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エリザベートの執務室に、貴族たちがやって来た。

「妃殿下に連絡致します。しばらくお待ちください」とメアリーが応対した。タバサは目礼だけして宰相を連れて出て行った。

「お忙しいようですね。申し訳ございません」と代表が頭を下げると、

「当分、忙しさは収まりませんので、今日のほうがいいですわ」とメアリーは答えると、一度部屋に入った。

しばらくして出てきたメアリーは、

「どうぞ」とドアを開けた。


「いらして下さったのですね。ご用向きをどうぞ」とエリザベートは書類になにか、書き込みながら言った。


「どうぞ」と顔をあげた、エリザベートにうながされ、

「妃殿下、わたくしどもは以前、たいへん失礼な事を申し上げました。ギルバード殿下にも申し訳ない事を・・・その・・・・・エリザベート殿下・・・・ギルバード殿下と共にこの国を導いて頂きたく・・・・」

「なるほど・・・・どうしてそう考えたの?確かにギルバードは今のこの国に必要な人だけど・・・・」

とエリザベートが言うと

「妃殿下に幸せになって頂ければと・・・・その幸せな方が導く国は・・・いい国だと」

「ありがとう・・・・」とエリザベートが、にっこり笑った。



エリザベートはフレデリックの見舞いに行った。

医者から、薬が効いていると連絡を受けたからだ。



「フレデリック。顔が穏やかになったようね」とエリザベートが言うと、

「あぁなんでも薬が、効いていると医者が言った。それにあのゾーイと言ったか、思い切り無礼な奴だが・・・・

ロザモンドから少し離れるよう言われて・・・・離れても最初は心配だったが・・・・ゾーイが言うにはちゃんと食事をしてるから、安心だって言われて・・・・それに大勢が、見舞いに来てね、こう言ったんだ。

わたしどもは、ギルバード様をこの国に迎える事に賛成です。これは民のほうが先に望んでおります。

時に、幼子や民は賢い事を申しますなぁ。もちろんフレデリック様のご決断を尊重致します」と。

エリザベートはなにも言わずに、フレデリックを見ていた。


「そうすると、ロザモンドの状態は返っていいかもな。僕は彼女の世話をしたいからとギルバードにこの国を託す。

民の喜ぶ美しい結末だ。ギルバードには僕から頼む」

「フレデリック、その事だけど」とエリザベートが言いかけた時、


「おや、エリザベートもいるんだね」とギルバードがやって来た。

「おや、久しぶりに三人揃った。よかったよ」とフレデリックが言うと、

「そうですわね」とエリザベートが笑って言った。


「僕は、いつも思い出す幸せな風景があるんだ」とフレデリックが話し始めた。

「こんな風に三人で座っているんだよ。子供の頃、僕は馭者になりたかったんだ」

「僕は道を造る人に」とギルバードが続けると、

「覚えていたんだ」とフレデリックが言うと、

「ときおり、思い出すよ。大事な思い出だ」とギルバードが続けた。

「そうか、それでフレデリック。耳に届いていると思うが、君にエリザベートと国を任せたい」

「もう、決めたのか?」

「あぁ」

「病は治るぞ。父上はいまも元気だ」とギルバードがフレデリックを見ながら言ったが、

「僕は・・・・」

「あら、二人で何を話しているの・・・・馭者がいないと困るわ」とエリザベートがフレデリックを見て言った。

「道を造るのは大事よね」とギルバードを見て、

「行き先はわたしが決めるわ」とエリザベートが拳を固めていた。

「「あっ」」

「二人とも、今更、いやですわ。覚えてないのかしら」




二人はエリザベートを次いでお互いを見た。

フレデリックとギルバードはお互いが同じ情景を思い出したとわかった。





「馭者ってすごいよね。お馬を操ってすいすい馬車を走らせてどこでも行ける!」と子供のエリザベートは笑い、次に

「それなら、行き先はわたしが決めるね」と拳を固めて言っていた。




王妃の使いが来てエリザベートは去って行った。





「俺、応援するよ」とフレデリックが言うと

「おまえっていいやつだよな」とギルバードがため息をつきながら答えた。








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