今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
11 / 48

08 ロザモンドの最初の外交 1

しおりを挟む
無事、結婚式が終わった。

パレードも大成功だった。その夜、王太子はロザモンドとダンスをして、エリザベートともダンスをした。

「おまえは俺を嫌っていたよな」と聞かれて

「ほとんど話したこともありませんのに」と答えると

「いつもロザモンドが先に部屋に」

「わたくしは侍女に呼ばれてすぐに向かっております。殿下こそ、わたくしが部屋にいくとロザモンドと親しげにお話なさっておりましたが」

「それは・・・・」

「婚約もしていない相手に愛称でよばれて喜んでいたのは殿下でらっしゃいます」とエリザベートに言われてフレデリックはなにも言えなかった。

王太子夫妻は夜会を早めに抜けた。

エリザベートは、隣国からやって来たギルバードとダンスを踊り、バルコニーで少し話をした。

「君が王太子妃になると思っていたのに」

「なりました、第二妃ですが」

「そうだな・・・・・明日、一日置いて王太子妃主催のお茶会か。この夜会より大変そうだな女性連は」

「多分ね、まぁ外交儀礼のかたまりの会だから決まり通りにやればいいのよ。王太子妃つきの文官がいるからなんとかなるでしょう」

「明日、庭を案内してくれ」

「いいわ。午後二時に使いを出すわ」



その夜、ドレスを脱がせて貰いながら、

「結婚式って大変ね」とエリザベートはエミリーに言った。




翌日、使いに案内されてギルバードがやって来た。

「君の母君は相変わらずなんだね」

「問題は母ではなく祖母にもありますわ」

「侍女も平民出身でしたし」

「君の優秀さが目立って君の家の問題に目をつぶったんだね。第二妃として取り込むとはずるいね」

「いいのよ、できる範囲の事しかしないから」

「そのうち、手伝いたいな」

エリザベートとギルバードは笑み交わした。それから紅茶を飲み干すと席を立った。




その夜、もう休む頃にエリザベートの部屋をノックするものがあった。

乱暴なノックで

「起きてますよね。開けて下さい」

エミリーがドアを開けるとロザモンドの侍女のリリーだった。

「早くして下さい。明日のお茶会のスピーチの原稿を書いてください」

「明日のお茶会のスピーチですって、王太子妃殿下がご自分で書くべきものですよ」

「ロザモンド様が書いて欲しいと言ってます」

「なるほど、確かにロザモンドは古代ギリー語は苦手だわね。書くのは駄目でも読むのは大丈夫よね」

「もちろんです。あなたができることくらいできます」とリリーは答えた。

「そうね、それくらい出来て当たり前ね」


「わかりました。書きましょう。明日取りに来てね。届けてもいいけど目立つでしょ。取りに来てね」



エリザベートは全文、古代ギリー語で書いた。


翌日取りに来たリリーに受け取りの署名をするように言った。

「確認して、スピーチの原稿よ。下に受け取りの署名を」と言うと侍女は署名した。

そして二枚とも持って帰って行った。

エリザベートは自分で仕掛けた事ながら、彼女の間抜けさに驚いた。

まぁ最悪、第二妃の自分が読めばいいと、思いながら会場に足を運んだ。


一番末席に用意された席に座り、次々にやって来る客に丁寧に挨拶をした。







しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう
恋愛
フルリス王国の公爵令嬢ロメリアは、幼馴染であり婚約者でもある騎士ガブリエルのことを深く愛していた。けれど、生来の我儘な性分もあって、真面目な彼とは喧嘩して、嫌われてしまうばかり。 「……今日から、王女殿下の騎士となる。しばらくは顔をあわせることもない」 彼から、そう告げられた途端、ロメリアは自らの前世を思い出す。 (なんてことなの……この世界は、前世で読んでいたお姫様と騎士の恋物語) そして自分は、そんな2人の恋路を邪魔する悪役令嬢、ロメリア。 (……彼を愛しては駄目だったのに……もう、どうしようもないじゃないの) 悲嘆にくれ、屋敷に閉じこもるようになってしまったロメリア。そんなロメリアの元に、いつもは冷ややかな視線を向けるガブリエルが珍しく訪ねてきて──……!?

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね

ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける

堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」  王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。  クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。  せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。  キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。  クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。  卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。  目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。  淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。  そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

処理中です...