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王宮にて
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「ティーナがまた美肌ポーションを作り始めた。よかったぁ。明日から売り場にでるんだって」と食堂で声高に話させた。
「公爵と結婚したってうわさの人?」「そうそう、その人」「よかった。俺の姉ちゃんが下働きに行ってる貴族の奥様が欲しがってるらしくてさ。俺、姉ちゃんに会うたびに本物を買えって小突かれてさ・・・・本物とかわかるかって」
「なんかその人、人事で騒いだとかうわさがあったけど・・・・」
「公爵ってレッド公爵って身分違いで結婚したから、家が潰された人だよね」
「まぁあのへんの貴族の生活って謎だしな」
「そうそう・・・せいぜい・・・下働きに行ってるくらいだからな」
「またドラゴンが出たってうわさがあるが・・・」
「またか?危ないなぁ」
「いや、討伐出来たそうだが・・・けっこうドラゴンって出るんだね」
「いや、ドラゴンとか」
「まぁそれよりも物騒なペットを連れているのを見かけないか?」
「あぁ、鎖で繋いでるやつだろ?見た目可愛いが危ないやつだ」
「この前、お貴族様のいるカフェから逃げ出して、広場で騒ぎになったと聞いたぞ」
「それより、明日ポーション買えるかな?仕事中に買えないだろ」
「あぁ休みのやつはいいな」とうわさをしていた庭師とその見習いたちは食事を終えて去って行った。
「ティナちゃん。これ食べる?」と王太子は地下の部屋を訪ねた。
ティーナは読んでいた本から顔を上げると
「一人ですか?」と答えた。
「うん、ごめん。僕一人」
「今日もいつもより多めに作ってくれたんだって?」
「えぇ、薬師長が泣いてるし・・・・他の薬師さんは泣いて喜んでくれた・・・」
話している間にお茶をいれると、遠慮なく座ったヘンリーの前にカップを置いた。
「これは?ドーナツ?」
「うん、今人気なんだって。前、やったれ草のポーションを作っただろう。ずーーと前」
「うん、まぁ薬師としてはよくなかったね。いきなり自分に使うなんて」
「あれをドリンクとして作れる?」
「・・・大丈夫・・・・でも飛べなるか、力が強くならない・・・試さないとわからないけど」
「かまわないよ」と王太子は答えすぐに付け加えた。
「明日の予定に入れて貰うね。あっそれからいつも言うけど、必ずジルと一緒に行動してね。ジルにも言ってるけどほんと気をつけてね」
そういうとヘンリーは部屋を出て行った。
三時少し前にジルは迎えに行った。二人は今、王宮の一角にヘンリーが用意した小さな家に住んでいる。
使用人は二人がいない間に仕事をするので、ティーナは気を使わずにのんびり暮らしていた。
翌朝、ティーナは指示書を見て薬瓶を用意していた。
美肌薬百五十本。やったれ草のドリンク鍋ごと。指示書にはやったれ草が二本、添えてあった。
一本で充分かなとティーナは一本を棚に乗せると、薬瓶を五十本ずつ三回運んだ。
それからいつの手順でポーションとドリンクを作って時計を見るとお昼を少し過ぎてる。
届けられたスープを温めると食事を済ませた。
後はジルが迎えにくるまで、のんびり本を読むのが、ティーナの毎日だ。
ところが今日、ジルの迎えが遅かった。連絡もないのでティーナは心配で立ったり座ったりしていたが、そこにジルが駆けつけて来た。
手には血に塗れた毛皮を持っていた。
「ジル、血が・・・」
「俺のじゃないこいつのだ・・・」
「すぐ、治療しないと・・・・だけど薬の在庫はないの・・・売店で」
「待ってろ」と言うとジルは部屋を飛び出した。
ティーナはクッションにその毛皮、マペットを寝かせると水で傷を洗った。
切られた傷のほかに内蔵も傷ついているのか、呼吸のたびに口や鼻から出血する・・・・ティーナは鍋を取り出し水をいれると赤い花をいれた。
「大丈夫よ、落ち着いて作るから、絶対できるから・・・・お試しはわたしがやるから・・・・あなたは安全。だ・か・ら死んじゃだめよ。わかった」
そこにジルが戻って来た。
「それは傷にかけて」
傷は治っていったが、依然呼吸が荒い。
「ちょっと治す薬を作ってる」とジルに言うとうなづいたジルは
「待ってろ、僕の奥さんは最高だからね・・・・」とマペットに声をかけてそっと体を撫でた。
「公爵と結婚したってうわさの人?」「そうそう、その人」「よかった。俺の姉ちゃんが下働きに行ってる貴族の奥様が欲しがってるらしくてさ。俺、姉ちゃんに会うたびに本物を買えって小突かれてさ・・・・本物とかわかるかって」
「なんかその人、人事で騒いだとかうわさがあったけど・・・・」
「公爵ってレッド公爵って身分違いで結婚したから、家が潰された人だよね」
「まぁあのへんの貴族の生活って謎だしな」
「そうそう・・・せいぜい・・・下働きに行ってるくらいだからな」
「またドラゴンが出たってうわさがあるが・・・」
「またか?危ないなぁ」
「いや、討伐出来たそうだが・・・けっこうドラゴンって出るんだね」
「いや、ドラゴンとか」
「まぁそれよりも物騒なペットを連れているのを見かけないか?」
「あぁ、鎖で繋いでるやつだろ?見た目可愛いが危ないやつだ」
「この前、お貴族様のいるカフェから逃げ出して、広場で騒ぎになったと聞いたぞ」
「それより、明日ポーション買えるかな?仕事中に買えないだろ」
「あぁ休みのやつはいいな」とうわさをしていた庭師とその見習いたちは食事を終えて去って行った。
「ティナちゃん。これ食べる?」と王太子は地下の部屋を訪ねた。
ティーナは読んでいた本から顔を上げると
「一人ですか?」と答えた。
「うん、ごめん。僕一人」
「今日もいつもより多めに作ってくれたんだって?」
「えぇ、薬師長が泣いてるし・・・・他の薬師さんは泣いて喜んでくれた・・・」
話している間にお茶をいれると、遠慮なく座ったヘンリーの前にカップを置いた。
「これは?ドーナツ?」
「うん、今人気なんだって。前、やったれ草のポーションを作っただろう。ずーーと前」
「うん、まぁ薬師としてはよくなかったね。いきなり自分に使うなんて」
「あれをドリンクとして作れる?」
「・・・大丈夫・・・・でも飛べなるか、力が強くならない・・・試さないとわからないけど」
「かまわないよ」と王太子は答えすぐに付け加えた。
「明日の予定に入れて貰うね。あっそれからいつも言うけど、必ずジルと一緒に行動してね。ジルにも言ってるけどほんと気をつけてね」
そういうとヘンリーは部屋を出て行った。
三時少し前にジルは迎えに行った。二人は今、王宮の一角にヘンリーが用意した小さな家に住んでいる。
使用人は二人がいない間に仕事をするので、ティーナは気を使わずにのんびり暮らしていた。
翌朝、ティーナは指示書を見て薬瓶を用意していた。
美肌薬百五十本。やったれ草のドリンク鍋ごと。指示書にはやったれ草が二本、添えてあった。
一本で充分かなとティーナは一本を棚に乗せると、薬瓶を五十本ずつ三回運んだ。
それからいつの手順でポーションとドリンクを作って時計を見るとお昼を少し過ぎてる。
届けられたスープを温めると食事を済ませた。
後はジルが迎えにくるまで、のんびり本を読むのが、ティーナの毎日だ。
ところが今日、ジルの迎えが遅かった。連絡もないのでティーナは心配で立ったり座ったりしていたが、そこにジルが駆けつけて来た。
手には血に塗れた毛皮を持っていた。
「ジル、血が・・・」
「俺のじゃないこいつのだ・・・」
「すぐ、治療しないと・・・・だけど薬の在庫はないの・・・売店で」
「待ってろ」と言うとジルは部屋を飛び出した。
ティーナはクッションにその毛皮、マペットを寝かせると水で傷を洗った。
切られた傷のほかに内蔵も傷ついているのか、呼吸のたびに口や鼻から出血する・・・・ティーナは鍋を取り出し水をいれると赤い花をいれた。
「大丈夫よ、落ち着いて作るから、絶対できるから・・・・お試しはわたしがやるから・・・・あなたは安全。だ・か・ら死んじゃだめよ。わかった」
そこにジルが戻って来た。
「それは傷にかけて」
傷は治っていったが、依然呼吸が荒い。
「ちょっと治す薬を作ってる」とジルに言うとうなづいたジルは
「待ってろ、僕の奥さんは最高だからね・・・・」とマペットに声をかけてそっと体を撫でた。
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