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第11話 帰り道は強制お忍び

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戦争が終わるんだからすぐに帰れると思っていたけど、帰りましょうって話にならなかった。
出撃がないので、わたしもやることがない。怪我をした彼らも自然治癒を早めるよう毎日魔法を使ったので、完治している。それ以外の大怪我にはなにもしていない。

聖女が出来ることではないからだ。

だから、最近、聞えよがしに
「聖女様って名前だけだよな」なんて言うのが出ている。トニーがいれば許さないだろうが、わたしの力ではなんとも言えない。

靴を濡らしてやるくらいだ。あいつらになにかしてやろう考えているうちに一日が過ぎる。そういうことで頭をいっぱいにしていないと王太子のことを恨みそうになるのだ。
もう、裏切られるのは嫌だ。信じていたい・・・なのに・・・

あの王太子もわたしを騙したのだろうか?と思って暗い日々を過ごした。王都からの使者はやって来るが、わたしが出した手紙の返事は来ないしわたしへの知らせもない。

そんなある日、隣国の陣から十騎ほど駆けて来た。わたしがやったように白いハンカチを掲げている。
わたしは攻撃しようとする司令官を止めて、彼らを待った。

馬を降りた彼らは、わたしのまえで礼をした。
「聖女様に会いたくてやって参りました。お会いできて光栄です」声を揃えてこう言った彼らは再び馬に乗って去って行った。

彼らを見送っていると
「あいつら聖女のことを勘違いしてないか?名前だけだよな・・・王様だってさっさと帰ったし」「こら、静かにしろ」と後ろでひそひそ話しているのが、聞こえた。

急いで自分のテントに戻った。力を見せないようにしたのは自分だよ。だけどあなたたちが怪我をしないように加護をかけてたんだよ。怪我の治りも早かったはずだよ。
それをなかったことにするなんて・・・だいたいトニーもいつまで王都にいるの、反乱なんてすぐに制圧して戻って来てよ。でも、気づいてる。反乱なんてうそ。トニーを呼び戻す口実だったって。トニーは知らなかったと思う。だって本当に驚いていたから・・・そして戻って来たいと思ってる。絶対に思ってる。だけど王様の責任は重い。だったらわたしが王都に戻ってもいいと思うけどなぜか足止め・・・どうして?

苦しいの。トニー。来て。会いに来て。迎えに来て。王様でしょ。権力あるでしょ。

黒いものがわたしを塗り潰すのよ。どうやって復讐しようかとか考えてしまうのよ・・・わたし、その力があるのよ・・・

そう、最初は悪戯程度、むかつく兵士の足を紐でつなぐイメージ。紐も余裕を持たせてた。だから転ばないけど・・・短くすれば転ぶよ・・・紐だってほぼ永久に維持出来る。
だから、怖いことをやらせないで・・・トニー!

よかった。帰って来るようにってトニーから手紙が来た。帰りは安全を考えて馬車で帰るようにって・・・

おもしろくないけど、馬車で帰ろう。

迎えの馬車は窓が小さかった。それに一人で乗った。ガタゴト乗り心地は悪いけど車輪の一回り分、トニーに近づく。ガタゴト、ガタゴト・・・何回目でトニーかな!

トニー会いたい!
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