上 下
18 / 69

16 ガイツ

しおりを挟む
気が付くと、口にポーションの瓶を突っ込まれて男の腕に抱かれていた。

痛みが消えていた。なにが起こったんだ?・・・・・男だと??

するとなにやら、包みを渡されて食べろと言われた。久しぶりだ。肉と野菜を薄いもので巻いたものだ。

美味しい・・・・もっと食べたい・・・

「ずっと食べてないなら、今はそれだけね。あと臭いから体を洗って」と少年が偉そうに言った。

この俺に偉そうに・・・・・そっか、俺は奴隷だった・・・・・男の首にある首輪を見て思い出した。俺の首にもそれがある・・・


男が

「サミー様、わたしが面倒を見ますので、もう一つ水を出して下さい。そしてサミー様はチャーリーと一緒にあちらでお弁当を食べていて下さい」と言った。


なるほど主人はサミーと言うのか・・・・なんだこの水は浮いている・・・・・ぼけっと見てたら

「体を洗え、石鹸はないけど、家に戻ったらもう一度洗えばいいから、着ている服ごと洗え」

おれはその言葉に従って体を洗った。

「サミー様はああ見えて凄い。ポーション飲んでわかっただろ。まぁ奴隷として普通にしていればいい。ただ、サミー様が変な事をしそうになったら教えて止めてやればいい」

「わかった。確かに・・・・」

「では、挨拶に行こう」と言った後で

「後、はっきりしないが、サミー様は女性だ」と付け加えた。

「あっあーー」としか反応できなかった。


わたしに与えられた名前はガイツ。仲間の名前はレオン。


少年、もといサミー様の家に行った。町外れの小さな家だ。まず風呂に入れられた。

風呂から上がって食事がすむと俺の魔法陣を見せろと言われた。え?腹を見るのか?そりゃ、奴隷だけど・・・

服をめくって見せると、つつきながら、

「これって強力な石鹸だと消えないかな?」と言い出した。


「強力な石鹸?」思わず鼻で笑ってしまった。

俺がこの魔法陣を除去する為になにをやってきたかわかっているのか?

ナイフで皮を剥いたり、それより深く肉まで削いだり、火で焼いたこともある。どんな苦しみも魔法を取り戻して復讐する日を夢見て耐えた。だが、魔法陣はその度に、血に塗れた肉の中から見事に浮かび上がって来たのだ。

おまけに上級ポーションでも傷は治らず、じくじくと腐ってきた。俺は諦めた。


死ぬのを望む日々だった。それを石鹸だと!!



「まぁ、せっかくの魔法士が勿体無いと思ってね、安く買ったけど」と普通に言葉が返って来た。


「それと魔法士って魔法について勉強したんでしょ。教えてよ」

なんとも言えなかった。確かにサミー様は魔力はたっぷりあるようだ。水の塊を維持できるって並じゃない。

でもあれだけ出来るならそれ以上・・・・とレオンを見たら薄笑いを浮かべている。


「サミー様、サミー様は最初にいろいろ知らない事が多いから、教えて欲しいと・・・おっしゃいました。確かにサミー様はおかしいというか、ちょっと外れてます。そのもう少しサミー様の事を教えていただけたらもっと守りやすくなります。奴隷も増えました。ガイツも戦力になります。うちあけていただけますか」

とレオンが言うと、サミー様はちょっとびっくりして

「あーー」とか言ってる。

「やっぱり、変?」

「かなり」とレオンが答えると

「詳しい事はゆっくりある時に話す。それから、ガイツを買ったのは、えーーとガイツは安いのと魔法を知ってそうだったのと、もしかしてお掃除とか得意かなと思って、それと料理できる?」


俺は自分の口がポカンとなるのを感じた。多分、絵に描いたような間抜け面をしている。自分で自分の顔を制御できなかった。

息を吸い込んで俺は答えた。

「俺の数ある才能の中で、料理は最たるものだ。任せろ」

「やったーーお買い得だった」とサミー様が手を叩いている。レオンはすまし顔を保とうとしながらも喜んでいる。

明日から俺が食わしてやる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

運命は、手に入れられなかったけれど

夕立悠理
恋愛
竜王の運命。……それは、アドルリア王国の王である竜王の唯一の妃を指す。 けれど、ラファリアは、運命に選ばれなかった。選ばれたのはラファリアの友人のマーガレットだった。 愛し合う竜王レガレスとマーガレットをこれ以上見ていられなくなったラファリアは、城を出ることにする。 すると、なぜか、王国に繁栄をもたらす聖花の一部が枯れてしまい、竜王レガレスにも不調が出始めーー。 一方、城をでて開放感でいっぱいのラファリアは、初めて酒場でお酒を飲み、そこで謎の青年と出会う。 運命を間違えてしまった竜王レガレスと、腕のいい花奏師のラファリアと、謎の青年(魔王)との、運命をめぐる恋の話。 ※カクヨム様でも連載しています。 そちらが一番早いです。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

黒鳥は踊る~あなたの番は私ですけど?~

callas
恋愛
 「君は私の運命の番だ」そう差し伸べた彼の目の前には妹のディアナ。  ちょっと待って!貴方の番は私なんだけど! ※お気に入り登録ありがとうございます

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」  デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。  彼は新興国である新獣人国の国王だ。  新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。  過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。  しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。  先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。  新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun
恋愛
新婚旅行の途中で事故に遭い、私と夫は大怪我で入院する。 1ヶ月意識を失くし、目覚めた私に医師が告げたのは、頭を強く打った夫は私と出会う前までの記憶しかないということ。 先祖返りの元第二王子の夫シリルと夫の従者のケネスの関係を知った16歳。私がようやく結婚出来た19歳でのシリルの記憶喪失。 もう私にはもう一度やり直す気力はなかった… *完結まで描き終えております。 体調を崩し、その他連載中のものも少しずつ完結させていこうと思っていますが、自分の身体と相談しながらのんびりいこうと思っておりますので、よろしくお願いします。 *19時に投稿予定にしております。

処理中です...