同情なのか・・・
『こんな気持ちになるのは初めてだ』とアレクは思った。『なんと返事すればいいのか』迷ったが口をついて出たのは
「デイビスも来るから、少し待つがワインを飲んでみるか?これも初めて?」
「いいえ、少し飲めます」と言う返事にちょっとだけアレクはがっかりした。
そして、食前に注文した甘口の白ワインを飲み始めた時にデイビスがやって来た。
『まったく気のきかないやつだ』とアレクは思った。
「これは、珍しいワインですね。あっアリスの為ですね。よく選びました」とデイビスがにこにこアリスに話しかけるのを睨みつけた。おまけにデイビスは
「アリス、よく似合いますね。黄色を着てると黄色いガーベラの花束のようですよ」
とにこにことアリスを褒めると
「なにを食べるか決めた?」と二人に向かって言った。
「おまかせします」とアリスが言い
「茹でたロブスターと粉ふきいもと温野菜はどうだろうか?」とアレクが答えた。
「そうだな。わたしは焼きガキも食べたい」とデイビスが言うと
「それもいいな」とアレクが頷いた。
「アリス。マナー違反になるが、分けて食べよう。今日はスープはやめておいたほうがいいな。他が入らなくなる。あとワインと一緒にレーズンとナッツはどうかな。アリスはワインになにを合わせたい?」と言うアレクに
「別に・・・なにも・・・おまかせします」とアリスはグラスに入ったワインを見ながら答えた。
ワインから始めた食事はどれも美味しくアリスは、ロブスターが明日の自分を元気にする様が頭に浮かんで来た。粉ふきいもの胡椒の香り、バターで炒めた野菜の甘さ。それが全部自分に吸収されていく。
ロブスターを食べるときに頼んだワインも少し飲んだアリスは、常よりも笑顔が自然だった。二人はそれに気づいた。
思ったよりも酒を飲めそうなアリス。いつもよりも・・・美しく・・・妖艶!?と言う言葉が浮かんだアレクは戸惑った。保護した子供じゃないか。どうしたんだ。酒のせいか?
アレクは
「平常心・平常心・平常心・平常心」と自分に言い聞かせるのだったが、心臓はその度にドキン・ドキンと大きく鼓動して主に逆らうのだった。
アリスは嬉しかった。自分の好みの服を選べるのだ。アリスは黄色いワンピースを先ず選んだ。
丸い襟ぐりに白い襟がついている。アリスの年齢には少し幼いデザインだ。だがアリスはこういうのを着てみたかったのだ。いつも王妃の勧めで王妃よりも地味なものを着ていたのだ。だから好きなのを着る。もう一枚はピンクで袖がレースになっていて、可愛い。
「お嬢様二枚は少ないですよ。あと二・三枚必要ですよ」とラズベリーが言ったが
「ううん、二枚で充分よ。そういえばわたくしが着ていたのはどうなりましたか?」
「お手入れして綺麗になりましたが・・・お嬢様にはちょっと」とラズベリーが言った。
「わたくしもそう思うけど、綺麗になったならそれも着るから」と話していると
「こら、わたしが買いたいからもう少し買え。そこの水色と緑色はどうだ?それとその青・・・それとそのピンクの服はデザインがいいな。その色違いはあるか?とアレクが入ってくるなりそう言った。
「このデザインは人気で色違いを追加したところです。青と緑が揃います」と店主が答え店員が素早く品物を出して来た。
「お嬢様にはもう少し袖を長くすると綺麗ですね。明日のお昼までにピンクと青と緑の三着の補正が出来ますが」と店主が言うと
「頼む」とアレクが返事をした。
「せっかくですが、青は嫌いです」とアリスが言うと
「そうか青はやめておこう」とアレクが言うと店主は
袖なしのワンピースにボレロが付いている紺色のセットを持って来た。
「お嬢様、これも可愛いでしょ。ボレロが総レースなんですよ」と見せた。
「そんなには」とアリスが言ったが
アレクは
「そうだな、そういうのも一着は欲しいな。色がいい」と追加を決めた。そしてアリスに
「どうだ、アリス。黄色を着ていくか?」と話しかけた。
「はい」とアリスは答えた。
「ふっふふ、少し余るな。だが、ちゃんと食べて肉がつくから、それでいいな」とアレクが笑った。
そのあとは宝石店に行って金にダイヤをあしらった髪飾りと金とダイヤの小さなピアスを買って、今まで使っていた青い宝石のついた髪飾りとピアスを外してつけかえた。
それからも身の回りの物を細々買うと夕食の時間となった。
「今日はお茶の時間が取れなかったな。アリスは海の物は好きかい?」とアレクが尋ねると
「どうでしょうか?あまり食べたことがないのでわかりません」と返事が返ってきた。
「そうか、それなら試してみたらいいな。少し早めだが夕食にしよう」とアリスをレストランに連れて行った。
「わたくし、お店で買い物も初めてでした。レストランに来るのも初めてです」とアリスに言われたアレクはなんとも言えない気持ちが身内に溢れるのを感じた。
怒りなのか、哀れみなのか、同情なのか・・・
『こんな気持ちになるのは初めてだ』とアレクは思った。『なんと返事すればいいのか』迷ったが口をついて出たのは
「デイビスも来るから、少し待つがワインを飲んでみるか?これも初めて?」
「いいえ、少し飲めます」と言う返事にちょっとだけアレクはがっかりした。
そして、食前に注文した甘口の白ワインを飲み始めた時にデイビスがやって来た。
『まったく気のきかないやつだ』とアレクは思った。
「これは、珍しいワインですね。あっアリスの為ですね。よく選びました」とデイビスがにこにこアリスに話しかけるのを睨みつけた。おまけにデイビスは
「アリス、よく似合いますね。黄色を着てると黄色いガーベラの花束のようですよ」
とにこにことアリスを褒めると
「なにを食べるか決めた?」と二人に向かって言った。
「おまかせします」とアリスが言い
「茹でたロブスターと粉ふきいもと温野菜はどうだろうか?」とアレクが答えた。
「そうだな。わたしは焼きガキも食べたい」とデイビスが言うと
「それもいいな」とアレクが頷いた。
「アリス。マナー違反になるが、分けて食べよう。今日はスープはやめておいたほうがいいな。他が入らなくなる。あとワインと一緒にレーズンとナッツはどうかな。アリスはワインになにを合わせたい?」と言うアレクに
「別に・・・なにも・・・おまかせします」とアリスはグラスに入ったワインを見ながら答えた。
ワインから始めた食事はどれも美味しくアリスは、ロブスターが明日の自分を元気にする様が頭に浮かんで来た。粉ふきいもの胡椒の香り、バターで炒めた野菜の甘さ。それが全部自分に吸収されていく。
ロブスターを食べるときに頼んだワインも少し飲んだアリスは、常よりも笑顔が自然だった。二人はそれに気づいた。
思ったよりも酒を飲めそうなアリス。いつもよりも・・・美しく・・・妖艶!?と言う言葉が浮かんだアレクは戸惑った。保護した子供じゃないか。どうしたんだ。酒のせいか?
アレクは
「平常心・平常心・平常心・平常心」と自分に言い聞かせるのだったが、心臓はその度にドキン・ドキンと大きく鼓動して主に逆らうのだった。
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