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第24話 バザー
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いい天気すぎる。曇ってる方が快適なのにとわたしは、オレンジをかじりながら思った。
「バザーの準備には早めに顔を出した方がいいね」と言いおいてトニーは出て行った。
侍女長に言わされてるなと思った。それならゆっくりししてやるわと思った。だからお茶のお代わりをしてから席を立った。
ミントは準備で先に行っている。わたしはラベンダーとジェフリーと一緒に会場に向かっている。
縫いぐるみのウサギさんとクマさん。舞台用の布と縫いぐるみのおうち。
それとお店で買ったハンカチ。
ジェフリーは制服を着ている。
会場に着くと、ミントがすぐにやって来て
「こちらが王妃様の場所です。売り物はこのハンカチです」と少し涙ぐんで言った。
「あら、これがあなたたちが刺繍したハンカチなの」と聞いた。はっきり言って刺繍がへたくそだ。
「これは?」とラベンダーがハンカチを見ながらミントに言った。
「えぇこれと交換させられた」とミントが言った。え?どういうこと?
「これはわたしたちが刺繍したものではありません。アイリスが刺繍したものです。わたしたち刺繍は得意なんです」とラベンダーは悔し涙をにじませた。
「そう、それならまた交換して取り戻してもいいけど、侍女長はこのへたくそな刺繍をわたしが作ったことにしたいってことね」とわたしが言うと二人は口惜しそうにうなずいた。
「そしたら、二人が作ったものを見に行きましょう」と二人と一緒にハンカチを見に行った。
「どれ?」と聞くと
「たくさん刺繍しましたけど、これはわたしが刺繍したものです」とミントが一枚取り上げた。
「これですね」とラベンダーが一枚取って見せてくれた。
「なるほど、綺麗ね。確かにあそこにあるのとは全然違うわね。今度わたしにも作ってね。侍女長はあのへたくそなのを聖女の作品としたいと望んだってことね」と言っていると
「聖女様。なにもしないなんて甘えは許されませんよ。あなたは聖女です。もっとご自分を律して下さい」と侍女長がいきなり言って来た。
「わたしがなにもしないって・・・いい加減なことでわたくしを貶めるなんて許しませんよ」とわたしが言うと
「なにもしていないくせに、言い訳はあとで聞きます。さぁ時間です」と侍女長は言うとわたしに背を向けて
「みなさん、始まりますよ」と手を叩いた。
わたしは
「このへたくそな刺繍はかたづけて、これを売るから」と普通のハンカチを出した。
そしてウサギさんを出すとウサギさんの両手をまっすぐ前に出してハンカチを乗せた。それからそのウサギさんを歩かせた。伴奏はピチカートで。
「ウサギさんのハンカチだ」とお金持ちの平民らしき女の子が近寄って来た。
「いかがですか?保冷の魔法を込めてあります。この夏は涼しく過ごせますよ。さわって見ていいですよ。ひんやりします」とわたしからハンカチを渡した。
「ひんやりってどうしてですか?って聖女様」とひざまずきそうになるのを止めて
「今日は、バザーの売り子ですよ。お客様」と笑い
「保冷の魔法を込めてあります。夏、涼しく過ごせるように工夫しました」と言うと
「買います。娘の分とわたしの分と家内の分三枚」と早口で言うのでひと呼吸置いて
「ありがとうございます」と答えて
「ウサギがお渡しします」とウサギの腕に三枚乗せて、一歩一歩と歩かせた。
お金はミントが受け取っていた。
「ウサギさんありがとう」と女の子は言うと、お父さんと手をつないで奥へ歩いて行った。
わたしたちの話を聞いていた人が並んでいた。
「二枚下さい、聖女様。あの一枚は聖女様から、一枚はウサギさんから」
「ありがとうございます」
次の人も二枚、ウサギさんから受け取りたがった。
そんな感じで、長い列が出来て、お客様は奥へ行かなかった。
わたしがそろそろウサギさんを動かすのにもあきて来た頃、ハンカチが売り切れた。
そこで、わたしは変装した上に認識阻害と厳重に身を守って奥へ入って行った。
そこで平民の話を聞いていると、お城のなかに入りたかったとわかった。結婚式の時にバルコニーの下まで来たのが初めて。そりゃそうだよね。戦争してたし・・・王族は国王と前の国王の兄弟とかその子供とかいるけど・・・
会食のときに会ったけど・・・あれ?これって交流してないのって普通?
あちらでは引きこもりしてたから、でもそれは日本で、一応外国では交流してたし・・・
母国語じゃない方が会話の訓練が活かせて喋りやすかったし・・・
「それにしてもこれは本当に冷たいですね」とハンカチで汗を拭いている男性が隣に話しかけている。
「本当に、さすが聖女様」の声も聞こえた。ふふふ、聖女手作りハンカチは成功だ。
ところが他の売り場にはまだ商品が売れ残っている。貴族は買いに来なかったのだろうか?
これは失敗だよね・・・もしかして王妃の責任になったりして・・・
それはそれでいいかな。
巻き返せるし!!
そう、思ってわたしは隠蔽を解くと、ジェフリーを連れて会場を出た。
「バザーの準備には早めに顔を出した方がいいね」と言いおいてトニーは出て行った。
侍女長に言わされてるなと思った。それならゆっくりししてやるわと思った。だからお茶のお代わりをしてから席を立った。
ミントは準備で先に行っている。わたしはラベンダーとジェフリーと一緒に会場に向かっている。
縫いぐるみのウサギさんとクマさん。舞台用の布と縫いぐるみのおうち。
それとお店で買ったハンカチ。
ジェフリーは制服を着ている。
会場に着くと、ミントがすぐにやって来て
「こちらが王妃様の場所です。売り物はこのハンカチです」と少し涙ぐんで言った。
「あら、これがあなたたちが刺繍したハンカチなの」と聞いた。はっきり言って刺繍がへたくそだ。
「これは?」とラベンダーがハンカチを見ながらミントに言った。
「えぇこれと交換させられた」とミントが言った。え?どういうこと?
「これはわたしたちが刺繍したものではありません。アイリスが刺繍したものです。わたしたち刺繍は得意なんです」とラベンダーは悔し涙をにじませた。
「そう、それならまた交換して取り戻してもいいけど、侍女長はこのへたくそな刺繍をわたしが作ったことにしたいってことね」とわたしが言うと二人は口惜しそうにうなずいた。
「そしたら、二人が作ったものを見に行きましょう」と二人と一緒にハンカチを見に行った。
「どれ?」と聞くと
「たくさん刺繍しましたけど、これはわたしが刺繍したものです」とミントが一枚取り上げた。
「これですね」とラベンダーが一枚取って見せてくれた。
「なるほど、綺麗ね。確かにあそこにあるのとは全然違うわね。今度わたしにも作ってね。侍女長はあのへたくそなのを聖女の作品としたいと望んだってことね」と言っていると
「聖女様。なにもしないなんて甘えは許されませんよ。あなたは聖女です。もっとご自分を律して下さい」と侍女長がいきなり言って来た。
「わたしがなにもしないって・・・いい加減なことでわたくしを貶めるなんて許しませんよ」とわたしが言うと
「なにもしていないくせに、言い訳はあとで聞きます。さぁ時間です」と侍女長は言うとわたしに背を向けて
「みなさん、始まりますよ」と手を叩いた。
わたしは
「このへたくそな刺繍はかたづけて、これを売るから」と普通のハンカチを出した。
そしてウサギさんを出すとウサギさんの両手をまっすぐ前に出してハンカチを乗せた。それからそのウサギさんを歩かせた。伴奏はピチカートで。
「ウサギさんのハンカチだ」とお金持ちの平民らしき女の子が近寄って来た。
「いかがですか?保冷の魔法を込めてあります。この夏は涼しく過ごせますよ。さわって見ていいですよ。ひんやりします」とわたしからハンカチを渡した。
「ひんやりってどうしてですか?って聖女様」とひざまずきそうになるのを止めて
「今日は、バザーの売り子ですよ。お客様」と笑い
「保冷の魔法を込めてあります。夏、涼しく過ごせるように工夫しました」と言うと
「買います。娘の分とわたしの分と家内の分三枚」と早口で言うのでひと呼吸置いて
「ありがとうございます」と答えて
「ウサギがお渡しします」とウサギの腕に三枚乗せて、一歩一歩と歩かせた。
お金はミントが受け取っていた。
「ウサギさんありがとう」と女の子は言うと、お父さんと手をつないで奥へ歩いて行った。
わたしたちの話を聞いていた人が並んでいた。
「二枚下さい、聖女様。あの一枚は聖女様から、一枚はウサギさんから」
「ありがとうございます」
次の人も二枚、ウサギさんから受け取りたがった。
そんな感じで、長い列が出来て、お客様は奥へ行かなかった。
わたしがそろそろウサギさんを動かすのにもあきて来た頃、ハンカチが売り切れた。
そこで、わたしは変装した上に認識阻害と厳重に身を守って奥へ入って行った。
そこで平民の話を聞いていると、お城のなかに入りたかったとわかった。結婚式の時にバルコニーの下まで来たのが初めて。そりゃそうだよね。戦争してたし・・・王族は国王と前の国王の兄弟とかその子供とかいるけど・・・
会食のときに会ったけど・・・あれ?これって交流してないのって普通?
あちらでは引きこもりしてたから、でもそれは日本で、一応外国では交流してたし・・・
母国語じゃない方が会話の訓練が活かせて喋りやすかったし・・・
「それにしてもこれは本当に冷たいですね」とハンカチで汗を拭いている男性が隣に話しかけている。
「本当に、さすが聖女様」の声も聞こえた。ふふふ、聖女手作りハンカチは成功だ。
ところが他の売り場にはまだ商品が売れ残っている。貴族は買いに来なかったのだろうか?
これは失敗だよね・・・もしかして王妃の責任になったりして・・・
それはそれでいいかな。
巻き返せるし!!
そう、思ってわたしは隠蔽を解くと、ジェフリーを連れて会場を出た。
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