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27 北の国の結婚式
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メアリーとタバサが無事卒業して、キャリーが入学した。
キャリーは前世で、孤児院にいるときに視察に来た貴族の目に止まり、学費を出して貰えることになり、学院に行きそこで抜群の能力を示したのだった。
エリザベートはキャリーを本来の道筋に戻した。
寮にはいったキャリーは休みの日は城へ帰るという生活なので、完全に元に戻ったってことにならないが・・・
メアリーとタバサは試験に合格して、変わらずエリザベートの元で働いている。
二人はそれぞれ、助手を一人従え、人を育てる事を学び始めた。
そこに北の隣国から結婚式の招待状が来た。ギルバードの妹が王太子のクリントの元へ嫁ぐのだ。
前回は王太子とロザモンドが招待に応じて訪問した。
帰って来た二人の間にすきま風が吹いていたが、エリザベートには関係のない事だったし、この行事の後、詫び状を書く必要がなかったのが、ありがたいと思ったのは、苦い思い出だ。
今回も大丈夫であって欲しいと、エリザベートは思った。
北の国への一番大きな街道は、隣国を通っている。隣国へは国王の姉君が嫁いでいて、我が国との関係はとても良い。
この訪問には極力関わらないように気をつけていたのに、ロザモンドが訪ねて来た。古代ギリー語で書いたものを添削して欲しいと言うのだ。
「お姉様、今回は招待客だから、挨拶はしませんが、あちらの挨拶を聞き取れたらと、思って」
「ロザモンドはほんとに頑張り屋さんになったのね。毎日、声を出して教科書を読んで、その発音もきれいになって来ているらしいわね。ちょっと待ってね。エミリーがお茶を入れてるから、座ってて」
「字もきれいになって来たわね」と訂正をしたものを返した。
「家にいる頃に気づいていたら、よかったのに」とエリザベートは呟いた。
馬車の旅は、楽しく、フレデリックは、馭者になりたかった少年と、道を造ると言った少年を思い出した。
隣国に入ったら、馬車の乗り心地がよくなった。休憩の時に確認したら、隣国の道は整備されていると言う事だった。
やがて、馬車は北の国に入ったが、道がひどかった。ロザモンドは途端に機嫌が悪くなり、無口になった。
結婚式は無事に終わり、式の後のお茶会が開かれた。
フレデリックとギルバードは久しぶりに二人で会った。ギルバードはフレデリックの歩き方を見て、違和感と同時にこれ知っていると、感じたが、話し始めると忘れてしまった。
「馬車で走っていて、ギルの国の街道は走りやすかった。ギル、道は君が?」とフレデリックが言うと
「あぁ、道を造る人になると言ったからな・・・・もちろんそれだけじゃないが」
「そうか・・・・もし時間があれば我が国に来て指導してくれないか?」
「そうだな、・・・母上の大事な場所だしね」とギルバードが答えると
「そうか・・・・頼むよ」とフレデリックが答えた。
「技師と助手も連れて行くし・・・・・そちらで選んだ者にも指導するから」
「それは有難い・・・・・」とフレデリックは笑った。
フレデリックと別れたギルバードが部屋にいると、妹がお茶会を終えて帰って来たが泣いていると知らせがあった。
急いで駆けつけるとイライザがしくしく泣き、新婚のクリントが自分も泣きそうな顔をしていた。
ギルバードは、落ち着け、落ち着けと自分に言いながらイライザを慰めた。
やっと聞き出した泣いている理由に、ギルバードは天を仰ぎたくなった。
なんでも、この北の国の道の悪さを、馬鹿にして、ロザモンドが( 北の昏き国へと捨てられたあはれな乙女)と呼びかけたそうなのだ。とっさに
(そこのうごめくもの、そなたの 目は 真実を写さぬ)と返したそうだが、それまで、和やかだったお茶会が、うそのようにぎこちないものになり、大御所の夫人がお暇したのを皮切りに、皆が失礼でない程度に、帰って行ったのを、また、ロザモンドが
「皆、道が悪くて腰が」と言いかけて、自身の侍女に止められ二人がかりで引きづられ帰って行ったとか・・・・
侍女二人は、退出して来ないロザモンドを心配して、迎えに来たらしい。
控えの間で侍女同士のおしゃべり情報によると、侍女二人はロザモンドの実家からの侍女ではなく、王宮が派遣した侍女らしい・・・・・
「なるほど・・・・さすが、王宮からの侍女だな」とギルバードは思った。
「わたしがあなたに一目惚れしたのはご存知のはずです。そのような悲しい事を言わないで下さい」
「でも・・・」
「わたしはこのバルコニーから、あなたを愛していると大声を出します。それで信じて下さい」とクリントがバルコニーに向かうのをギルバードは必死に引き止めた。
クリントの侍従もがんばって引き止めている。
「イライザ・・・・おまえも・・・・・」とギルバードが言うと
「クリント、わかってます。悔しくて・・・・つい・・・・クリントに意地悪を・・・ごめんなさい」と言っても泣き続けるイライザをなだめる為に
「そうだ、こうしよう。もちろんクリント殿下の許可がいただければだけど、わたしが道をきれいにしましょう。どうだイライザそれなら、あのロザモンドになにも言わせないだろ」
「義兄上、そうしていただければ、助かります。ほら、イライザ。あなたからもお願いして!」とクリントに言われて
「お兄様、お願いします。あの女を見返してやりますわ」とイライザが拳を握るのを見ながら、
あーエリザベートに会うのが遅くなると、ギルバードはため息が出たのだった。
キャリーは前世で、孤児院にいるときに視察に来た貴族の目に止まり、学費を出して貰えることになり、学院に行きそこで抜群の能力を示したのだった。
エリザベートはキャリーを本来の道筋に戻した。
寮にはいったキャリーは休みの日は城へ帰るという生活なので、完全に元に戻ったってことにならないが・・・
メアリーとタバサは試験に合格して、変わらずエリザベートの元で働いている。
二人はそれぞれ、助手を一人従え、人を育てる事を学び始めた。
そこに北の隣国から結婚式の招待状が来た。ギルバードの妹が王太子のクリントの元へ嫁ぐのだ。
前回は王太子とロザモンドが招待に応じて訪問した。
帰って来た二人の間にすきま風が吹いていたが、エリザベートには関係のない事だったし、この行事の後、詫び状を書く必要がなかったのが、ありがたいと思ったのは、苦い思い出だ。
今回も大丈夫であって欲しいと、エリザベートは思った。
北の国への一番大きな街道は、隣国を通っている。隣国へは国王の姉君が嫁いでいて、我が国との関係はとても良い。
この訪問には極力関わらないように気をつけていたのに、ロザモンドが訪ねて来た。古代ギリー語で書いたものを添削して欲しいと言うのだ。
「お姉様、今回は招待客だから、挨拶はしませんが、あちらの挨拶を聞き取れたらと、思って」
「ロザモンドはほんとに頑張り屋さんになったのね。毎日、声を出して教科書を読んで、その発音もきれいになって来ているらしいわね。ちょっと待ってね。エミリーがお茶を入れてるから、座ってて」
「字もきれいになって来たわね」と訂正をしたものを返した。
「家にいる頃に気づいていたら、よかったのに」とエリザベートは呟いた。
馬車の旅は、楽しく、フレデリックは、馭者になりたかった少年と、道を造ると言った少年を思い出した。
隣国に入ったら、馬車の乗り心地がよくなった。休憩の時に確認したら、隣国の道は整備されていると言う事だった。
やがて、馬車は北の国に入ったが、道がひどかった。ロザモンドは途端に機嫌が悪くなり、無口になった。
結婚式は無事に終わり、式の後のお茶会が開かれた。
フレデリックとギルバードは久しぶりに二人で会った。ギルバードはフレデリックの歩き方を見て、違和感と同時にこれ知っていると、感じたが、話し始めると忘れてしまった。
「馬車で走っていて、ギルの国の街道は走りやすかった。ギル、道は君が?」とフレデリックが言うと
「あぁ、道を造る人になると言ったからな・・・・もちろんそれだけじゃないが」
「そうか・・・・もし時間があれば我が国に来て指導してくれないか?」
「そうだな、・・・母上の大事な場所だしね」とギルバードが答えると
「そうか・・・・頼むよ」とフレデリックが答えた。
「技師と助手も連れて行くし・・・・・そちらで選んだ者にも指導するから」
「それは有難い・・・・・」とフレデリックは笑った。
フレデリックと別れたギルバードが部屋にいると、妹がお茶会を終えて帰って来たが泣いていると知らせがあった。
急いで駆けつけるとイライザがしくしく泣き、新婚のクリントが自分も泣きそうな顔をしていた。
ギルバードは、落ち着け、落ち着けと自分に言いながらイライザを慰めた。
やっと聞き出した泣いている理由に、ギルバードは天を仰ぎたくなった。
なんでも、この北の国の道の悪さを、馬鹿にして、ロザモンドが( 北の昏き国へと捨てられたあはれな乙女)と呼びかけたそうなのだ。とっさに
(そこのうごめくもの、そなたの 目は 真実を写さぬ)と返したそうだが、それまで、和やかだったお茶会が、うそのようにぎこちないものになり、大御所の夫人がお暇したのを皮切りに、皆が失礼でない程度に、帰って行ったのを、また、ロザモンドが
「皆、道が悪くて腰が」と言いかけて、自身の侍女に止められ二人がかりで引きづられ帰って行ったとか・・・・
侍女二人は、退出して来ないロザモンドを心配して、迎えに来たらしい。
控えの間で侍女同士のおしゃべり情報によると、侍女二人はロザモンドの実家からの侍女ではなく、王宮が派遣した侍女らしい・・・・・
「なるほど・・・・さすが、王宮からの侍女だな」とギルバードは思った。
「わたしがあなたに一目惚れしたのはご存知のはずです。そのような悲しい事を言わないで下さい」
「でも・・・」
「わたしはこのバルコニーから、あなたを愛していると大声を出します。それで信じて下さい」とクリントがバルコニーに向かうのをギルバードは必死に引き止めた。
クリントの侍従もがんばって引き止めている。
「イライザ・・・・おまえも・・・・・」とギルバードが言うと
「クリント、わかってます。悔しくて・・・・つい・・・・クリントに意地悪を・・・ごめんなさい」と言っても泣き続けるイライザをなだめる為に
「そうだ、こうしよう。もちろんクリント殿下の許可がいただければだけど、わたしが道をきれいにしましょう。どうだイライザそれなら、あのロザモンドになにも言わせないだろ」
「義兄上、そうしていただければ、助かります。ほら、イライザ。あなたからもお願いして!」とクリントに言われて
「お兄様、お願いします。あの女を見返してやりますわ」とイライザが拳を握るのを見ながら、
あーエリザベートに会うのが遅くなると、ギルバードはため息が出たのだった。
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