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第20話 侍女長の

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わたしはお祖母様のお祖母様と同じ、アナベラと名付けられた。

そしてお祖母様のお祖母様と同じようにお城で侍女として働いている。

「聖女様が泣いて手に負えない」といきなり言われて驚いた。聖女様がいらっしゃるのに驚いたが、それはあとにして。泣かすような無礼を働くとは、お慰めしなくてはと急ぎ参上した。

お部屋に行って驚いた。聖女様がこんなていたらく、情けない。わたしがこの聖女様をしつけなくてはと思った。

一晩食事抜きで部屋に閉じ込めた。翌朝、様子を見に行ったらおとなしくなっていたが、どこか高飛車で生意気だ。
そして、陛下も宰相もあんな聖女でも大事にするようだ。おかしい、間違っている。わたしが誤りを正してあげる。あんな女が聖女様であってはいけないのだ。

わたしは、正しい聖女様のお姿をよく知っている。

わたしのお祖母様のお祖母様は、聖女様にお仕えした。その方の残した日記は我が家の家宝だ。

それによると聖女様はこの世界に来たその瞬間から、気高く優しく、人々を励まして戦を勝利に導いている。
後に聖女様は王様と結婚されたが、残念ながらお子が出来なかった。そこで聖女様は快く、新しい妻を迎えるよう進言されたそうだ。
今の国王陛下はその方のお血筋だ。

つまり、聖女様はよく出来たお方なのだ。

それなのにあの女はめそめそ泣いて帰りたいとしか言わない。情けない。だから思い切り叱りつけてやった。するとようやっとあの聖女も魔法を使えるようになって傷の手当てが出来るようになった。

やっと戦場に行くかと思えば、一人では行かないと言い出した。陛下も陛下だ。一緒に行くとか・・・

おろおろする宰相にいれ知恵をした。もし万が一、陛下になにかあると大変だからお子を作って貰ったらと・・・

わたしの侍女から気立てがよくて美しい三人を推薦した。宰相もこの条件を飲むならば行ってもよいと陛下にせまり、陛下は承諾された。

わたしの侍女のアイリス、アイボーナ侯爵令嬢。リシッド伯爵令嬢のガーベラ。そしてウォルタナ伯爵令嬢のパンジー。

残念ながら三人とも懐妊できなかった。だが、あの女も懐妊させない。

それはそうと、最近、膝の調子が悪い。まだ年ではないと思うのだが、カーテシーをきちんと出来ない。ちょっと急ぎ足をしようと思うと足が思うように動かない。痛みがないので助かるが、なんとかしたい。

陛下があの女にわたしと仲良くするように言って下さったらしい。あの女が来たら寛大に許してやるつもりだ。そしてあの女を聖女の名に恥じぬ存在にしてやるつもりだ。
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