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42 即位式
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今日はエリザベートの即位式だ。二年前のエリザベートとギルバードの結婚式で熱狂した人々はその熱狂を二年持ち続け、即位式を楽しみに、楽しみに待った。
パレードが通る場所は、人々が自主的に整えた。
エリザベートの衣装は、二年前と同じく、ディング伯爵夫人・・・陞爵した・・・・が腕によりをかけ、髪はラズが結い上げた。
そして、今日エリザベートの胸元を飾るのは、バードレッド家から献上された。鳥のネックレスだ。
献上されたものを、本人に贈り物をとして渡したり、下賜したがまた献上されて困ったが、ゾーイが
「あなた様、くれるものは貰えばいいですよ。高いとか言っても売り買いできるものですよ」
「ご先祖様の気持ち?そんな会った事もない人の気持ちより、あちらの気持ちが大事ですよ・・・・お城には高い物がたくさんあるでしょうに・・・それが一個増えるだけですよ・・・・・それにエリザベート様。そんな重い物を首にぶら下げられるのは今のうちですよ。年をとったら重いものはいやですからね・・・・すぐにわかりますからね」
とか言ったせいで、貰ってしまい・・・・王冠の重さと責任の重さと胸元の重さを感じる事になった。
普段は横に並ぶギルバードも、今日は一歩後ろについている。
馬車が通るまえから、熱狂している人々の中を馬車はゆっくりと進み、エリザベートは笑顔で手を振り続けた。
片手はギルバードがしっかりと握っている。
「子供の頃にエリザベートと結婚するって泣かなかったばっかりに、遠回りをしたんだ。それを取り返さなきゃ」
エリザベートが迷惑そうな顔をする度に、ギルバードはそう言う。エリザベートは、行き先はわたしが決めるって言ったあの小さな女の子に言いたいと思ってる。
「王子様って面倒よって」もし次があったら、本当の馬車に乗って行く人生を送ってみたい。
ゾーイみたいな人にいっぱい、会えるだろう。
「「「女王陛下」」」「「エリザベート様」」と声が聞こえる。
声を方を向いて手を振ると、歓声が一段と大きくなる。
ふいに人々の顔が歪んだ。エリザベートは自分が泣いている事に気づいた。涙は止まらずに流れて来る。手を振るのをやめたギルバードが、片手で涙を拭いてくれた。
歓声に泣き声が混じるなかを、馬車は速度を変えずに進んで行った。
この日のことは多くの歴史家が、書いている。この国とギルバードの国、北の国、三国が共に歩んだ道の出発点だからだ。その道は栄光に満ち、その光は穏やかで平和だった。
エリザベートは語っている。
「わたくしは目標を示しただけです。それを実現してくれる人に恵まれました」
だが、この光のエリザベートに対して影があった事も有名だ。
妹のロザモンドだ。同じく妃として社交界に出ていたが、事故で表舞台から退いたと言われている。
顔を傷つけられた。喉を潰されて声がでなくなった。腰を痛めて歩けなくなった。諸説あるが、本当の所は謎である。
愚かだったと言う者もいるが、残っている古代ギリー語のスピーチ原稿を読む限り、教養はあったと思われる。
また、彼女の世話を最後までしたのが、平民の女性だった事実から推定すると、気さくな人柄だったようだ。
ただ、その女性、ゾーイの言葉は、後に創作されたと言われている。
「あのお人は、お母さんと一緒で甘えた人だった」
「ご飯が食べられる事に感謝しろって教えたら素直になった」
「分をわきまえなさいって言った」
「ひとりにするとろくでもない事をした」
これを現実で発言したとは信じられないが、これら逸話は後に演劇で取り上げられ、ずっと人気の演目となっている。
墓の下のロザモンド自身が、これには驚いているだろう。
今の世界の繁栄を築いたエリザベートとその影のロザモンド。
なにも語らぬその墓には、今日も花が手向けられている。
パレードが通る場所は、人々が自主的に整えた。
エリザベートの衣装は、二年前と同じく、ディング伯爵夫人・・・陞爵した・・・・が腕によりをかけ、髪はラズが結い上げた。
そして、今日エリザベートの胸元を飾るのは、バードレッド家から献上された。鳥のネックレスだ。
献上されたものを、本人に贈り物をとして渡したり、下賜したがまた献上されて困ったが、ゾーイが
「あなた様、くれるものは貰えばいいですよ。高いとか言っても売り買いできるものですよ」
「ご先祖様の気持ち?そんな会った事もない人の気持ちより、あちらの気持ちが大事ですよ・・・・お城には高い物がたくさんあるでしょうに・・・それが一個増えるだけですよ・・・・・それにエリザベート様。そんな重い物を首にぶら下げられるのは今のうちですよ。年をとったら重いものはいやですからね・・・・すぐにわかりますからね」
とか言ったせいで、貰ってしまい・・・・王冠の重さと責任の重さと胸元の重さを感じる事になった。
普段は横に並ぶギルバードも、今日は一歩後ろについている。
馬車が通るまえから、熱狂している人々の中を馬車はゆっくりと進み、エリザベートは笑顔で手を振り続けた。
片手はギルバードがしっかりと握っている。
「子供の頃にエリザベートと結婚するって泣かなかったばっかりに、遠回りをしたんだ。それを取り返さなきゃ」
エリザベートが迷惑そうな顔をする度に、ギルバードはそう言う。エリザベートは、行き先はわたしが決めるって言ったあの小さな女の子に言いたいと思ってる。
「王子様って面倒よって」もし次があったら、本当の馬車に乗って行く人生を送ってみたい。
ゾーイみたいな人にいっぱい、会えるだろう。
「「「女王陛下」」」「「エリザベート様」」と声が聞こえる。
声を方を向いて手を振ると、歓声が一段と大きくなる。
ふいに人々の顔が歪んだ。エリザベートは自分が泣いている事に気づいた。涙は止まらずに流れて来る。手を振るのをやめたギルバードが、片手で涙を拭いてくれた。
歓声に泣き声が混じるなかを、馬車は速度を変えずに進んで行った。
この日のことは多くの歴史家が、書いている。この国とギルバードの国、北の国、三国が共に歩んだ道の出発点だからだ。その道は栄光に満ち、その光は穏やかで平和だった。
エリザベートは語っている。
「わたくしは目標を示しただけです。それを実現してくれる人に恵まれました」
だが、この光のエリザベートに対して影があった事も有名だ。
妹のロザモンドだ。同じく妃として社交界に出ていたが、事故で表舞台から退いたと言われている。
顔を傷つけられた。喉を潰されて声がでなくなった。腰を痛めて歩けなくなった。諸説あるが、本当の所は謎である。
愚かだったと言う者もいるが、残っている古代ギリー語のスピーチ原稿を読む限り、教養はあったと思われる。
また、彼女の世話を最後までしたのが、平民の女性だった事実から推定すると、気さくな人柄だったようだ。
ただ、その女性、ゾーイの言葉は、後に創作されたと言われている。
「あのお人は、お母さんと一緒で甘えた人だった」
「ご飯が食べられる事に感謝しろって教えたら素直になった」
「分をわきまえなさいって言った」
「ひとりにするとろくでもない事をした」
これを現実で発言したとは信じられないが、これら逸話は後に演劇で取り上げられ、ずっと人気の演目となっている。
墓の下のロザモンド自身が、これには驚いているだろう。
今の世界の繁栄を築いたエリザベートとその影のロザモンド。
なにも語らぬその墓には、今日も花が手向けられている。
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エリザベートとフレデリックは結局どんな関係になったんですか?だってエリザベートはフレデリックの第二妃ですよね?
エリザベートは離縁してギルバートと結婚した、と言う解釈でいいんでしょうか?
でも「いつも隣に立っている」て書いてあるから離縁してない?
そこら辺が書かれてないので、この3人がどんな関係に落ち着いたのか読み取れませんでした。ごめんなさい💦
是非とも教えて頂きたいです!
教えてくださいまして、ありがとうございます。フレデリックではなくギルバードです。
フレデリックとは離縁しました。フレデリックはロザモンドの様子を見ながら、ギルバードと一緒に仕事をしています。
最初の方は面白かったんだけどな…
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