17 / 38
17 従者の部屋で
しおりを挟む
バージルは部屋の隅に座るとフードを取った。
テーブルに用意された酒と串焼きを取ると輪に加わった。
「随分じゃないか」と。バージルはこの待遇がいいのか悪いのかわからなかったので、どちらでも解釈できる言い方を選んだのだ。
「あぁ随分だ。さすがだな」と赤毛が答え
「確かに、酒も料理もさすがだ。その肉も行けるがこちらの煮込みも美味い」と茶色の髪の男が追加した。
「そうか、貰ってこよう」とバージルは言うと取りに行った。その肉を頬張ったまま
「美味い」と言った。
「今日の会場は半分無礼講だそうだ」と薄茶の男が言うと
「あのお嬢さんはお高いのにそうなのか?」と最初の赤毛が肉を食いちぎりながら言った。
「お?あんたもあれに?」と薄茶の男が言うと
「あぁ、馬車ですれ違うときにうちの主人にいちゃもんを」と赤毛が言った。
「それは気をつけたほうがいいな」とバージルが言うと
「気をつけようがないんだよ」と赤毛が言った。
まわりもこちらに注目して集まって来た。
「兄さんこれでも食って教えてくれ」と言いながらバージルはテーブルから串焼きと酒を持って来て赤毛の前に置いた。
「おぉ、気前のいい兄さんだ」とまわりの男も赤毛の男も笑ってバージルの背中を叩いた。
笑いが収まると赤毛は話し始めた。
「王都の道で俺たちはすれ違ったんだ。いや、すれ違おうとしたんだ。そしたら石が当たったと向こうの護衛が飛んできて抗議されたんだ。たしかに馬車が石を跳ねることはある。それが馬車に当たることもあるだろう。それのどこが問題なんだ?と思ったんだが、すぐに向こうの馬車から、あのお嬢様が出て来てなぁ」
「本人が出てきたのか?」とびっくりして質問が出ると
「そうなんだ。いきなり女が出て来てなぁ。侍女は止めてたようだが、本人が出て来た」と赤毛が口惜しそうに言うのを見て、男たちは顔を見合わせた。
「女がそれもお嬢さんが出て来たもんだから、俺の方も馬車から出て、あっちの女に馬車に戻るように言ったんだ。
一応こっちも侯爵様なんだよ」
「ここまで言ったんだ、名前だせよ」と誰かが言うと皆が声を揃えて
「言えよ。仲間だろ」とか言い出して
「ホワイト家だ」と答えた。
「優しいお人でな、女がじゃなく令嬢が外で話をするのは良くないから馬車に戻るように言ったんだ。するとあの女は『誤魔化すな』とか言い出してそうこうしてるうちに見物が増えるし、後ろに馬車も来るし。それでうちのご主人が後日詫びに行くと言ってことを治めたんだ」
「・・・・・」
しばし、無言のときが過ぎてバージルが
「いい主人に恵まれたな」と赤毛の肩を叩くとまわりも
「そうだな」「頑張ったんだな」と言い出して誰かが
「俺のおごりだ」とテーブルの酒を配り皆で乾杯した。
バージルは赤毛と話し込み、モルファイ家の馭者は茶色の制服に青い腕章をつけていると聞き出して仲間にも伝えた。
テーブルに用意された酒と串焼きを取ると輪に加わった。
「随分じゃないか」と。バージルはこの待遇がいいのか悪いのかわからなかったので、どちらでも解釈できる言い方を選んだのだ。
「あぁ随分だ。さすがだな」と赤毛が答え
「確かに、酒も料理もさすがだ。その肉も行けるがこちらの煮込みも美味い」と茶色の髪の男が追加した。
「そうか、貰ってこよう」とバージルは言うと取りに行った。その肉を頬張ったまま
「美味い」と言った。
「今日の会場は半分無礼講だそうだ」と薄茶の男が言うと
「あのお嬢さんはお高いのにそうなのか?」と最初の赤毛が肉を食いちぎりながら言った。
「お?あんたもあれに?」と薄茶の男が言うと
「あぁ、馬車ですれ違うときにうちの主人にいちゃもんを」と赤毛が言った。
「それは気をつけたほうがいいな」とバージルが言うと
「気をつけようがないんだよ」と赤毛が言った。
まわりもこちらに注目して集まって来た。
「兄さんこれでも食って教えてくれ」と言いながらバージルはテーブルから串焼きと酒を持って来て赤毛の前に置いた。
「おぉ、気前のいい兄さんだ」とまわりの男も赤毛の男も笑ってバージルの背中を叩いた。
笑いが収まると赤毛は話し始めた。
「王都の道で俺たちはすれ違ったんだ。いや、すれ違おうとしたんだ。そしたら石が当たったと向こうの護衛が飛んできて抗議されたんだ。たしかに馬車が石を跳ねることはある。それが馬車に当たることもあるだろう。それのどこが問題なんだ?と思ったんだが、すぐに向こうの馬車から、あのお嬢様が出て来てなぁ」
「本人が出てきたのか?」とびっくりして質問が出ると
「そうなんだ。いきなり女が出て来てなぁ。侍女は止めてたようだが、本人が出て来た」と赤毛が口惜しそうに言うのを見て、男たちは顔を見合わせた。
「女がそれもお嬢さんが出て来たもんだから、俺の方も馬車から出て、あっちの女に馬車に戻るように言ったんだ。
一応こっちも侯爵様なんだよ」
「ここまで言ったんだ、名前だせよ」と誰かが言うと皆が声を揃えて
「言えよ。仲間だろ」とか言い出して
「ホワイト家だ」と答えた。
「優しいお人でな、女がじゃなく令嬢が外で話をするのは良くないから馬車に戻るように言ったんだ。するとあの女は『誤魔化すな』とか言い出してそうこうしてるうちに見物が増えるし、後ろに馬車も来るし。それでうちのご主人が後日詫びに行くと言ってことを治めたんだ」
「・・・・・」
しばし、無言のときが過ぎてバージルが
「いい主人に恵まれたな」と赤毛の肩を叩くとまわりも
「そうだな」「頑張ったんだな」と言い出して誰かが
「俺のおごりだ」とテーブルの酒を配り皆で乾杯した。
バージルは赤毛と話し込み、モルファイ家の馭者は茶色の制服に青い腕章をつけていると聞き出して仲間にも伝えた。
342
読んでいただいてありがとうございます。「気がついたら無理!絶対にいや!」と言う作品も投稿しております。良かったらこちらも読んでみて下さい。
お気に入りに追加
1,133
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

嫌われ令嬢は戦地に赴く
りまり
恋愛
家族から疎まれて育ったレイラは家令やメイドにより淑女としてのマナーや一人立ちできるように剣術をならった。
あえて平民として騎士学校に通うようレイラはこの国の王子さまと仲良くなったのだが彼は姉の婚約者だったのだ。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

王太子妃よりも王弟殿下の秘書の方が性に合いますので
ネコ
恋愛
公爵令嬢シルヴィアは、王太子から強引に婚約を求められ受け入れるも、政務も公務も押し付けられ、さらに彼が侍女との不倫を隠そうともしないことにうんざり。まさに形だけの婚約だった。ある日、王弟殿下の補佐を手伝うよう命じられたシルヴィアは、彼の誠実な人柄に触れて新たな生き方を見出す。ついに堪忍袋の緒が切れたシルヴィアは王太子に婚約破棄を宣言。二度と振り返ることなく、自らの才能を存分に活かす道を選ぶのだった。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます
ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。
古堂すいう
恋愛
フルリス王国の公爵令嬢ロメリアは、幼馴染であり婚約者でもある騎士ガブリエルのことを深く愛していた。けれど、生来の我儘な性分もあって、真面目な彼とは喧嘩して、嫌われてしまうばかり。
「……今日から、王女殿下の騎士となる。しばらくは顔をあわせることもない」
彼から、そう告げられた途端、ロメリアは自らの前世を思い出す。
(なんてことなの……この世界は、前世で読んでいたお姫様と騎士の恋物語)
そして自分は、そんな2人の恋路を邪魔する悪役令嬢、ロメリア。
(……彼を愛しては駄目だったのに……もう、どうしようもないじゃないの)
悲嘆にくれ、屋敷に閉じこもるようになってしまったロメリア。そんなロメリアの元に、いつもは冷ややかな視線を向けるガブリエルが珍しく訪ねてきて──……!?

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる