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第6話 アリスを保護
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船が出航する少し前のこと。
「船に一緒に乗せてしまったが」とアレクが言うと
「仕方ない。あの状況で外にいたというのは戻さないほうが親切だろう。それにちゃんと捜索願いの確認もして来た」とデイビスが答えた。
「そうだよな。貴族の令嬢だよな。意図的に置き去りにされたとしか思えない」とアレクが言うと
「栄養状態も悪い。体に傷はないが、虐待されているから保護したと主張出来る」とデイビスが言って少し間を置いて
「これからどうするつもりだ?」と問いかけた。
「せっかくの縁だ。最後まで面倒を見るつもりだ」とアレクが答えると
「それでいいだろう。あと二週間は船だ。事情をゆっくりと聞く時間はある」
いつの間にか眠っていたアリスはラズベリーに起こされた。夕食も部屋で一人で取った。
りんごとポークの煮込みが出た。食べ終わる頃、ラズベリーが荷物を持って部屋に入って来た。
ノートと筆記具と本が何冊か、机に積み上がると
「とりあえず用意しました。他に欲しい物があったら遠慮せずに言って下さい。明日の朝食はご一緒にとアレク様が言ってます。洋服は取り敢えず途中で揃えたものです。ご辛抱いただけますか?」と言ったそれを聞いてアリスは
「それはありがとうございます。充分です」とお礼を言った。
「いいえ。こちらこそ申し訳ないです」とラズベリーは心から答えた。
アリスはノートを広げるとさっそくこれからやること。やりたいことを書いていった。
ノートにいろいろ書き付けていると心が整理されて落ち着いた。船を降りたら仕事を探そう。遠くに行きたいと思っていたら遠くに来てしまったとアリスは文字通り遠い場所になった城と侯爵家を思った。
夕食は食堂ではなくアレクさんの部屋で取るということでアリスは迎えを待った。
そこにノックがあり、アレクさんが迎えに来てくれた。
差し出されたエスコートの手に自分の手を乗せ背筋を伸ばし、少し顎を上げた。
アレクさんが納得顔で笑ったのに気づかず普段通りにアリスは歩いた。
夕食は鳥料理でベリーのソースが美味しかった。アレクさんは取り分けが上手だった。ササミと胸肉をくれた。
「アリスはまだあっさりの部分だね。だけどソースは好きなら多めに」とデイビスさんが言ったので
「好きです。多めに」とアリスは答えた。アリスの嬉しい顔を見て二人はほっとした。
「デザートはアップルパイにするかい?それともコンポート?」とアレクさんに聞かれて
「うーーん。コンポートにしておきます」とアリスが答えると
「いい子だ。まだ、夕食のデザートにパイは重いからね」とデイビスさんが子供に言い聞かせるように言うとアリスは無邪気に笑った。
「アレク様、わたくしのことをお話していいですか?」とアリスが改まって切り出した。
「話してくれるの?無理に話さなくていいんだよ」
「いえ、お話させて下さい。愚痴?になるかもですが、愚痴と言うか恨み辛みのいやなことを話すかも知れませんが・・・」とアリスが言うと
「なにを聞いても驚かない」とアレクが答え
「えっとデイビスも呼んでいいかい?」とも言った。
「そうですね。そうして下さい。デイビス先生にも聞いて欲しいです」とアリスが考えながら答えると
「呼んで来るから」とアレクは部屋を出た。
「船に一緒に乗せてしまったが」とアレクが言うと
「仕方ない。あの状況で外にいたというのは戻さないほうが親切だろう。それにちゃんと捜索願いの確認もして来た」とデイビスが答えた。
「そうだよな。貴族の令嬢だよな。意図的に置き去りにされたとしか思えない」とアレクが言うと
「栄養状態も悪い。体に傷はないが、虐待されているから保護したと主張出来る」とデイビスが言って少し間を置いて
「これからどうするつもりだ?」と問いかけた。
「せっかくの縁だ。最後まで面倒を見るつもりだ」とアレクが答えると
「それでいいだろう。あと二週間は船だ。事情をゆっくりと聞く時間はある」
いつの間にか眠っていたアリスはラズベリーに起こされた。夕食も部屋で一人で取った。
りんごとポークの煮込みが出た。食べ終わる頃、ラズベリーが荷物を持って部屋に入って来た。
ノートと筆記具と本が何冊か、机に積み上がると
「とりあえず用意しました。他に欲しい物があったら遠慮せずに言って下さい。明日の朝食はご一緒にとアレク様が言ってます。洋服は取り敢えず途中で揃えたものです。ご辛抱いただけますか?」と言ったそれを聞いてアリスは
「それはありがとうございます。充分です」とお礼を言った。
「いいえ。こちらこそ申し訳ないです」とラズベリーは心から答えた。
アリスはノートを広げるとさっそくこれからやること。やりたいことを書いていった。
ノートにいろいろ書き付けていると心が整理されて落ち着いた。船を降りたら仕事を探そう。遠くに行きたいと思っていたら遠くに来てしまったとアリスは文字通り遠い場所になった城と侯爵家を思った。
夕食は食堂ではなくアレクさんの部屋で取るということでアリスは迎えを待った。
そこにノックがあり、アレクさんが迎えに来てくれた。
差し出されたエスコートの手に自分の手を乗せ背筋を伸ばし、少し顎を上げた。
アレクさんが納得顔で笑ったのに気づかず普段通りにアリスは歩いた。
夕食は鳥料理でベリーのソースが美味しかった。アレクさんは取り分けが上手だった。ササミと胸肉をくれた。
「アリスはまだあっさりの部分だね。だけどソースは好きなら多めに」とデイビスさんが言ったので
「好きです。多めに」とアリスは答えた。アリスの嬉しい顔を見て二人はほっとした。
「デザートはアップルパイにするかい?それともコンポート?」とアレクさんに聞かれて
「うーーん。コンポートにしておきます」とアリスが答えると
「いい子だ。まだ、夕食のデザートにパイは重いからね」とデイビスさんが子供に言い聞かせるように言うとアリスは無邪気に笑った。
「アレク様、わたくしのことをお話していいですか?」とアリスが改まって切り出した。
「話してくれるの?無理に話さなくていいんだよ」
「いえ、お話させて下さい。愚痴?になるかもですが、愚痴と言うか恨み辛みのいやなことを話すかも知れませんが・・・」とアリスが言うと
「なにを聞いても驚かない」とアレクが答え
「えっとデイビスも呼んでいいかい?」とも言った。
「そうですね。そうして下さい。デイビス先生にも聞いて欲しいです」とアリスが考えながら答えると
「呼んで来るから」とアレクは部屋を出た。
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