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28 セントクレア侯爵家の後継

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話はさかのぼって、演劇の事でエリザベートが忙しかった頃、宰相の所の書類を処理していたタバサが

「できれば、最後に目を通していただければ」と言った分を読終わってエリザベートは、ため息をついた。

タバサの成長・・・・ケイトのいる所でうっかりした事を言わない口の固さ・・・は嬉しいが。

実家の両親の真意を計りかねたのだ。

セントクレア侯爵家には後継がいなくなった。本来ならエリザベートが婿をとるのだが・・・・・

記憶が戻った時には第二妃になることが了承された後だった為、どうしようもなかった。


そして、セントクレア家が養子を取る旨が報告されているのだが、母親の親戚から養子が入るのだ。

侯爵は父だから、本来は父の方の親戚から養子を取るが・・・・両親が決めたのならと口は出さない。



両親から、その件の連絡はなかったのに、よりによってあの通し稽古の日に、養子縁組の件で忙しいから出られないと連絡があった。

エリザベートは母親に役を割り当てる時、どうせこの人はなにかと口実を設けて役を降りるだろうと思っていたし、時々、台本は読めますよね。もう覚えましたよね。と便りをだし、通し稽古の二・三日前から王宮に泊まってロザモンドの稽古に付き合って欲しい。二人の絡みの場面もあるからと、度々連絡を入れていたのだ。

それがいきなりの連絡・・・・エリザベートは稽古が終わってから、ロザモンドに話そうと決めたのだったが、ケイトの事件が起きた為、養子の件を話したのは本番の後になった。


ロザモンドの反応は思った通りで、養子の事より母親に怒りを覚えたようだった。

「まぁいいんじゃない。あの人、劇の稽古にいくら誘っても来なかったのよ」どうやらロザモンドも誘っていたようだ。


「お母様はわたしができる事を認めたくないのだわ・・・・・だから勉強したいわたしの邪魔をしていたのよ・・・だいたい養子を貰うなんて早くわかっているのに急に来ないなんて・・・・」とロザモンドは舞台用に地味に結った髪を解いてもらいながら、憤慨して言うのだった。







◇◇◇

セントクレア侯爵目線

両親と兄が事故で死んでわたしが跡取りになった。わたしは、家を出て幼馴染のアリスと結婚するつもりだったが、兄の死ですべてが変わった。

わたしは周囲のすすめで、キルメニイと結婚した。執事と親戚に執務を教えて貰い懸命に努力した。

娘が二人生まれたがわたしは極力二人とかかわらないようにした。それというのも、どうしてもアリスが忘れられず、二人のうち、どちらかが家を継いだらわたしは家を出てアリスと暮らしたいという思いを消せなかったからだ。

そんな薄情な父親の事など覚えている事はないのだ。

せめて財産を残してやりたいと領地の経営のほかに自分の事業を起こした。忙しかったが家族の為だ。辛くなかった。


それなのに、二人とも妃殿下になってしまった。それが嬉しくないなんて不敬なことは考えなかったが、王太子殿下を少し恨んでしまう。

気を取り直して跡取りを探そうと思った。侯爵家の親戚に適任の者はもちろん、数人いてそれとなく打診もされた。

何人かと会ってみようと招待状を出そうとした時、ふと思った。

自分の我が儘で、妻を一人にする。その時、頼る養子は自分の親戚のほうがいいのではないかと。


それで執事に妻の方の親戚を詳しく教えて貰った。

何人かとお茶を飲んで話をして、これはと思ったのはライリーとカザリンの若い夫婦だった。ライリーは城の文官として働き、カザリンは商店で事務をしていると言う事だった。

何度か会って話をすすめていくとカザリンは、去る公爵家の侍女として、働き出した。上級貴族の生活を学びたいとからと聞いた。

これなら、任せられると思い、妻に話を持ちかけた。自分の親戚からの養子と聞いて喜んでくれた。


手続きをすませ、内輪でお祝いをした。わたしの親戚のなかには、妻の親戚を選んだ事を悪く言う者もいて、ライリーに喧嘩を吹っかけたが、ライリーが優しく諭していた。

「大事なのは妃殿下お二人のお気持ちですので」と言われては、あまり文句も言えないだろう。


今、国を開けている王太子殿下たちが戻って来たら、妃殿下二人に報告をしてわたしは、侯爵家いえを出よう。








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