16 / 30
第16話 あれからの・・・
しおりを挟む
琴子と涼介は朝寝坊をした。マリカが涼介の独身最後の飲み会にホテルのスイートを借りてくれたので、そこに二人で泊まり、豪華な夕食と夜食を部屋に運んで貰い、朝食も頼んだ。
「このオレンジジュースっていくらよ?ほんとに絞ってあるぞ」と涼介がグラスを見ながら言うと
「貧乏資産家ね」と琴子が笑った。
「あぁ、今日で卒業だけどな」とオムレツを口に入れた。
「ほんと、行き届いてるよな・・・こういうところ、このオムレツの焼き加減、あいつがシェフに教えたんだ、最初に・・・当たり前のような顔して・・・躑躅林の名が効いてるんだろ。それを捨てるとか、あの女、頭おかしいゾ」と
「そうなのよね。優遇されても特別扱いされても、当たり前の顔して、ありがとうって。普通のことだと思ってる」と琴子が顔を歪めて言った。
「このことがバレたらどんな顔するかな?」と涼介が言うと
「ちょっと顔をしかめるかな?でもあの女、歪んでるから・・・親の愛情がおかしいから。お手伝いさんに大事にされてるけど・・・あの婆さん、おひいさまって呼ぶからね。本気でよ。誰よりも尊い存在と扱われるのに、母親からはゴミ扱い・・・
父親からは母親のおまけと思われている。あの女ね、八歳の時、言ったんだ。いつものように母親からけちょんけちょんに馬鹿にされた時に、薄笑いを浮かべながら言ったのよ。『わたしは自分で自分を育ててる。育児書をたくさん読んだから、出来る。普通より出来る』ってどうしてそう思うの?って聞いたら『どうしてって、育てられる本人も育児書読んでるのよ。答えを知ってるの。つまり完全攻略出来るってことでしょ』だから、わたしは優秀な良い子に育つわ。だけど悔しいから親には見せない』ってね」と琴子は笑うと
「まぁ結果は引きこもりの陰気な女よね。寄付するとか・・・それってなによ。あの女は日陰に・・・ううん、床下とか屋根裏にいたらいいのよ」
「そうか、参考にさせて貰うよ。いろいろありがとな。これからは一緒にいない方がいいだろう。僕は妻をあらゆる敵から守るんだから、嫉妬と僻みいっぱいの従姉は排除だよ」と涼介が言うと、琴子は笑って
「冗談うまいんだから」と涼介の腕を取った。
「いや、本気だよ。僕は誤解されたくないんだ。君といるとあらぬ誤解をされるだろう。わずらわしい思いをしたくないんだ」と言う涼介を睨んで
「うまいこと言って、金を独り占めするんだろ」と琴子が言えば
「独り占め?妻の金を夫が管理するだけだろ。どうして従姉がそれに口出しするんだ?」と涼介が冷静な口調で言っていると
スマホがなった。友人からだった。
「涼介、なにやったんだ。おまえ結婚するって言ってなかったか?」
そこに琴子のスマホの呼び出し音が優雅に響いた。琴の音色だ。地獄の幕開けを飾るにふさわしい音色だった。
「このオレンジジュースっていくらよ?ほんとに絞ってあるぞ」と涼介がグラスを見ながら言うと
「貧乏資産家ね」と琴子が笑った。
「あぁ、今日で卒業だけどな」とオムレツを口に入れた。
「ほんと、行き届いてるよな・・・こういうところ、このオムレツの焼き加減、あいつがシェフに教えたんだ、最初に・・・当たり前のような顔して・・・躑躅林の名が効いてるんだろ。それを捨てるとか、あの女、頭おかしいゾ」と
「そうなのよね。優遇されても特別扱いされても、当たり前の顔して、ありがとうって。普通のことだと思ってる」と琴子が顔を歪めて言った。
「このことがバレたらどんな顔するかな?」と涼介が言うと
「ちょっと顔をしかめるかな?でもあの女、歪んでるから・・・親の愛情がおかしいから。お手伝いさんに大事にされてるけど・・・あの婆さん、おひいさまって呼ぶからね。本気でよ。誰よりも尊い存在と扱われるのに、母親からはゴミ扱い・・・
父親からは母親のおまけと思われている。あの女ね、八歳の時、言ったんだ。いつものように母親からけちょんけちょんに馬鹿にされた時に、薄笑いを浮かべながら言ったのよ。『わたしは自分で自分を育ててる。育児書をたくさん読んだから、出来る。普通より出来る』ってどうしてそう思うの?って聞いたら『どうしてって、育てられる本人も育児書読んでるのよ。答えを知ってるの。つまり完全攻略出来るってことでしょ』だから、わたしは優秀な良い子に育つわ。だけど悔しいから親には見せない』ってね」と琴子は笑うと
「まぁ結果は引きこもりの陰気な女よね。寄付するとか・・・それってなによ。あの女は日陰に・・・ううん、床下とか屋根裏にいたらいいのよ」
「そうか、参考にさせて貰うよ。いろいろありがとな。これからは一緒にいない方がいいだろう。僕は妻をあらゆる敵から守るんだから、嫉妬と僻みいっぱいの従姉は排除だよ」と涼介が言うと、琴子は笑って
「冗談うまいんだから」と涼介の腕を取った。
「いや、本気だよ。僕は誤解されたくないんだ。君といるとあらぬ誤解をされるだろう。わずらわしい思いをしたくないんだ」と言う涼介を睨んで
「うまいこと言って、金を独り占めするんだろ」と琴子が言えば
「独り占め?妻の金を夫が管理するだけだろ。どうして従姉がそれに口出しするんだ?」と涼介が冷静な口調で言っていると
スマホがなった。友人からだった。
「涼介、なにやったんだ。おまえ結婚するって言ってなかったか?」
そこに琴子のスマホの呼び出し音が優雅に響いた。琴の音色だ。地獄の幕開けを飾るにふさわしい音色だった。
192
お気に入りに追加
410
あなたにおすすめの小説

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。


嫌いな双子の姉が聖女として王都に連れてかれた→私が本当の聖女!?
京月
恋愛
クローバー帝国に農民として住んでいる双子の姉妹姉のサリーと妹のマリー
姉のサリーは何かと私を目の敵にして意地悪してくる
そんなある日姉が光の魔法に目覚め聖女としてクローバー帝国の王都に連れていかれた
姉のサリーは豪華絢爛な生活をしている中マリーは1人農地で畑を耕す生活を送って来ると隣国のスパイが私を迎えに来る
え?私が本当の聖女!?

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)
京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。
生きていくために身を粉にして働く妹マリン。
家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。
ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。
姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」
司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」
妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」
※本日を持ちまして完結とさせていただきます。
更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。
ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる