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「 その・・・わたしは、あの時皆に着いて行っただけで・・・・」と彼は弱々しく呟いた。

彼の呟きは功を成さずに、翌日彼は王宮に送り込まれた。

他に何人か送り込まれた、お仲間と一緒に文官について回って書類をあちらに届け、こちらに取りに行きと忙しく歩き回った。

「次からは一人でお願い出来ますね。なんでも余計な口出しをした連中がいて、ギルバード様がお仕事を控えられたので、すごく忙しくなってるんですよ。ほんと迷惑ですよね」とさりげなく文官から伝えられた事は、彼の胸を抉った。


彼は、それを聞いてより一層重くなった足を懸命に動かし続けた。



一方、カザリンのお茶会は、国の為に尽くしているエリザベート様の幸せが、大きな話題だった。

姉妹を妻としたのは、あくまでのその能力の為だと言うのは明白で、なぜ宰相としてエリザベートを迎えなかったのか、疑問を持たれたのだが、カザリンが声を潜めて、

「わたくしも実は、そこが疑問だったのです。だってエリザベート様が婿をとって継ぐのが普通ですよね」

カザリン本人から言われて安心した、面々はうなづいた。

「本当なら、わたくし共がここを継ぐことなどなかったのですよ」とカザリンは言葉と切って、反応をうかがった。

「でもわたくしはここに、こうしております。それは、ロザモンド様がほんとうにおっとりしすぎているのです」

『おっとりとはいい表現ね』と一同は思ったが、うなづかずに頑張った。

「それで、ロザモンド様の代理がすぐに出来るようにそばに置きたかったのだと思います」とカザリンが言うと、

「それだと、まるっきり道具ではないですか」と一人が憤慨して言うと、あっと口を押さえた。

「いえ、わたくしは、その・・・」と小声で言うのに合わせて、優しい声でカザリンが、

「恐れ多くも義妹であるエリザベート様によりそって頂いてありがとうございます」と言った。

一同は、なんとなくしんみりして、黙ってお茶を飲んだ。すると一人の若い令嬢が意を決したように、こう言った。

「なにか街中では、人々がギルバード様とエリザベート様が結婚なされば良いと、言い合っていると聞いております。彼らは王位がどうのこうのではなく、お二人がお似合いだとか、幸せな人を見たいとかそんな気持ちのようですが・・・」

「わたくしも聞きました。単純に幸せになって欲しいと思っているようですね」

「エリザベート様には、感謝しております。義母の面倒はわたくしが看るのがほんとうですのに、引き取って下さいました・・・・いたらないわたくしを義姉として扱って下さってます・・・・その・・・」と言った先を泣いてしまったカザリンは続ける事ができなかった。

しばらくして一人の令嬢が、

「わたくしたち、応援してもいいのでは、ないでしょうか?」と小さな声で言った。声は小さかったが、皆それを聞いた。

「そうですわね」と呟いた声は一つではなかった。


少しずつ、ギルバードとエリザベートに国の舵取りをして貰いたいと言う声が大きくなって来た。

最初、反対していた貴族は多かったが、いつのまにか賛成に回っていた。




「だって、妻にも娘にも無視されるのは・・・・応えるんだよ」そう呟いたのは、どこの誰だったのか?





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