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第1話 こんなのが聖女とは
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その魔法陣のうえに人影が現れた時、俺は神に感謝した。神は聖女を俺たちに与えてくれた。勝利できる。そう思った。
俺たちに取り囲まれた聖女は怯えて警戒していた。涙に濡れたその顔を見て守らねばと思った。神はこんなに素晴らしい人を与えてくれた。手を差し出した・・・彼女は・・・
◇◇◇
この日、シアナール王国に一人の聖女が現れた。彼女を召喚した国王、宰相、神官長はこれで、平和が訪れる。隣国を退けて勝利して平和を勝ち得ることができると喜んだ。しかし、説明を聞いた聖女はただただ、泣いていた。
「帰らせて、いやです。戦争なんて、ちゃんと話し合って終わらせればいいでしょ。自分たちでやってよ」と言いながら・・・
手に負えないと判断して彼らは侍女長を呼んだ。説明を聞いた侍女長は
「聖女様が! 本当ですか! あぁ夢のよう・・・聖女様にお会いできるなんて」と言うと急いでやって来た。
聖女は泣くのをやめていたが、お茶の入ったカップを壁に投げつけると黙って壁に出来たお茶の染みを睨みつけていた。
そこに侍女長がやって来た。
◇◇◇ 侍女長目線
あぁ素晴らしい、聖女様をお世話できるなんて、おそらくあの男どもが失礼なことをして怒らせたのね。わたくしがなだめてあげるわと、部屋にはいって驚いた。
この小娘が聖女ですってしっかりとしつけをしなくては、これでは聖女の名が泣くわ。わたくしは心を鬼にして聖女に向かって言ってやった。
「話が出来るようになるまで、この部屋で好きにすればいいですわ。後で飲み水を持って来て貰います。喉が渇いたでしょう。着替えも持って来ましょう。その格好はないですからね。
それでは、失礼します」
部屋に水差しを運ばせてドアの前に見張りを置いた。
翌日の昼ごろ、様子を見に行くと着替えた聖女様がソファに座っていた。
「落ち着かれたようですね。聖女様。おなかが空いたでしょう。お食事を持って来ますが、壁に食べさせないと約束出来ますか?」
聖女様が、うなずいたのを見て合図をした。するとわたくしの直属の侍女の一人、アイリスが部屋を出て行き食事を持って戻って来た。
ゆっくり食べて下さい。食べ終わったら着替えて王様に会いましょう。
わたくしは優しく言うと手ずからお茶を入れてあげた。
それからわたくしは、聖女を連れて国王の執務室に向かった。
国王と宰相はきちんと立って聖女様を迎えた。
聖女様は無言でお二人の前に立った。挨拶のマナーを教えたのに、なにもせずに黙って立っている。こんなのが聖女様だとは・・・
でも陛下が、聖女様の前にひざまずいて
「わたしが王のアンソニー・シアナールだ。聖女様お越しいただき、感謝しております」
聖女様は鷹揚にうなづいた。
「聖女様、わたくしはこの国の宰相のバーナード・ミードでございます」
「はい」と聖女様が答えたが、それ以上なにも言わない。だからわたくしが
「そこに座ってお話なさればどうでしょう」と言った。お二人はほっとしたようでソファに座った。
聖女様もお二人の向かい側に座った。
「聖女様、説明させていただきます」と陛下が言うと聖女様は無言でうなずいた。
俺たちに取り囲まれた聖女は怯えて警戒していた。涙に濡れたその顔を見て守らねばと思った。神はこんなに素晴らしい人を与えてくれた。手を差し出した・・・彼女は・・・
◇◇◇
この日、シアナール王国に一人の聖女が現れた。彼女を召喚した国王、宰相、神官長はこれで、平和が訪れる。隣国を退けて勝利して平和を勝ち得ることができると喜んだ。しかし、説明を聞いた聖女はただただ、泣いていた。
「帰らせて、いやです。戦争なんて、ちゃんと話し合って終わらせればいいでしょ。自分たちでやってよ」と言いながら・・・
手に負えないと判断して彼らは侍女長を呼んだ。説明を聞いた侍女長は
「聖女様が! 本当ですか! あぁ夢のよう・・・聖女様にお会いできるなんて」と言うと急いでやって来た。
聖女は泣くのをやめていたが、お茶の入ったカップを壁に投げつけると黙って壁に出来たお茶の染みを睨みつけていた。
そこに侍女長がやって来た。
◇◇◇ 侍女長目線
あぁ素晴らしい、聖女様をお世話できるなんて、おそらくあの男どもが失礼なことをして怒らせたのね。わたくしがなだめてあげるわと、部屋にはいって驚いた。
この小娘が聖女ですってしっかりとしつけをしなくては、これでは聖女の名が泣くわ。わたくしは心を鬼にして聖女に向かって言ってやった。
「話が出来るようになるまで、この部屋で好きにすればいいですわ。後で飲み水を持って来て貰います。喉が渇いたでしょう。着替えも持って来ましょう。その格好はないですからね。
それでは、失礼します」
部屋に水差しを運ばせてドアの前に見張りを置いた。
翌日の昼ごろ、様子を見に行くと着替えた聖女様がソファに座っていた。
「落ち着かれたようですね。聖女様。おなかが空いたでしょう。お食事を持って来ますが、壁に食べさせないと約束出来ますか?」
聖女様が、うなずいたのを見て合図をした。するとわたくしの直属の侍女の一人、アイリスが部屋を出て行き食事を持って戻って来た。
ゆっくり食べて下さい。食べ終わったら着替えて王様に会いましょう。
わたくしは優しく言うと手ずからお茶を入れてあげた。
それからわたくしは、聖女を連れて国王の執務室に向かった。
国王と宰相はきちんと立って聖女様を迎えた。
聖女様は無言でお二人の前に立った。挨拶のマナーを教えたのに、なにもせずに黙って立っている。こんなのが聖女様だとは・・・
でも陛下が、聖女様の前にひざまずいて
「わたしが王のアンソニー・シアナールだ。聖女様お越しいただき、感謝しております」
聖女様は鷹揚にうなづいた。
「聖女様、わたくしはこの国の宰相のバーナード・ミードでございます」
「はい」と聖女様が答えたが、それ以上なにも言わない。だからわたくしが
「そこに座ってお話なさればどうでしょう」と言った。お二人はほっとしたようでソファに座った。
聖女様もお二人の向かい側に座った。
「聖女様、説明させていただきます」と陛下が言うと聖女様は無言でうなずいた。
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