王妃はわたくしですよ

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
32 / 38

33 お城はびっくり ジュディ目線

しおりを挟む
「間違いなく、王妃はわたくしですよ」

門番に向かってわたくしは言った。きちんと使者を先行させて、その使者が門に出迎えたと言うのに

「連絡を受けておりません」と門番がふんぞり返る。

その門番に向かってバージルが

「この紋章の意味が理解出来ないのだな。わかった理解できるのを連れて来よう」と言うなり、中に走った。

門番が追いかけたが無駄だった。残りの門番はライリーとミックがパンパンと殴ったと思ったら、地面に転がった。

しばらくしたら、宰相が引きづられて現れた。


「は、は、はい。王妃殿下お久しぶりでございます」

わたくしの帰国は意図せず広まった。国じゅうとは言えないが、貴族全員に広まった。




調べるとわたくしが戻ることを宰相はきちんと門番に連絡をしていた。しかし、ある人が出迎えをするなと一杯飲ませながら、悪いようにはしないと言ったらしい。

それを聞いたわたくしは、門番を見舞いに言って話をした。

護衛のバージルがドアを開けて、わたくしの後ろに無言で控えていた。

「まぁ災難でしたね。王妃に歯向かえと命令されるなんて・・・これからどうするか指示は来てますか?」

「いえ・・・そんなんじゃなくて・・・ですね・・・番長が言うとおりに、番長が」

「安心なさい。これからはわたくし、王妃の言うことを聞けばいいのです。難しいことは言いません。安心して」

ベッドにいる門番全員を慰めた。これで気持ちよく出入り出来る。


王妃の部屋として案内されたのは客間だった。侍女長がやって来て

「王妃殿下はなにもなさらなくて大丈夫です」と言って去って行った。面白いのでわたくしとバージル、ライリー、ミックの四人で城内を練り歩いた。

騎士団の訓練場を見に行くと騎士の動きがぎこちなくなったような気がした。バージル達は薄笑いを浮かべている。

絶対、わざとだ。

侍女は見かけると逃げていく、追いかけるのもかわいそうなので、あまり可哀想じゃない、宰相に会いに行った。

「すぐに侍女長を呼びつけて」と言ってソファにどっかりと座ってやった。宰相は青い顔になりながら侍女長を呼ぶように指示を出した。そんなに怖がるなら意地悪しなきゃいいのに。



「わたくしは夫と会いたい。手配なさい」と侍女長が部屋に入るなり言ってやった。

侍女長はわたくしを無言で睨みつけた。

「王妃が夫である王と会いたいと言っているの。手配なさい」

「手続きが・・・」

「そうね。手続きは大事ね。王都にいる貴族を全員呼びなさい。息子の不始末の責任を取って人質になっていた王妃が戻った。感謝を伝える挨拶に来るようにと」

「あの・・・」

「あら、宰相に言うことですね。王妃が国王に会う手続きってそう言うことですね。侍女長」


わたくしは宰相に向かって

「聞いていましたね。明後日の朝。わたくしは夫と会います」



「王妃らしかった?」とわたくしはバージルに聞いた。

「そりゃもう・・・」







初めて会った国王は年寄りで車椅子に乗っていた。

「初めまして、わたくしが王妃、あなたの妻でございます。息子の間違いの責任を取って人質として帝国へ行っておりました」

「そのようだな。ご苦労だった。無事に帰れたと言うのは・・・苦労も多かっただろう・・・今後は王妃としてゆっくり過ごして」と言った所で咳き込みだした。

侍従が背中をさすると、車椅子を押して去って行った。

わたくしは、王座の隣りに立つと貴族を見回した。元、実家のガーデナー伯爵と実母の実家のアルトナー子爵は念入りに上から下まで見てやった。

「戻って参りました。先ほども申しましたが、息子がおとなしくしているということで戻って来ました。王妃としてしっかりと努めます。協力して欲しい」



戻ろうとしている、第二妃ジャンヌに声をかけた。

「後宮を案内して下さる」

「え・・・そのあなたは」

「王妃殿下。単純にそう呼んで下さい」


第二妃ジャンヌの護衛と侍女が近寄ってこようとしたが、バージルがさっとわたくしのそばに立つとそこで立ち止まった。

残りの宰相補佐、本当は護衛のライリーとミックはゆっくりとそばに立った。

「後宮を案内して下さる」もう一度言うと

「は、は、はい」と第二妃ジャンヌは吃りながら答えると

「こちらへ」と言うと歩き出した。それはそれはゆっくりと

「お先に参りますね」の一言でわたくしは、ジャンヌを追い越した。

「え?あ?あの」とジャンヌは足を速めた。

「門を開けなさい」とパメラが言うと

ゆっくりと門が開いた。門番はわたくしが王妃だとちゃんと把握しているようね。

わたくしたちはゆっくりと小道を歩いた。後宮には第二妃ジャンヌと第三妃とその息子ビリーが住んでいる。

そして下女とか侍女がたくさんいるのだ。

侍女長が出迎えた。

「おっしゃってくださればお迎えに上がりますのに」

「わたくしから来たわ」

「それは、申し訳ございません」と侍女長が言っていると

「殿下。殿下」と第二妃ジャンヌが追いついた。



「やっと来たのね。今までここの管理は第二妃がやっていたのかしら?」

「はい」

「今から、わたくしがやります。引き継ぎを」

「え?あの・・・」

「執務室はあるの?」

ライリーとミックの姿はもう見えない。探し物でしょうね?ここで話している間にばれてしまうのに・・・


「それはですね。王妃殿下。説明いたします」と侍女長がしたり顔で言い出した。





しおりを挟む
読んでいただいてありがとうございます。「気がついたら無理!絶対にいや!」と言う作品も投稿しております。良かったらこちらも読んでみて下さい。
感想 9

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...