上 下
44 / 48

39 貴族たち

しおりを挟む
フレデリックは、療養生活に入った。たが、ロザモンドが、フレデリックを部屋に呼びたがるので、安静を保つのが、むずかしかった。

そしてロザモンドが、必死に訴えて来るのは、母親に人生を狂わされたと言う事だった。

当の母親は、ロザモンドが冷たいとゾーイ相手に愚痴っては、そんなに不満ばかり言う子供が出来上がったのは、親に問題があると言われて、泣き喚き、気分転換に宝石を買いたいとフレデリックに伝えるよう繰り返すばかりになった。


「なんだか、二人ともわたくしの子供になってしまったようね」とエリザベートが言うと、ゾーイは

「あんたさまは、苦労をしょいこむ 性質たちだね。わけて持ちたいと思うお人が、いるって事はご存知でございますね。その人は分けるより、全部しょってくれそうですけど・・・・・・あたしとしては、放りなげるのが一番と思いますんです」

「ゾーイ。あなたを話すといろんな事が簡単に片付くようね」とエリザベートが言うと

「むずかしくないですよ。大事な人を大事にする。これだけです」とゾーイが答えた。


「おや、フレデリック様ですね。やめといたらいいのに・・・・ロザモンド様はわざと泣き喚いてるから。はっきり、やめろ。うるさい。って言えばいいんですよ。ちょっと言ってやろうかね。おーーい」とゾーイはフレデリックに向かって行った。


「王太子様。あんた様がややこしくしてますよ。ロザモンド様は意外と図太いですよ。でなきゃぁね・・・」

とフレデリックに言っているが、


「はぁ、あなたか・・・いつも義母上とロザモンドをなだめてくれているのは」

「そうだよ。王太子様。あなたさまはあの二人に近寄らないほうがいいよ。あなたさまみたいな人は、搾り取られる。体力とか気力とか、いろんな力をね・・・・弱って来たって感じないかい?あなたさまは、離れていたほうがいいね。悪いことは言わないからね」

とゾーイに言われたフレデリックは、

「そうなのかな?」と呟くと戻って行った。


平民の間で、ギルバード人気が上がった事を貴族は歓迎しなかった。

「この国にはフレデリック様と言う、立派なお世継ぎがいます。ギルバード様には遠慮なさるよう、エリザベート様から、お話するよう、献言いたします」

エリザベートの執務室にやって来たある貴族がこう言った。後ろにはおおきくうなづく、一派が並んでいた。

「今、妃殿下がお忙しいのがわからないのですか?」とタバサが鋭く言うと、

「もっと効率よくなさればよろしい」と答えが帰ってきた。

「なるほど、了解いたしました」とエリザベートはにこやかに答えた。

「それでは、執務の続きがございますので、お引取りを」とにこにこしたエリザベートに送られた一行は、ぞろぞろと帰って言った。



翌日から、カザリンがお茶会を三回程開いた。王妃のおしばいごっこに、新しい脚本が導入された。

出演者は毎日楽しげに練習をした。練習の合間に、夫婦の間に起こった事をうちあけ合った。扇の影で交わされる忍び笑いは 共犯関係なれあいの響きをまとい楽しげに広がっていった。


「あなたは、いつからエリザベート様の執務の下働きに行けますの?」と夕食の席で妻から聞かれて、彼は戸惑った。

執務の手伝いではなく、下働きという言い方もあるが、何故?手伝いに?自分の領地の事で手一杯なのだが・・・

「いや、わたしにそんな予定はないが・・・」

「あら、エリザベート様は、一人で国を回してらっしゃるでしょ?ギルバード様が手伝えばうまく行くのに、あなたは効率的にすればいいって言ったそうじゃない。そうれだったら、あなたが下働きでお手伝いをすればいいでしょ。あなたに出来るのはせいぜい、指示を仰ぎに来た人に休憩をとって貰ったり、かわりに書類を運ぶくらいしかできないでしょ」

「わたしは・・・・」

「あら、あなた。あなたの無能をあげつらっているんじゃないわよ。無能だって無能なりに働けるもの。そこは使いようですわ。それこそ、効率ですわよ・・・・」

「その言い方は・・・・」

「あら、だってこの領地の事しかやってないじゃありませんか!もっと効率的にやれば、エリザベート様のお手伝いに行けますわよ。王妃殿下と話し合って、効率的にあなたがたを配置するように致しましたのよ。上位貴族に有能な方がいないのは痛手ですわね。でもなんとか・・・・効率的に話し合いましたのよ。そうじゃないと、お芝居の練習ができませんでしょ。せっかく、「あの有名な方」が脚本を書いて下さったのに・・・・・」

「 その・・・わたしは、あの時皆に着いて行っただけで・・・・」と彼は弱々しく呟いた。




しおりを挟む
感想 176

あなたにおすすめの小説

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

王女殿下を優先する婚約者に愛想が尽きました もう貴方に未練はありません!

灰銀猫
恋愛
6歳で幼馴染の侯爵家の次男と婚約したヴィオラ。 互いにいい関係を築いていると思っていたが、1年前に婚約者が王女の護衛に抜擢されてから雲行きが怪しくなった。儚げで可憐な王女殿下と、穏やかで見目麗しい近衛騎士が恋仲で、婚約者のヴィオラは二人の仲を邪魔するとの噂が流れていたのだ。 その噂を肯定するように、この一年、婚約者からの手紙は途絶え、この半年ほどは完全に絶縁状態だった。 それでも婚約者の両親とその兄はヴィオラの味方をしてくれ、いい関係を続けていた。 しかし17歳の誕生パーティーの日、婚約者は必ず出席するようにと言われていたパーティーを欠席し、王女の隣国訪問に護衛としてついて行ってしまった。 さすがに両親も婚約者の両親も激怒し、ヴィオラももう無理だと婚約解消を望み、程なくして婚約者有責での破棄となった。 そんな彼女に親友が、紹介したい男性がいると持ち掛けてきて… 3/23 HOTランキング女性向けで1位になれました。皆様のお陰です。ありがとうございます。 24.3.28 書籍化に伴い番外編をアップしました。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。

藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。 「……旦那様、何をしているのですか?」 その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。 そして妹は、 「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と… 旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。 信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!

as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。 しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

処理中です...