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光一
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あっ伝票・・・・いつもは払ってくれていたのに、まぁいい。そういえばたかが、コーヒー代で恩を着せられるのも業腹だ。
この時、ちょっとだけ後悔した。
ふっふっふあいつが先方の事情を下調べして、作ってくれたプレゼンで大きな商談がまとまった。後は契約書にサインを貰えば完了だ。
さて、契約書はえーーとあった、あった。ちゃんと作ってあるじゃないか。この仮契約書の仮を消してっと。
山本光一は塚本雅美が、自分の仕事の合間に作ってくれた契約書を持つと、時間より少しだけ早めに先方の会社受付で名乗った。
「山本様ですね、こちらでございます」と受付の女性はドアを開けると光一を中に入れた。
「すぐに担当が参ります」と言うと彼女は出て行った。
光一はファイルに入れた契約書をテーブルに出すと、深呼吸をした。
まもなく担当の根岸だけでなく、その上司も現れた。
「神山慎二です。大きな話しですので見守りたいと思いまして、置物と思って下さい。山本さんよろしくお願いします」
と控えめにしていた。だが、根岸を大事にしているのがよくわかって、光一はちょっと緊張した。
「そう言って、部長は・・・・部長はですね、山本さんのプレゼン資料を見てあまりにきちんとしているから驚いて今日は同席してるんですよ」
「はぁ・・・・ありがとうございます」と言うと
「こちらが契約書でございます」とファイルから書類を出すと根岸のまえに置いた。
「拝見しまs・・・す」不自然に途切れた声に光一は根岸を見た。神山は根岸の様子に気づくと契約書類を自分の方に引き寄せた。
「これは・・・・ふざけてるとは言わないが、どうしてこんな書類を・・・・・」と神山が光一を見た。
光一は席を立つと神山も後ろに立ち、書類をのぞき込んだ。
「は?」と間抜けな声が出た。
相手の会社名が「凸凹会社」自社の名前が「もっといっち大会社」となっていて、数字はゼロがずらりと並んでいた。
パソコン画面上ではちゃんとなっていた。仮契約書の仮を消したのは確かだし、内容も確認した。
印刷したものは・・・・・美咲が確認したはずだ・・・・
「今日が契約ですね。書類作るの大変だったんですよ」の言葉と共に手渡された。
「ありがとう、いつも助かるよ」と返した。いつものやりとりだ。
「作り直して参ります。今日は失礼させて頂きます」と言うとドアの所で頭を下げて部屋を出た。
光一は急いで事務所に戻ると、美咲の席に行った。
「あ、光一、いやっ」と態とらしくあたりを見ると、
「山本さんお帰りなさい。そしておめでとうございます」と言った。まわりもすこしだけ拍手をしてお祝いしてくれる。
こんな時大騒ぎしない節度ある所なのだ。
「まわりに控えめに会釈した光一は、契約書なんだけど中身を確認した?」と聞くと
「はい、ちゃんとページの順に並べましたし、ホッチキスも丁寧に」と自信満々で答えて来た。
「そうかい、これを見て?」と書類をみせると
「なんですか?凸凹はっはっは・・・・もっといちってやまもとこういちから来てるんですか?これ見せたんですか?ハッハッハ受けるーーー」と騒いで注目を浴びた。
「黙れ」そう言うと光一は先ほどの仮契約書を開いた。
そして、どうにか契約書を作った。慎重に印刷して、誤字脱字、数字を確認した。
それを印刷しおわった時は退社時間をとっくに過ぎていた。
翌日、それを持って駆けつけた。なんとか契約はできたが、納品数を間違えていると教えて貰い、
「お宅を潰すつもりはないから教えたけど、もっと勉強した方がいいね」
光一は黙って頭を下げた。なにも言えなかった。
しばらくして、光一は地方の子会社に出向を命じられた。
「あそこ立て直しで、帰って来たら出世確実だよ」と送り出されたが、帰れないことをみんなが知っていた。
美咲はついてこなかった。
この時、ちょっとだけ後悔した。
ふっふっふあいつが先方の事情を下調べして、作ってくれたプレゼンで大きな商談がまとまった。後は契約書にサインを貰えば完了だ。
さて、契約書はえーーとあった、あった。ちゃんと作ってあるじゃないか。この仮契約書の仮を消してっと。
山本光一は塚本雅美が、自分の仕事の合間に作ってくれた契約書を持つと、時間より少しだけ早めに先方の会社受付で名乗った。
「山本様ですね、こちらでございます」と受付の女性はドアを開けると光一を中に入れた。
「すぐに担当が参ります」と言うと彼女は出て行った。
光一はファイルに入れた契約書をテーブルに出すと、深呼吸をした。
まもなく担当の根岸だけでなく、その上司も現れた。
「神山慎二です。大きな話しですので見守りたいと思いまして、置物と思って下さい。山本さんよろしくお願いします」
と控えめにしていた。だが、根岸を大事にしているのがよくわかって、光一はちょっと緊張した。
「そう言って、部長は・・・・部長はですね、山本さんのプレゼン資料を見てあまりにきちんとしているから驚いて今日は同席してるんですよ」
「はぁ・・・・ありがとうございます」と言うと
「こちらが契約書でございます」とファイルから書類を出すと根岸のまえに置いた。
「拝見しまs・・・す」不自然に途切れた声に光一は根岸を見た。神山は根岸の様子に気づくと契約書類を自分の方に引き寄せた。
「これは・・・・ふざけてるとは言わないが、どうしてこんな書類を・・・・・」と神山が光一を見た。
光一は席を立つと神山も後ろに立ち、書類をのぞき込んだ。
「は?」と間抜けな声が出た。
相手の会社名が「凸凹会社」自社の名前が「もっといっち大会社」となっていて、数字はゼロがずらりと並んでいた。
パソコン画面上ではちゃんとなっていた。仮契約書の仮を消したのは確かだし、内容も確認した。
印刷したものは・・・・・美咲が確認したはずだ・・・・
「今日が契約ですね。書類作るの大変だったんですよ」の言葉と共に手渡された。
「ありがとう、いつも助かるよ」と返した。いつものやりとりだ。
「作り直して参ります。今日は失礼させて頂きます」と言うとドアの所で頭を下げて部屋を出た。
光一は急いで事務所に戻ると、美咲の席に行った。
「あ、光一、いやっ」と態とらしくあたりを見ると、
「山本さんお帰りなさい。そしておめでとうございます」と言った。まわりもすこしだけ拍手をしてお祝いしてくれる。
こんな時大騒ぎしない節度ある所なのだ。
「まわりに控えめに会釈した光一は、契約書なんだけど中身を確認した?」と聞くと
「はい、ちゃんとページの順に並べましたし、ホッチキスも丁寧に」と自信満々で答えて来た。
「そうかい、これを見て?」と書類をみせると
「なんですか?凸凹はっはっは・・・・もっといちってやまもとこういちから来てるんですか?これ見せたんですか?ハッハッハ受けるーーー」と騒いで注目を浴びた。
「黙れ」そう言うと光一は先ほどの仮契約書を開いた。
そして、どうにか契約書を作った。慎重に印刷して、誤字脱字、数字を確認した。
それを印刷しおわった時は退社時間をとっくに過ぎていた。
翌日、それを持って駆けつけた。なんとか契約はできたが、納品数を間違えていると教えて貰い、
「お宅を潰すつもりはないから教えたけど、もっと勉強した方がいいね」
光一は黙って頭を下げた。なにも言えなかった。
しばらくして、光一は地方の子会社に出向を命じられた。
「あそこ立て直しで、帰って来たら出世確実だよ」と送り出されたが、帰れないことをみんなが知っていた。
美咲はついてこなかった。
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