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第8話 これからは
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「いいとも、アリス。君は雨のなかを歩いていた。馬車を降りて話しかけると君は倒れそうになり、あわてて抱き上げると馬車に乗せた。その夜泊まったホテルでデイビスが診察した。
あの雨に打たれたのだもの熱も出るのは当たり前だが・・・君は・・・そのわたしたちは君を虐待された被害者だと思っていた」とアレクが言うと
「虐待?」とアリスが目を丸くした。
「いや、そのあの雨のなか令嬢が歩いていたし、栄養状態が悪くて・・・体に傷はなかったが・・・一応、行方不明者の届出が出てないか調べたんだよ。だけどなにも出てなかった。しばらくとどまって情報をさがすべきだが、この船に乗らねばならなかったんだ。そこは許して欲しい。あちらに到着しだいすぐに連絡を」
「いえ、それは結構です」とアリスが強い口調で遮った。
「あっ失礼しました」とすぐにアリスは謝罪したが、顔がこわばっていた。
「もちろん、君の意思を尊重するよ。アリス。嫌がることはしない」とアレクが優しく言った。
「ありがとうございます。家族は・・・もういいです。向こうが忘れたんです。わたしも忘れました。わたしは一人でやって行きます。なにか仕事を見つけて生きていきます。もちろん大変でしょうが・・・わたし体が丈夫なんです」とアリスが言うと
「そうか。それならわたしの仕事を手伝ってくれないか?若い女性の意見が大切な仕事をしているんだ」とアレクが微笑むと
「同情して下さってますか?」とアリスが言った。
「とんでもない。本気で誘ってるんだ」とアリスを見て笑うと
「つまり、利用したいんだ。王太子妃としての教育を受けた令嬢だよ。価値があるよ。だから大威張りでいたらいいんだよ」とアレクが笑って言うと
「ありがとうございます」とアリスも笑った。
「少し質問してもいいかい?」とデイビスが静かに言うとアリスは微笑みを消してうなずいた。
「そのアリス、聞きにくいんだけど・・・食事はどうしてたんだ?」と聞いた。アリスが戸惑った顔をすると
「君は栄養失調だ。食べてないよね。忙しかったってことかな?誰もそのことを心配しなかったのかい?」
「そうですね。心配してくれたのは、一緒に仕事をしていた二人だけです。食べる暇もお金もなくて・・・二人には無事だと言うのを連絡したいですし、食費を返したいです」
「そうか・・・・・・・辛かったね。えっとこれからはきちんと食べる生活になるから、少し背も伸びる可能性があるからね。医師として気をつけるし君もちゃんと気をつけるんだよ」とデイビスが言うと
「はい、こんなこと言うと馬鹿みたいですが、三食食べられるのって幸せです」
とアリスが言うと
「そうか・・・それはよかった」とデイビスが言うと
「ほんとによかった」とアレクも言った。
「それでは少し早めだけどお茶にしよう」とデイビスが笑った。
「船を降りたら食事のことを勉強出来るように手配しよう。体をきちんと整えてから働いて貰うからね」とアレクが言うと
「わたくしお返しできるでしょうか?」
「大丈夫、返して貰うから」とアレクは笑った。
「・・・はい」とアリスが小さい声で返事をすると
「こんな言い方は不安しかないね。また痩せると大変だ。だから話すよ。わたしはクレールスター皇国の公爵だ」と言葉を切ったが、納得しているようなアリスを見てアレクは安心して続けた。
「ビザン帝国に向かっている。まもなく到着する。知っていると思うが帝都は港から馬車で三日ほどの場所だ。港に迎えの馬車が待っている。一緒に行って欲しい。もう仕事は始まっている。港で君のものを整えよう」とアレクが考えながら言うとデイビスが
「皇国への報告書を書くのが主な仕事だ。後はきちんと食事することだ」と続けた。
「ありがたいことですね。甘えさせていただきます」
「それがいい」とアレクが言うと
「あと、港に着いたら皇国に使いを出す。君の家にも出せるがどうする?ほんとに出さなくていいか?」
「いいえ、なにも・・・なにもしないで下さい。必要ありません」とアリスは答えた。
あの雨に打たれたのだもの熱も出るのは当たり前だが・・・君は・・・そのわたしたちは君を虐待された被害者だと思っていた」とアレクが言うと
「虐待?」とアリスが目を丸くした。
「いや、そのあの雨のなか令嬢が歩いていたし、栄養状態が悪くて・・・体に傷はなかったが・・・一応、行方不明者の届出が出てないか調べたんだよ。だけどなにも出てなかった。しばらくとどまって情報をさがすべきだが、この船に乗らねばならなかったんだ。そこは許して欲しい。あちらに到着しだいすぐに連絡を」
「いえ、それは結構です」とアリスが強い口調で遮った。
「あっ失礼しました」とすぐにアリスは謝罪したが、顔がこわばっていた。
「もちろん、君の意思を尊重するよ。アリス。嫌がることはしない」とアレクが優しく言った。
「ありがとうございます。家族は・・・もういいです。向こうが忘れたんです。わたしも忘れました。わたしは一人でやって行きます。なにか仕事を見つけて生きていきます。もちろん大変でしょうが・・・わたし体が丈夫なんです」とアリスが言うと
「そうか。それならわたしの仕事を手伝ってくれないか?若い女性の意見が大切な仕事をしているんだ」とアレクが微笑むと
「同情して下さってますか?」とアリスが言った。
「とんでもない。本気で誘ってるんだ」とアリスを見て笑うと
「つまり、利用したいんだ。王太子妃としての教育を受けた令嬢だよ。価値があるよ。だから大威張りでいたらいいんだよ」とアレクが笑って言うと
「ありがとうございます」とアリスも笑った。
「少し質問してもいいかい?」とデイビスが静かに言うとアリスは微笑みを消してうなずいた。
「そのアリス、聞きにくいんだけど・・・食事はどうしてたんだ?」と聞いた。アリスが戸惑った顔をすると
「君は栄養失調だ。食べてないよね。忙しかったってことかな?誰もそのことを心配しなかったのかい?」
「そうですね。心配してくれたのは、一緒に仕事をしていた二人だけです。食べる暇もお金もなくて・・・二人には無事だと言うのを連絡したいですし、食費を返したいです」
「そうか・・・・・・・辛かったね。えっとこれからはきちんと食べる生活になるから、少し背も伸びる可能性があるからね。医師として気をつけるし君もちゃんと気をつけるんだよ」とデイビスが言うと
「はい、こんなこと言うと馬鹿みたいですが、三食食べられるのって幸せです」
とアリスが言うと
「そうか・・・それはよかった」とデイビスが言うと
「ほんとによかった」とアレクも言った。
「それでは少し早めだけどお茶にしよう」とデイビスが笑った。
「船を降りたら食事のことを勉強出来るように手配しよう。体をきちんと整えてから働いて貰うからね」とアレクが言うと
「わたくしお返しできるでしょうか?」
「大丈夫、返して貰うから」とアレクは笑った。
「・・・はい」とアリスが小さい声で返事をすると
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