38 / 48
33 王家主催のお茶会
しおりを挟む
王太子とロザモンドの結婚一年目でお茶会が開催された。王太子の祝いと言う事で招待客は若かった。
二人は別々の場所で招待客の挨拶を受けていた。
エリザベートは料理に気を配り、外国からの客の応対をした。そしてカザリンも、彼女に付き従って動いた。
会場をぐるっと見渡していると、思いがけない姿を見つけた。
「ギル、久しぶり、よく来てくれたわ」とエリザベートが言うと
「元気そうでよかった」と優雅にかがむとエリザベートの手をとった。
「逢瀬はバルコニーで」と笑うとギルバードはエリザベートをエスコートしてバルコニーに出た。
「ねぇ、妹とロザモンドの事」
「えぇ、申し訳ないことをしたわ、謝罪のお手紙を出したけど・・・」
「イライザから、手紙の事は聞いた。返って恐縮していたよ・・・・よろしく、仲良くしたいって伝言受けてるよ」
「そう、良かったわ」
「一度、国に帰るけど、すぐに戻って来る。この国の道を造るよ」とギルバードはエリザベートを見ながら言った。
「フレデリックとは、手紙でやりとりしてたんだ。君には内緒でって二人で決めて」
内緒って聞いて、エリザベートが思わず口を尖らしたのを、見たギルバードは子供時代のエリザベートを重ねた。
「わたしだけに怒らないで、怒るなら二人でいる時に」とギルバードは大げさに震えて言った。
「もう」とエリザベートがギルバードを睨んだ時、悲鳴が聞こえた。
とっさにギルバードはエリザベートを後ろにかばったが、すぐに二人は悲鳴の方に急いだ。
侍従のダラスが
「エリザベート様、ロザモンド様が・・・・・」と言うとエリザベートをその場に押しとどめた。
「いけません。危ないです」とダラスはエリザベートを決して近寄らせなかった。
「犯人がまだいるかも知れません。狙われるかも知れません」
ギルバードが指揮を取り、客は全員、別室で待機となり、一人も帰さなかった。
被害を受けたのは、ロザモンドとフレデリックだった。
二人は別室で手当を受けているが、カザリンが家族として付き添った。
エリザベートはギルバードとダラスに付き添われて、二人を見舞ったがすぐに客と話をする為に各部屋を回った。
「カザリン、あなたが義姉になってくれて、助かるわ」とエリザベートは、カザリンの手を握るとささやいた。
エリザベートは、若い女性と話していて、違和感を感じた。古代ギリー語を会話に混ぜて来たのだ。いかにも貴族といった感じで背筋を伸ばして、言葉使いも聞き手を意識しているようだった。
結局、客は全員、王宮で一晩を過ごした。
待機していた馭者に、食事と飲み物を提供するように言ったのはギルバードだった。
「さすがだわ。わたくし、そこまで気が回らなかった」とエリザベートが言うと
「馭者は大事だ。安全に家に戻って欲しいからね」
それから、二人はロザモンドとフレデリックの様子を見に行った。
ロザモンドは薬で眠っていた。切りつけられた傷が痛々しい。嫌いで憎んだ相手だが、その姿を見ればそんな感情も消えて行った。
カザリンは侍女を休ませて自分一人で付き添っていてこう言った。
「わたくしは、家に戻れば侍女にまかせて休めますもの。ガーベラとジャスミンはこれからが大変ですわ」
「確かにそうなりますね。でもカザリンも無理しないでね」とエリザベートは返した。
フレデリックは起きて待っていた。寝てないことを責めようと口を開いた二人を見て、手で黙るように合図してフレデリックは
「君たち二人に、任せていれば安心だと知ってるけど、待っていたかった」
「そうだね。わたしも同じ事をする」とギルバードが答えた。
「明日から取り調べだな」とフレデリックは呟いた。
「しっかり、寝て明日に備えろ」とギルバードは言うとテーブルに置いてあった薬湯をフレデリックに渡した。
ギルバードは彼に笑いかけると、ゆっくりと薬湯を飲み、器を返して水の入ったコップを受け取った。
空のコップを受け取ると、
「おやすみ」というとエリザベートを促して部屋を出た。
◇◇◇
新しく「神子の余分」を投稿しはじめました。読んでみて下さい。
二人は別々の場所で招待客の挨拶を受けていた。
エリザベートは料理に気を配り、外国からの客の応対をした。そしてカザリンも、彼女に付き従って動いた。
会場をぐるっと見渡していると、思いがけない姿を見つけた。
「ギル、久しぶり、よく来てくれたわ」とエリザベートが言うと
「元気そうでよかった」と優雅にかがむとエリザベートの手をとった。
「逢瀬はバルコニーで」と笑うとギルバードはエリザベートをエスコートしてバルコニーに出た。
「ねぇ、妹とロザモンドの事」
「えぇ、申し訳ないことをしたわ、謝罪のお手紙を出したけど・・・」
「イライザから、手紙の事は聞いた。返って恐縮していたよ・・・・よろしく、仲良くしたいって伝言受けてるよ」
「そう、良かったわ」
「一度、国に帰るけど、すぐに戻って来る。この国の道を造るよ」とギルバードはエリザベートを見ながら言った。
「フレデリックとは、手紙でやりとりしてたんだ。君には内緒でって二人で決めて」
内緒って聞いて、エリザベートが思わず口を尖らしたのを、見たギルバードは子供時代のエリザベートを重ねた。
「わたしだけに怒らないで、怒るなら二人でいる時に」とギルバードは大げさに震えて言った。
「もう」とエリザベートがギルバードを睨んだ時、悲鳴が聞こえた。
とっさにギルバードはエリザベートを後ろにかばったが、すぐに二人は悲鳴の方に急いだ。
侍従のダラスが
「エリザベート様、ロザモンド様が・・・・・」と言うとエリザベートをその場に押しとどめた。
「いけません。危ないです」とダラスはエリザベートを決して近寄らせなかった。
「犯人がまだいるかも知れません。狙われるかも知れません」
ギルバードが指揮を取り、客は全員、別室で待機となり、一人も帰さなかった。
被害を受けたのは、ロザモンドとフレデリックだった。
二人は別室で手当を受けているが、カザリンが家族として付き添った。
エリザベートはギルバードとダラスに付き添われて、二人を見舞ったがすぐに客と話をする為に各部屋を回った。
「カザリン、あなたが義姉になってくれて、助かるわ」とエリザベートは、カザリンの手を握るとささやいた。
エリザベートは、若い女性と話していて、違和感を感じた。古代ギリー語を会話に混ぜて来たのだ。いかにも貴族といった感じで背筋を伸ばして、言葉使いも聞き手を意識しているようだった。
結局、客は全員、王宮で一晩を過ごした。
待機していた馭者に、食事と飲み物を提供するように言ったのはギルバードだった。
「さすがだわ。わたくし、そこまで気が回らなかった」とエリザベートが言うと
「馭者は大事だ。安全に家に戻って欲しいからね」
それから、二人はロザモンドとフレデリックの様子を見に行った。
ロザモンドは薬で眠っていた。切りつけられた傷が痛々しい。嫌いで憎んだ相手だが、その姿を見ればそんな感情も消えて行った。
カザリンは侍女を休ませて自分一人で付き添っていてこう言った。
「わたくしは、家に戻れば侍女にまかせて休めますもの。ガーベラとジャスミンはこれからが大変ですわ」
「確かにそうなりますね。でもカザリンも無理しないでね」とエリザベートは返した。
フレデリックは起きて待っていた。寝てないことを責めようと口を開いた二人を見て、手で黙るように合図してフレデリックは
「君たち二人に、任せていれば安心だと知ってるけど、待っていたかった」
「そうだね。わたしも同じ事をする」とギルバードが答えた。
「明日から取り調べだな」とフレデリックは呟いた。
「しっかり、寝て明日に備えろ」とギルバードは言うとテーブルに置いてあった薬湯をフレデリックに渡した。
ギルバードは彼に笑いかけると、ゆっくりと薬湯を飲み、器を返して水の入ったコップを受け取った。
空のコップを受け取ると、
「おやすみ」というとエリザベートを促して部屋を出た。
◇◇◇
新しく「神子の余分」を投稿しはじめました。読んでみて下さい。
291
お気に入りに追加
4,848
あなたにおすすめの小説

不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。

愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。
古堂すいう
恋愛
フルリス王国の公爵令嬢ロメリアは、幼馴染であり婚約者でもある騎士ガブリエルのことを深く愛していた。けれど、生来の我儘な性分もあって、真面目な彼とは喧嘩して、嫌われてしまうばかり。
「……今日から、王女殿下の騎士となる。しばらくは顔をあわせることもない」
彼から、そう告げられた途端、ロメリアは自らの前世を思い出す。
(なんてことなの……この世界は、前世で読んでいたお姫様と騎士の恋物語)
そして自分は、そんな2人の恋路を邪魔する悪役令嬢、ロメリア。
(……彼を愛しては駄目だったのに……もう、どうしようもないじゃないの)
悲嘆にくれ、屋敷に閉じこもるようになってしまったロメリア。そんなロメリアの元に、いつもは冷ややかな視線を向けるガブリエルが珍しく訪ねてきて──……!?

最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね
ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる