王妃はわたくしですよ

朝山みどり

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01 孤独な令嬢

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朝日が、カーテンのない部屋に入って来た。

ジュディ・ガーデナーは目を覚ました。

先ず、右足首の具合を確認する。昨日、義妹に突き飛ばされて、挫いたのだ。なんとか、大丈夫だ。昨日寝る前にずっと治れと念じてさすった甲斐がある。

ジュディは、ごそごそ起きだした。身支度を整えて食堂に向かった。広い食堂の隅に彼女専用のテーブルがある。

彼女用の朝食の盆が置いてある。固いパンと、昨夜の残り物だ。先ず、パンを一つハンカチに包んだ。それから朝食を済ませると、徒歩で学院に向かった。


まだ、誰も来ていない教室で、教科書を広げて勉強していると、だんだん、人が増えてきた。

みんなは、おはようと朝の挨拶を交わすが、ジュディには誰も声をかけない。ジュディもなにも言わない。


やがて、授業が始まる。この場で全部覚えるよう、耳を傾ける。家で勉強する暇などないのだ。


お昼休みは、外に出るのも時間がもったいないので、勉強しながら固いパンをかじる。


授業が終わると、すっと教室を出て家に向かう。まだ、誰とも話をしていない。


家に戻ると着替えて、執務室に行く。机に積んである書類を処理していく。

自領の仕事の他に、請け負っている他領の仕事もあるため、なかなか終わらない。


外が暗くなった頃、侍女がノックと同時に部屋に入って来ると、夕食の盆をテーブルに置くと出て行った。

乱暴に置くから、スープが盆に溢れていた。

仕事を終えて、盆を厨房に返した時、居間の賑やかな声が聞こえた。


「お父様、わたしは着せ替え人形じゃありませんのよ」

「いいじゃないの。お父様はあなたを着飾らせるのが、楽しみなのよ」

と義妹のエミリアと義母の声だ。

「おまえたちは二人でわたしをバカにしてないかい?」と父親のガーデナー伯爵の声がした。

『お気楽な事ね』とジュディは思った。



ジュディはこのガーデナー家の、先妻の娘だ。ジュディが八歳の時、急な病で母が死んだ。
その翌週、義母と義妹がやって来た。義妹は、三ヶ月遅く生まれたそうだ。


ジュディが十歳になって三ヶ月後。エミリアが十歳になった時、彼女の誕生日祝いが盛大に行われた。

その席でエミリアは後継になると発表された。


その席には、亡き母の実家の伯父も出席していたが、なにも言わずに祝福していた。



学院だけは貴族の義務で、通わせて貰っているが、食堂の費用を払って貰ってないので、家からパンを持参している。


成績を維持していれば、王宮で働ける。その事だけを支えにジュディは、生きていた。





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