勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
23 / 30

第23話 保管庫で見つけたもの

しおりを挟む
バザーの準備で文官までもが、落ち着かない城内をわたしは認識阻害のブローチをつけて隠蔽魔法を使って歩いている。隠蔽が解けてもわたしの姿は赤い髪が目立つも平凡な顔の女だ。
わたしは、書類保管庫で、福祉関係の帳簿を見つけると物陰でざっと見た。

ひどいものだ。予算はあげられているがきちんと使われていない。だが、お金はどこかに消えている。

戦争の混乱ってことでもなさそうだし、犯罪ね。それから王妃関連の帳簿を見たけどわたしは宝石もドレスも買ってない。そういえば縫いぐるみとか今日のお茶代はどう計上されているのか?どこからお金が出ているのか?


その時、わたしの頭にトニーの顔が浮かんだ。愛してると言ったときの顔。大好きな表情だ。
なにもしなければこの表情をずっと見ていられる。わたしは帳簿を戻すとそっと部屋を出た。

わたしのバザーの準備は誰にも言わずにすすめた。
ハンカチをたくさん買って、すべてに保冷の魔法をかけた。これから熱くなるらしいから。

ブローチに髪の色を変える魔法を込めようと思ったが、それは目立つからやめよう。
自分で使う時にまずい。



それから、ジェフリーを呼んで、人形の舞台の上におく。小さな家を作るように言った。家の絵を描いた板でいい。

人形がそこから出入りする場所にするからと、わたしは本を立ててテーブルに置いて縫いぐるみを出入りさせながら説明した。

「なるほど、わかりました。そうですね。バタンと倒れて終わりは変ですね。友人に当たってみます」とジェフリーは出て行った。

これで、準備は出来たかな。値札とかは会場でなんとかさせよう。そのための侍女長だ。

さて、縫いぐるみとジェフリーたちの衣装の準備は完了。

寝る前にトニーとワインを飲みながら話をした。
「侍女長がこぼしていたよ。『聖女様はハンカチの刺繍も真面目にしてくれなかった』って、でも聖女がした刺繍で欲しい人がいると思うから、売ればいいって言っといた」
「だってトニーああいうのは職人がしてくれるでしょ」と言うと
「マリカが作ったものって喜ぶ人がいるから、次は頑張って。マリカが王妃として聖女としてがんばってるのを見せなきゃ」と言うトニーに抱きついて
「わかった。聖女の力を思い切り見せる。遠慮しない」と見上げて言うと、トニーの唇が落ちてきた。

唇を離さないまま、トニーはわたしの服を脱がした。

しおりを挟む
★☆彡☆彡★☆彡☆彡★☆彡☆彡★☆彡☆彡★☆彡☆彡★☆彡☆彡★☆彡☆彡★


歴史・時代小説大賞に応募しています。読んでみて下さい


お江戸を指南所


【 みどりの短編集 】 今までの投稿をまとめます


感想 5

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから

神崎 ルナ
恋愛
 アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。    だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。  その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。  

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...