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54 王城の騒ぎ

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スミノード家と大公家と使用人たちは王城へやって来た。門で名乗ると心得顔の侍従がやって来た。

「少し距離がありますので、馬車で行きましょう。荷物もありますね。同じ馬車で構いません。閑静な離宮ですよ」

と言うと気軽に馭者台に乗った。


しばらく走ると瀟洒な建物が見えて来た。そこの中庭に馬車を止めさせると、皆が馬車から降りるのを待った。

「こちらに慣れるまで、使用人をつけます。彼らは好意でここに来てます。念のため・・・」

「迎えに出て来ないのか?」と侯爵が少し怒って言うと

「あぁ、掃除で忙しいので出迎えは必要ないとわたしが指示しました」とすまして答えると

「中へどうぞ」と玄関を開けた。


翌日、王宮からの使用人は迎えの馬車で帰って行った。

「まだ、きちんと片付いてないじゃない」と大公夫人が言うと

「わたくし共は、掃除をするように言いつけられて手伝いに来ました。それだけです」

「それなら終わらせて帰りなさい」

「いえ、言いつけられた事をきちんとやりました」とさっさと馬車に乗ってしまった。

「王太子殿下に報告するわよ」

「わたくし共はブルーリード公爵家の者です。公爵閣下の好意でここの建物を貸して下さってます。ここは王宮内にある公爵家の別邸です」と言うと最後に馬車に乗り込んだ。

使用人たちも頑張ったが、食材もそろわず、なにより魔石がなくて水汲みに疲れ果て、薪を使った調理は生煮えか黒焦げの料理となってしまい、主従ともに疲れ果てた。

そこにマーク殿下がやって来た。

「おぉ殿下よくいらした。ここはひどい所です。殿下のお迎えを待っておりました」と大公が迎えると

「違うよ、屋敷を借金のかたに取られたんだよ」とやつれた顔で答えた。

マークの夫人は伯爵家の三女であったが、大公家の養女となり、王子であるマークと結婚した。二人は番だと言う事だが・・・

マークは大公家の娘婿であり王子であり、番を得た幸運な男と言う事で様々な投資に誘われた。

たくさんわけて貰った財産はあっというまに底をついたが、魔石事業に名前が載っている事から、いまだに資金を回して貰えてなんとかやって来た。兄の王太子に泣きついて融通して貰った最後のお金。

これは生活費として持っておくようにときつく言われたお金だったが、知り合いに聞いた鉱山に投資してなくしてしまった。

それで、いつもの通り、アーネストに泣きついてここを紹介されたのだ。

二人は番として最初は夢がかなったと片時も離れず暮らしていたが、生来、社交的なマークは外出が好きで、

「外で活動するのは帰る幸せを味わう為だ」と外でも内でも調子よく幸せだったが、使えるお金が少なくなると輝きがなくなり、何故か愛が冷めた。

マークのもとにアーネストから魔石の差し入れがあり、少し暮らしやすくなったが・・・すぐになくなり、不満がつのった。

そこにクロエがやってきた。クロエの番は魔石のスミノードの養子になった事で持て囃され、身を持ち崩した。

クロエはマークと同じようにアーネストの援助を受けここに滞在する許可をもらっていた。


そして、王室に大きな問題が見つかった。王太子のフィルが、マークとクロエに援助するために、国のお金に手を出していたのだ。


アーネストがフィルに会いにやって来た。

フィルはアーネストへ向けていつもの笑顔を向けた。共犯者なれあいの笑顔を・・・

助けてくれるよな!!いつものように・・・



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