勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!

朝山みどり

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第23話 保管庫で見つけたもの

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バザーの準備で文官までもが、落ち着かない城内をわたしは認識阻害のブローチをつけて隠蔽魔法を使って歩いている。隠蔽が解けてもわたしの姿は赤い髪が目立つも平凡な顔の女だ。
わたしは、書類保管庫で、福祉関係の帳簿を見つけると物陰でざっと見た。

ひどいものだ。予算はあげられているがきちんと使われていない。だが、お金はどこかに消えている。

戦争の混乱ってことでもなさそうだし、犯罪ね。それから王妃関連の帳簿を見たけどわたしは宝石もドレスも買ってない。そういえば縫いぐるみとか今日のお茶代はどう計上されているのか?どこからお金が出ているのか?


その時、わたしの頭にトニーの顔が浮かんだ。愛してると言ったときの顔。大好きな表情だ。
なにもしなければこの表情をずっと見ていられる。わたしは帳簿を戻すとそっと部屋を出た。

わたしのバザーの準備は誰にも言わずにすすめた。
ハンカチをたくさん買って、すべてに保冷の魔法をかけた。これから熱くなるらしいから。

ブローチに髪の色を変える魔法を込めようと思ったが、それは目立つからやめよう。
自分で使う時にまずい。



それから、ジェフリーを呼んで、人形の舞台の上におく。小さな家を作るように言った。家の絵を描いた板でいい。

人形がそこから出入りする場所にするからと、わたしは本を立ててテーブルに置いて縫いぐるみを出入りさせながら説明した。

「なるほど、わかりました。そうですね。バタンと倒れて終わりは変ですね。友人に当たってみます」とジェフリーは出て行った。

これで、準備は出来たかな。値札とかは会場でなんとかさせよう。そのための侍女長だ。

さて、縫いぐるみとジェフリーたちの衣装の準備は完了。

寝る前にトニーとワインを飲みながら話をした。
「侍女長がこぼしていたよ。『聖女様はハンカチの刺繍も真面目にしてくれなかった』って、でも聖女がした刺繍で欲しい人がいると思うから、売ればいいって言っといた」
「だってトニーああいうのは職人がしてくれるでしょ」と言うと
「マリカが作ったものって喜ぶ人がいるから、次は頑張って。マリカが王妃として聖女としてがんばってるのを見せなきゃ」と言うトニーに抱きついて
「わかった。聖女の力を思い切り見せる。遠慮しない」と見上げて言うと、トニーの唇が落ちてきた。

唇を離さないまま、トニーはわたしの服を脱がした。

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