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第22話 バザーの企み

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バザーっててっきりどこかの孤児院でやると思ってた。孤児院でやるにしては売るものが貴族っぽいなって思っていたんだ。わたしが手出ししてたところは焼きそば売ったりしてたし、だからちょっと変だと思った。全然深く考えてなかったけど。

それがなんと、お城のバルコニーの下でやるとか・・・どうもラベンダーとミントの二人にも内緒だったようで、二人が慌てて帰って来て、憤りを隠せずに報告して来た。
「それが今、わかったからってなにか問題?」と聞くと
「聖女様」「王妃様」と二人は同時にわたしを呼んだ。あっ忘れないうちに呼び名を統一しておこう。前に言ったら
「出来ません」と怒られたからね。
「わたしのことはマリカ様って呼んで。二人には許します」と言うと
一瞬固まったが、すぐに
「「はい、マリカ様。光栄でございます」」とカーテシーが返って来た。

「それで、バザーをそこでするのよね。なにが問題ですか?」と聞くと
「先ず、マリカ様に知らせずに会場をそこにしたことです。悪意を感じます」とラベンダーが答える。
「別に会場がどこでもかまわないけど。それにあくまでも主催者はわたくし、王妃でしょ?」
「マリカ様はおおらかでらっしゃるから、そう考えられるのでしょうが。違います。今回のバザーは平民も貴族も来ます。そこでマリカ様がなにもしていないと恥をかかせるつもりです」とミントも鼻息荒く言うので
「なにもしてないといけないの?」と言うと
「「マリカ様!」」と二人が涙ぐんだ。ダメだこの二人は口下手だ。気持ちはわかるが、手駒としては不足だ。
下手に知恵を授けない方がいいだろう・・・

「あなたたち、準備に行ってるけどなにをしてるの?」
「ハンカチに刺繍。クラバットに刺繍とかです」とミントが答えるので
「じゃあ、何枚かわたしが刺繍したって言えばいいじゃない」と言った。
二人は黙って顔を見合わせている。いろんな思いが沸いては消えるよね・・・誰につくのがいいかとか・・・重要よね。安心して、わたしは貴族の世に慣れていないのよ。侍女長の敵になれないくらいよ・・・

「かしこまりました」とミントが言い出すと、途中からラベンダーも一緒に口を動かした。
「ありがとう。二人がいてくれて助かるわ」と言うと二人は顔を見合わせるとわたしに向かって頭を下げた。
「そう言って頂けると」
「それでね、今日は街に行きたいの。ジェフリーを呼んで。二人のうちのどちらかも来てね」と言うと、ミントが
「わたくしがお供します。すぐにジェフリーを呼んで来ます」と言い、ラベンダーが
「わたくしは侍女長のところへ行きます」と部屋を出て行った。

わたしは、縫いぐるみの店に行くと拙い絵を見せた。イギリスの宮殿のあの制服の絵だ。
店主はそれを見ると店員の一人を呼んだ。わたしは店員相手に絵の説明をした。
店員は少し笑いながら、綺麗な絵に仕上げてくれた。
わたしはそれを店主に示しながら、このデザインで縫いぐるみの服を作って欲しいと言った。
「おぉ、それはいいですね。二着ですね」と言う店主に笑いかけて

「それとこれと同じものを人間のサイズで作りたいのですが、いいお店をご存知ですか?」と言うと

「なんと」と店主は呟いたが、また一人店員を呼んで、絵をみせてなにやら話をしている。話が終わり店員が会釈して去ると

「承知いたしました。そちらもわたしどもが作ります。一着でよろしいでしょうか?」
「三着お願いします。彼のサイズで一着、それより小さいのを一着。大きめを一着。それと出来れば、追加を作りたい時のために布地の確保をお願いしたいのですが」

「承知いたしました。それではこちらさまの採寸を致します。しばらくお待ち下さい」と言うとジェフリーを連れて奥へはいって行った。


まもなく出てきたジェフリーは疲れた顔をしていた。
「出来上がりはいつになりますか?出来れば」とわたしはバザーの前日を指定した。
店主は
「問題ございません。その前日の朝には用意できております」とにこやかに返事をした。

広場の露天に装身具を売る店を見つけてブローチを十個程買った。これに魔法を込めてもいいかな!

それからジェフリーの疲れを癒そうとお菓子さんに行った。ちょっと店内に喫茶コーナーがあるのが見えたからだ。
「好きなものを食べて好きなのを飲んで」と言うと
「サンドイッチとチョコケーキ」とジェフリー
「フルーツパイ」とミント
「飲み物は?」と聞くと首をかしげたので
「本日のお茶をポットでカップは三つ。それとレモンパイ」と注文した。

お茶のポットをお代わりするくらいゆっくりして、そこを出た。
ジェフリーが服のことを話したそうだったけど、唇に手を当てた。

ラベンダーにおみやげを買うと城に戻った。
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