57 / 60
園遊会
しおりを挟む
研究者がいろいろ調べた結果、火を吹く魔獣はドラゴンだと認められた。伝承の存在が実在していたと証明されたのだ。
伝説の魔獣が三匹も現れ、討伐された。それを記念する園遊会が催される事になった。
ジルは騎士団長として討伐の指揮官として招待され、ティーナは薬師長を隠れ蓑として出席。ギルド長とページとライトはティーナの護衛として出席する。
背が伸びたティーナはローブを新調したが、それにはタロウがはいるポケットがついている。
園遊会という事で子供の出席も多く、展示された一番大きな剥製の前では説明役として呼ばれた冒険者が、こども達の人気を集めていた。
令嬢の人気を集めているのはウールン伯爵の子息だ。名前はハリー。
ウールン伯爵、当時男爵は青年の儀の際、ある事故に見舞われた。その時の親子の冷静な立ち居振る舞いが王太子の目に止まり、レッド公爵が持っていた領地を与えられたのだ。
同時に伯爵となった。田舎の小さな領主が一躍豊かな領地の持ち主となったのだ。
また、元レッド公爵のジルフォード・・・今は平民がこの場にいる事は水面下でいろいろな憶測を呼んでいた。
ウールン伯爵令息ハリーが令嬢に囲まれて引きつっている頃、ジルフォードは貴族に囲まれていた。
「ジルフォード君、うちの娘は、君のことをずっと思っておってな・・・・結婚したと聞いてふさぎ込んでしまって父としてみておれんでな・・・・今日は連れて来ておる。少し話しては貰えないか?」
とジルの返事を待たずにそばに立っていた令嬢が
「ジルフォード様、夜会でお見かけしてもすぐに帰ってしまわれて・・・・」と話し始めると
「そうですわ。でも今日はお手柄の指揮官として一段と立派になられて」と割り込んだ令嬢を押しのけて
「ここはうるさい方が多いですわあちらに参りましょう」
最初に話しかけたお父様は離れたところに押しやられてしまい、遠くで娘の姿を見ていた。
これと同じような光景はハリーの周りでも繰り広げられていた。
薄ら笑いを浮かべて二つの集団を眺めていた王太子のヘンリーは、ライトとページを目を合わせるとうなづいた。
「今日の日差しはご令嬢の皆様には、特別なポーションを用意いたしました。さきほど作ったばかりです」の案内とともに綺麗に装飾された容器がワゴンに乗せられて運ばれて来た。
「ご令嬢のみにお配りします・・・・待っていて下さればお持ちします」
少し細身のグラスに注がれたポーションを次々と給仕が配っていく。
令嬢はハリーを上目遣いで見ながらグラスの匂いを嗅いでいる。
「楽しみですわ。王宮のポーションですね」
ジルは
「可愛らしいグラスですわね。ジル様このポーションの色・・・・とっても綺麗ですわね」と言いながら、隣の令嬢の足を踏んづける様になにも言えなかった。なにも出来なかった。
伝説の魔獣が三匹も現れ、討伐された。それを記念する園遊会が催される事になった。
ジルは騎士団長として討伐の指揮官として招待され、ティーナは薬師長を隠れ蓑として出席。ギルド長とページとライトはティーナの護衛として出席する。
背が伸びたティーナはローブを新調したが、それにはタロウがはいるポケットがついている。
園遊会という事で子供の出席も多く、展示された一番大きな剥製の前では説明役として呼ばれた冒険者が、こども達の人気を集めていた。
令嬢の人気を集めているのはウールン伯爵の子息だ。名前はハリー。
ウールン伯爵、当時男爵は青年の儀の際、ある事故に見舞われた。その時の親子の冷静な立ち居振る舞いが王太子の目に止まり、レッド公爵が持っていた領地を与えられたのだ。
同時に伯爵となった。田舎の小さな領主が一躍豊かな領地の持ち主となったのだ。
また、元レッド公爵のジルフォード・・・今は平民がこの場にいる事は水面下でいろいろな憶測を呼んでいた。
ウールン伯爵令息ハリーが令嬢に囲まれて引きつっている頃、ジルフォードは貴族に囲まれていた。
「ジルフォード君、うちの娘は、君のことをずっと思っておってな・・・・結婚したと聞いてふさぎ込んでしまって父としてみておれんでな・・・・今日は連れて来ておる。少し話しては貰えないか?」
とジルの返事を待たずにそばに立っていた令嬢が
「ジルフォード様、夜会でお見かけしてもすぐに帰ってしまわれて・・・・」と話し始めると
「そうですわ。でも今日はお手柄の指揮官として一段と立派になられて」と割り込んだ令嬢を押しのけて
「ここはうるさい方が多いですわあちらに参りましょう」
最初に話しかけたお父様は離れたところに押しやられてしまい、遠くで娘の姿を見ていた。
これと同じような光景はハリーの周りでも繰り広げられていた。
薄ら笑いを浮かべて二つの集団を眺めていた王太子のヘンリーは、ライトとページを目を合わせるとうなづいた。
「今日の日差しはご令嬢の皆様には、特別なポーションを用意いたしました。さきほど作ったばかりです」の案内とともに綺麗に装飾された容器がワゴンに乗せられて運ばれて来た。
「ご令嬢のみにお配りします・・・・待っていて下さればお持ちします」
少し細身のグラスに注がれたポーションを次々と給仕が配っていく。
令嬢はハリーを上目遣いで見ながらグラスの匂いを嗅いでいる。
「楽しみですわ。王宮のポーションですね」
ジルは
「可愛らしいグラスですわね。ジル様このポーションの色・・・・とっても綺麗ですわね」と言いながら、隣の令嬢の足を踏んづける様になにも言えなかった。なにも出来なかった。
47
お気に入りに追加
3,120
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼なじみが誕生日に貰ったと自慢するプレゼントは、婚約者のいる子息からのもので、私だけでなく多くの令嬢が見覚えあるものでした
珠宮さくら
恋愛
アニル国で生まれ育ったテベンティラ・ミシュラは婚約者がいなかったが、まだいないことに焦ってはいなかった。
そんな時に誕生日プレゼントだとブレスレットを貰ったことを嬉しそうに語る幼なじみに驚いてしまったのは、付けているブレスレットに見覚えがあったからだったが、幼なじみにその辺のことを誤解されていくとは思いもしなかった。
それに幼なじみの本性をテベンティラは知らなさすぎたようだ。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました
青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。
しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。
「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」
そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。
実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。
落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。
一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。
※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる