5 / 68
第5話 アリス目線
しおりを挟む
なにやら、水のなかから浮かび上がるように目が覚めた。
「お目覚めですね。よかったですわ」と落ち着いた声がした。
「起き上がれますか?」と言いながら背中に手を添えて起き上がらせてくれ、背中のクッションを入れてくれた。それから水の入ったコップを渡された。
わたくしが水を飲んでお礼を言い終わると女性は
「戸惑ってらっしゃるでしょう?旦那様から説明致しますが、もうお話ができますか?」と静かに言った。わたくしはうなずいた。すると女性は
「わたくしの物で恐縮ですが」と上着を羽織らせてくれた。それから
「知らせて参ります」と部屋を出て行った。なにげなく外を見て驚いた海!!海だ!
そこにノックの音がした。少し間をあけてそっとドアが開いた。
先ほどの女性と男性が二人入って来た。
茶色の髪の男性は壁際の椅子を持ってベッドに近寄ると椅子に座った。
「お嬢さん。お疲れだったようですね。あっわたしはデイビスと言います。医者です。随分長く寝てらっしゃいました。雨に打たれて体が冷えて熱が出たせいです。それは心配ないです。もう大丈夫でしょう。ただ、少し栄養が足りてない。それについてはまた後で話します。とりあえず名前を教えてもらっていいですか?」
迷ったけど
「アリスです。そのここは海ですか?」と答えた。
「アリス嬢。驚かれるのは当たり前ですね。いきなりですから・・・そうですね。船に乗ってます。あなたを保護しましたが急いでましたのでそのまま一緒に船に・・・」
「はーーそうなんですか・・・どこに・・・いえ、お話の続きを」とアリスが言うと
「アリス嬢ですね。わたしは医者のデイビス。あちらはあなたを助けたアレク。そちらはあなたの侍女のラズベリー」
「初めましてアリス。アレクだ」と金髪の男性が言うとすぐにデイビスが
「名前が分かったところで、アリス嬢。食事をとって下さい。あなたが一番優先することです。ちょっと病人食ですが我慢して下さい。食事をとって眠くなったら少しだけ眠って下さい。程よいところで起こします」
「ありがとうございます。デイビス先生。アレク様」とわたくしが答えるとアレク様とデイビス先生は部屋を出て行った。
デイビス先生とアレクさんと入れ違いで食事が運ばれた。
ミルク粥とりんごのコンポートが盆に乗っていた。
「アリス様、起きてテーブルで食べますか?海が見えますよ」
「起きます。あっラズベリーさんよろしくお願いします」と挨拶をすると
ラズベリーさんは
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
お粥は美味しかった。ラズベリーさんは壁際に下がって黙っていた。
王太子の婚約者。侯爵家令嬢のわたくしはいつもお腹がすいていた。だから、この食事がとても嬉しくて美味しかった。
わたくしが食べ終わるとラズベリーさんは
「わたくしは下がっております。そこのベルを使って下さい」と言うと
食器を持って出て行った。
わたくしは海を見ながら考えた。どれくらい寝ていたか分からないが、お城ではわたくしがいないことに気づいただろう。仕事の面では困っているだろう。だからどうなんだ!!とちょっと居直った。
多分、寝過ごした程度だったら飛び起きて必死に戻っただろう。だけど・・・今さら、なんだと言うんだ。あの怒りを思い出せ。雨の降る中置いていったくせに・・・
わざとだとは思わない。だけど・・・家族が馬車に乗ってなかったら気が付く。わたくしは侯爵家の家族じゃなかった。
エドワードだって婚約者がちゃんと馬車に乗ったかどうか気にするだろう?だけど彼は気にしなかった。わたくしが
「みなさん、馬車に」って言ったとき彼はすぐに走って行った。わたくしに目も向けなかった。海じゃなくても帰らない。
そういう関係だったのだ。バートとヘドラーは大変だろうが、もともとの部署に戻ればいいのだ。こっそりお礼をおくりたい。食事代を返したい。
これからのことはこれから考えよう・・・と寝てしまったようだ。
今がいつであろうと、当分城へは戻れない・・・いや戻らない。
わたくしは見捨てられた。意図的だとは思わない。でもどうでもいい存在だということを突きつけられた。
食事も満足に取れず、ベッドに横になることもできない生活。
実母も義母もわたくしが食事がとれなくなるようにした。
わたくしに食べさせまいとした。許せない。だ・か・ら・帰らない。食べ物で恨むなんて・・・だけど空腹を知らない人にはわからない。いや、空腹ではない飢えだ。慰問先の孤児だって食事はしているのに。
アレクさんにある程度本当のことを言おう。だけど本当にどうしようもない帰りたくても帰れない状況なんだし。帰りたくないけど。
わたくしは海をぼんやりとみながら考えて行く。わたくしはひどい状況だったことだろう。それを助けてくれて・・・どうして船なのか疑問だが説明してくれるだろうし・・・
ここまで考えると眠くなって来た。わたくしはベッドに入ると目をつぶった。
そうか・・・水のなかから浮かぶと思ったのは船に乗っているせいだったのかな?
「お目覚めですね。よかったですわ」と落ち着いた声がした。
「起き上がれますか?」と言いながら背中に手を添えて起き上がらせてくれ、背中のクッションを入れてくれた。それから水の入ったコップを渡された。
わたくしが水を飲んでお礼を言い終わると女性は
「戸惑ってらっしゃるでしょう?旦那様から説明致しますが、もうお話ができますか?」と静かに言った。わたくしはうなずいた。すると女性は
「わたくしの物で恐縮ですが」と上着を羽織らせてくれた。それから
「知らせて参ります」と部屋を出て行った。なにげなく外を見て驚いた海!!海だ!
そこにノックの音がした。少し間をあけてそっとドアが開いた。
先ほどの女性と男性が二人入って来た。
茶色の髪の男性は壁際の椅子を持ってベッドに近寄ると椅子に座った。
「お嬢さん。お疲れだったようですね。あっわたしはデイビスと言います。医者です。随分長く寝てらっしゃいました。雨に打たれて体が冷えて熱が出たせいです。それは心配ないです。もう大丈夫でしょう。ただ、少し栄養が足りてない。それについてはまた後で話します。とりあえず名前を教えてもらっていいですか?」
迷ったけど
「アリスです。そのここは海ですか?」と答えた。
「アリス嬢。驚かれるのは当たり前ですね。いきなりですから・・・そうですね。船に乗ってます。あなたを保護しましたが急いでましたのでそのまま一緒に船に・・・」
「はーーそうなんですか・・・どこに・・・いえ、お話の続きを」とアリスが言うと
「アリス嬢ですね。わたしは医者のデイビス。あちらはあなたを助けたアレク。そちらはあなたの侍女のラズベリー」
「初めましてアリス。アレクだ」と金髪の男性が言うとすぐにデイビスが
「名前が分かったところで、アリス嬢。食事をとって下さい。あなたが一番優先することです。ちょっと病人食ですが我慢して下さい。食事をとって眠くなったら少しだけ眠って下さい。程よいところで起こします」
「ありがとうございます。デイビス先生。アレク様」とわたくしが答えるとアレク様とデイビス先生は部屋を出て行った。
デイビス先生とアレクさんと入れ違いで食事が運ばれた。
ミルク粥とりんごのコンポートが盆に乗っていた。
「アリス様、起きてテーブルで食べますか?海が見えますよ」
「起きます。あっラズベリーさんよろしくお願いします」と挨拶をすると
ラズベリーさんは
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
お粥は美味しかった。ラズベリーさんは壁際に下がって黙っていた。
王太子の婚約者。侯爵家令嬢のわたくしはいつもお腹がすいていた。だから、この食事がとても嬉しくて美味しかった。
わたくしが食べ終わるとラズベリーさんは
「わたくしは下がっております。そこのベルを使って下さい」と言うと
食器を持って出て行った。
わたくしは海を見ながら考えた。どれくらい寝ていたか分からないが、お城ではわたくしがいないことに気づいただろう。仕事の面では困っているだろう。だからどうなんだ!!とちょっと居直った。
多分、寝過ごした程度だったら飛び起きて必死に戻っただろう。だけど・・・今さら、なんだと言うんだ。あの怒りを思い出せ。雨の降る中置いていったくせに・・・
わざとだとは思わない。だけど・・・家族が馬車に乗ってなかったら気が付く。わたくしは侯爵家の家族じゃなかった。
エドワードだって婚約者がちゃんと馬車に乗ったかどうか気にするだろう?だけど彼は気にしなかった。わたくしが
「みなさん、馬車に」って言ったとき彼はすぐに走って行った。わたくしに目も向けなかった。海じゃなくても帰らない。
そういう関係だったのだ。バートとヘドラーは大変だろうが、もともとの部署に戻ればいいのだ。こっそりお礼をおくりたい。食事代を返したい。
これからのことはこれから考えよう・・・と寝てしまったようだ。
今がいつであろうと、当分城へは戻れない・・・いや戻らない。
わたくしは見捨てられた。意図的だとは思わない。でもどうでもいい存在だということを突きつけられた。
食事も満足に取れず、ベッドに横になることもできない生活。
実母も義母もわたくしが食事がとれなくなるようにした。
わたくしに食べさせまいとした。許せない。だ・か・ら・帰らない。食べ物で恨むなんて・・・だけど空腹を知らない人にはわからない。いや、空腹ではない飢えだ。慰問先の孤児だって食事はしているのに。
アレクさんにある程度本当のことを言おう。だけど本当にどうしようもない帰りたくても帰れない状況なんだし。帰りたくないけど。
わたくしは海をぼんやりとみながら考えて行く。わたくしはひどい状況だったことだろう。それを助けてくれて・・・どうして船なのか疑問だが説明してくれるだろうし・・・
ここまで考えると眠くなって来た。わたくしはベッドに入ると目をつぶった。
そうか・・・水のなかから浮かぶと思ったのは船に乗っているせいだったのかな?
2,748
お気に入りに追加
4,986
あなたにおすすめの小説
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
両親も義両親も婚約者も妹に奪われましたが、評判はわたしのものでした
朝山みどり
恋愛
婚約者のおじいさまの看病をやっている間に妹と婚約者が仲良くなった。子供ができたという妹を両親も義両親も大事にしてわたしを放り出した。
わたしはひとりで家を町を出た。すると彼らの生活は一変した。
王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!
朝山みどり
恋愛
わたくし、ミランダ・スチュワートは、王子の婚約者として幼いときから、教育を受けていた。わたくしは殿下の事が大好きで将来この方を支えていくのだと努力、努力の日々だった。
やがてわたくしは学院に入学する年になった。二つ年上の殿下は学院の楽しさを語ってくれていたので、わたくしは胸をはずませて学院に入った。登校初日、馬車を降りると殿下がいた。
迎えに来て下さったと喜んだのだが・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる