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第10話 交渉成立

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「助けてあげます」
「なにを助けるんだ?」と王太子が低い声が言った。
「手を生やします。彼らの生活を助けるってことですね」と言うと三人は意味を取りかねたのか、顔を見合わせている。
「彼らの無くした手を元に戻します」と重ねて言うと
「先ずやって見ろ」と王太子が言うのを受けて
「約束がないと出来ません」
「信用できるか!先ずやって見ろ、出来たら提案を飲む。出来なかったら、護衛の命はない」
「あら、困った。蘇生はしたことないのよね。リックが心配」と笑ってやった。
三人は拳を握って耐えていたが、
「やって見ろ」と王太子が言うともう一度、先ほどの部屋へわたしを連れて行った。

手が生える所はわたし自身、初めて見る。最初に半透明の手が現れる。それが段々色を濃くしていき、質感が本物らしくなる。

「いきなり重いものは持たないで下さいね。少しずつ慣らして。人によって違うから注意してください」ともっともらしいことを言っておく。ごめんね、本当のところは初めてだからわからないのよ・・・

「そこまでできるのか」と王太子がため息まじりに言った。
「えぇ」
「つまり、あなたの国の兵は死なぬ限りは戦い続けるというわけか?」とラルフは真剣に言うとわたしをじっと見た。
わたしもじっと彼を見た。目をそらすと嘘つきらしいからじっと見た。
「わかった。負けだ。負けるよ」と言った。



わたしは、魔力の指輪を付け替えながら、十本ばかり手を生やした。最後の一本が出来上がった時、世界が暗くなった。

気が付くと自分のベッドにいた。野営地の硬いベッドだ。

「目が覚めましたか?まったくいきなりひっくり返るなんて。あちらの王太子が血相かえてあなたを抱えて来た時は驚きました。
わたし、あの部屋で食事させて貰ってましたので、ちゃんと食べれなかったんですよ。ですがあの王太子いいところありますね。あなたをここまで運ぶのを手伝ってくれました。それとバターをくれました。あの国はバターをたくさん食べるそうで、聖女様も軽いのでたくさん食べろってことでたくさんくれましたよ。パンに山盛りで食べるといいそうです」

「はぁわたし・・・そうだわ・・・いきなり暗くなって・・・迂闊だった」と答えると
「休むしかないですね。これを食べてまた眠ればいいですよ」とリックはお盆にパンとバターの載ったお盆を置くとお茶を入れてくれた。

言われた通りバターをたっぷり乗せてパンを食べた。確かにこのバターは美味しい。バターが美味しいと言うことは、牛乳が美味しい。牛が健康。畑がいいってこと?

隣国のほうが余裕があるってことかな? だけど戦争をやめるってことで協力してくれた。最後にひっくり返っていたからお礼が言えなかったのが残念。

王太子殿下ありがとう。わたしはバターに向かってお礼を言った。

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