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彼女の死後 4
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一回目です
侍女長は王太子の呼び出しに自分の私用に使っている侍女を二人連れてやって来た。
「なにかと忙しいのに来てもらって悪いな」
「いえ、大丈夫でございます」
「そうか、まぁ俺は急いでいるから、いきなりの質問だが、エリザベートの侍女を他に回していたのは何故だ?」
「必要ないからです」
「お前の判断か?」と王太子が静かに聞くと
「はい、お飾りの妃ですから」
「なるほどお飾りの妃か・・・・お前がつけた呼び名か?」
「いえ・・・・」
「違うと言うのか?」静かな調子に侍女長は返事が出来なかった。自分はとんでもない事をしたのだとわかった。
「・・・・・・」
「わたしの妃をお前はお飾りの妃と呼んで侍女がいらないと判断したのだな」
「・・・・・・」
「答えよ。侍女長」
「殿下がお飾りの妃と・・・・」
「エリザベートは、わたし、この王太子の妃である。それも第一妃より先に、我が元に、迎えた妃だ。わたしの妃をわたしがエリザベートと呼ぼうと、お飾りと呼ぼうとお前に関係あるのか?」
「いえ・・・・・」
「王太子の妃を妃と認識できない侍女長はいらない。お前は侍女長として働いておらぬのに侍女長づらして我が妃を虐げた」
「いえ・・・・そのようなつもりは・・・」
「お前もつもりがあるのか。ゆっくり聞いてやろう。つもりをな」
それから、固まって動けない侍女長を冷たく見据えて
「この女は妃殺しの疑いがある。家族も捉えて牢に入れろ」
フレデリックはずっと会うのを断っていたギルバードを招いた。
「呼び立ててすまない。君にも謝らないといけないな・・・・エリザベートを死なしてしまった。俺が幸せにするとあの時思っていたのに」
「俺こそ、奪い取ればよかったんだ・・・・だが、エリザベートはお前を愛していたからな」
「・・・・・だったのだろうか」とフレデリックは呟き
「婚約破棄すればお前が、娶るとわかっていたから、第二妃として縛り付けた。あげく不幸にして・・・」
涙を拭くと続けて
「わかるとおもうが、俺は復讐の為に王宮をずたずたにした・・・・その上、あの土砂崩れだ。・・・悪いが・・・・あとを任せたい」
「お前なら立て直せる・・・・手伝うよ。救援の手筈は整えた。フレデリック・・・もう一度」とギルバードは言うが
「いや・・・・体が持たない・・・・医者に見せた」
「なんと・・・・」ギルバードが絶句すると
「ギル・・・頼む」
「 国王陛下は知っているのか?」
「あぁ、話した」
「 わかった・・・・・引き受ける」
「助かる。俺は妻と侯爵夫人と侍女たちを連れて、別荘に引っ込む・・・・俺が死んだら女たちは修道院だ。手配もしておく」
「「三人であそこへ行きたかったな」」同時に同じ事を言った二人は肩を叩きあって別れた。
ギルバードは、さっそく王宮の立て直しを始めた。
だが、皆がすすめる中庭の整備は、首を横に振った。
ここは一番苛烈な処罰が行われた場所なのだ。あのエリザベートつきの侍従と文官の一族をここに集めて焼き殺した。
侍従は薪を横流ししていた。文官もそれを知っていた。
フレデリックは彼らを全員、子供に至るまで中庭に集めるとまわりを薪で囲って火をつけた。
「寒いのはいやなのであろう。存分に温まるがいい」フレデリックが彼らにかけた言葉だ。
ギルバードはその話を聞いて
「なるほど」と呟いた。
その後、たびたび一人で中庭に佇んでいたが、ある日片付けるよう命じた。
「もう、気が済んだのか」
彼は誰に向かって言ったのか。
やがて、フレデリックが亡くなったと知らせがあった。
「抜け駆けして二人であそこに行くつもりだな」
ギルバードの言葉に側近は首を傾げた。
侍女長は王太子の呼び出しに自分の私用に使っている侍女を二人連れてやって来た。
「なにかと忙しいのに来てもらって悪いな」
「いえ、大丈夫でございます」
「そうか、まぁ俺は急いでいるから、いきなりの質問だが、エリザベートの侍女を他に回していたのは何故だ?」
「必要ないからです」
「お前の判断か?」と王太子が静かに聞くと
「はい、お飾りの妃ですから」
「なるほどお飾りの妃か・・・・お前がつけた呼び名か?」
「いえ・・・・」
「違うと言うのか?」静かな調子に侍女長は返事が出来なかった。自分はとんでもない事をしたのだとわかった。
「・・・・・・」
「わたしの妃をお前はお飾りの妃と呼んで侍女がいらないと判断したのだな」
「・・・・・・」
「答えよ。侍女長」
「殿下がお飾りの妃と・・・・」
「エリザベートは、わたし、この王太子の妃である。それも第一妃より先に、我が元に、迎えた妃だ。わたしの妃をわたしがエリザベートと呼ぼうと、お飾りと呼ぼうとお前に関係あるのか?」
「いえ・・・・・」
「王太子の妃を妃と認識できない侍女長はいらない。お前は侍女長として働いておらぬのに侍女長づらして我が妃を虐げた」
「いえ・・・・そのようなつもりは・・・」
「お前もつもりがあるのか。ゆっくり聞いてやろう。つもりをな」
それから、固まって動けない侍女長を冷たく見据えて
「この女は妃殺しの疑いがある。家族も捉えて牢に入れろ」
フレデリックはずっと会うのを断っていたギルバードを招いた。
「呼び立ててすまない。君にも謝らないといけないな・・・・エリザベートを死なしてしまった。俺が幸せにするとあの時思っていたのに」
「俺こそ、奪い取ればよかったんだ・・・・だが、エリザベートはお前を愛していたからな」
「・・・・・だったのだろうか」とフレデリックは呟き
「婚約破棄すればお前が、娶るとわかっていたから、第二妃として縛り付けた。あげく不幸にして・・・」
涙を拭くと続けて
「わかるとおもうが、俺は復讐の為に王宮をずたずたにした・・・・その上、あの土砂崩れだ。・・・悪いが・・・・あとを任せたい」
「お前なら立て直せる・・・・手伝うよ。救援の手筈は整えた。フレデリック・・・もう一度」とギルバードは言うが
「いや・・・・体が持たない・・・・医者に見せた」
「なんと・・・・」ギルバードが絶句すると
「ギル・・・頼む」
「 国王陛下は知っているのか?」
「あぁ、話した」
「 わかった・・・・・引き受ける」
「助かる。俺は妻と侯爵夫人と侍女たちを連れて、別荘に引っ込む・・・・俺が死んだら女たちは修道院だ。手配もしておく」
「「三人であそこへ行きたかったな」」同時に同じ事を言った二人は肩を叩きあって別れた。
ギルバードは、さっそく王宮の立て直しを始めた。
だが、皆がすすめる中庭の整備は、首を横に振った。
ここは一番苛烈な処罰が行われた場所なのだ。あのエリザベートつきの侍従と文官の一族をここに集めて焼き殺した。
侍従は薪を横流ししていた。文官もそれを知っていた。
フレデリックは彼らを全員、子供に至るまで中庭に集めるとまわりを薪で囲って火をつけた。
「寒いのはいやなのであろう。存分に温まるがいい」フレデリックが彼らにかけた言葉だ。
ギルバードはその話を聞いて
「なるほど」と呟いた。
その後、たびたび一人で中庭に佇んでいたが、ある日片付けるよう命じた。
「もう、気が済んだのか」
彼は誰に向かって言ったのか。
やがて、フレデリックが亡くなったと知らせがあった。
「抜け駆けして二人であそこに行くつもりだな」
ギルバードの言葉に側近は首を傾げた。
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