27 / 60
二人の王子 国王目線
しおりを挟む
第二王子のウィリアムが、会いに来た。内密に相談したい事があると言うのだ。
ヘンリーがある貴族家の門を封鎖した。その際、その家の護衛を半殺しにして放り出したそうだ。
その、貴族家はヘンリーの愚かさに呆れ果て、ウィリアムに王太子になって欲しいと懇願していたが、多分、それに気づいたヘンリーが両家を封鎖したとか・・・・
軽くうなづいくと、勇気が出たのか、実はレッド公爵家がその家でジルフォードは廃嫡されたようだ。おそらくヘンリーの側近だったばっかりにジルフォードが犠牲になったと思うから、自分がジルフォードを救いたいのだと。
なるほど・・・・
「ウィル。王子としての自覚を持ってくれた事、父は嬉しい・・・・いいか、情勢を見て行動すればいい・・・・」
「ありがとうございます。父上・・・いぇ・・・陛下。お言葉を胸に刻みます」
そう言ってウィルは下がって行った。はつらつとして若い後ろ姿を見送った。
ヘンリーが生まれた時、わたしは嬉しかった。この子を守る為に強くあらねばと思った。
それから半年後、ウィリアムが生まれた。この子も可愛かった。
第一子を生んだ妃を第一妃を呼ぶ。第二子を生んだ妃を第二妃と呼ぶ。両者に上下はない。
ただ、二人が成長するにつれてウィリアムの方を可愛いと思うようになった。
理性は両者を同じにと命ずるが、ちょっとした時に差をつけてしまうし、自然と第二妃のもとへ通ってしまった。
わたしは悩んだ。愛するウィルを王太子とするのはダメだ。周りの列強三国の後継と付き合う「たんぽぽ会」にウィルを出すことはしたくない・・・・・出来ない・・・・
それで、わたしはヘンリーを王太子とした。
初めてたんぽぽ会に出席するヘンリーの元に三国の跡取りたちから手紙が届いた。
仲良く遊びましょっと書かれたそれを読んだヘンリーは、玩具を用意しお菓子をたくさん用意してとねだり、指折り数えてその日を待った。
時間より早めに小走りで会場に向かったと、報告が来た。胸が痛かった。
ヘンリーがやんちゃして、お兄さんたちに迷惑をかけたようだと報告が来た。上着はケーキのクリームで汚れズボンも泥まみれだったと・・・・・
ヘンリーは熱を出した。
それから、ヘンリーは勉強をがんばり、書類保管庫にこもるようになった。
一週間程たったある日、ヘンリーの眉間のしわが取れた。
その秋、ノーステラ帝国が小麦の買い付けを断って来た。断られて幸いだ。不当に買い叩かれていたからだ。
飢えて死ぬ者が少し減るだろう。
二度目のたんぽぽ会に行くヘンリーは落ち着いていたと報告があった。
翌年はアズマ法皇国が小麦を買わなかった。外交担当者が鼻を高くしていたが、こいつは関係ない・・・・
その次はリバリア王国が小麦と薬草を買わなかった。
それからも取引はどんどん断られて行った。
冬に飢えて死ぬ者はいなくなった。羊毛も皆が手に入れられるようになって、寒さの心配もなくなった。
たんぽぽ会に行くヘンリーがにまにま笑っていたと報告があった。
ヘンリーお前は・・・・一体・・・
食べ物の心配がなくなると権力闘争が始まった。
王太子の交代を要求する者がちらほら出てきた。ヘンリーに直接いやみを言う者、屋敷に兵を集める者。
だが、いつのまにかそいつらは消えていた。
ある日、ヘンリーが人払いした上でこう切り出した。
「陛下、そろそろ、全権をおゆずりください」
返事が出来ず無言で見返すわたしに
「面倒なんですよ。根回しとか裏から手配して、表では誰かに配慮してとか・・・・・つまり王命を出したいですね」
「王命か」
「はい、王命で手っ取り早く解決したいですね。制度としてはくそったれですが、使えます」
「良かろう・・・・全て譲ろう・・・・戴冠式は早い方がいいな」
「いえ、王位はこのままで・・・・やはり陛下がどっしり構えていないと」
「わかった・・・・すまなかったな・・・責任は全て王が取る。責めも全てだ・・・・当たり前の事だな・・・今更すまない」
「いえ、ありがとうございます。父上」
そういうとヘンリーは印章を持って出て行った。
わたしが持てなかった自信に満ちた後ろ姿を見送った。
今日の午後、ノーステラ帝国へ行っていたウィリアムが戻って来た。おおきな戦果をあげた戦の、総大将として胸を張って行進していた。
城のまえの広場で、馬を降りるとヘンリーの前にひざまづいて戦勝報告をした。
二人の姿が涙で霞んでみえなくなった。あの日ヘンリーを選んだのは間違いなかったと自分に言い聞かせた。
ヘンリーがある貴族家の門を封鎖した。その際、その家の護衛を半殺しにして放り出したそうだ。
その、貴族家はヘンリーの愚かさに呆れ果て、ウィリアムに王太子になって欲しいと懇願していたが、多分、それに気づいたヘンリーが両家を封鎖したとか・・・・
軽くうなづいくと、勇気が出たのか、実はレッド公爵家がその家でジルフォードは廃嫡されたようだ。おそらくヘンリーの側近だったばっかりにジルフォードが犠牲になったと思うから、自分がジルフォードを救いたいのだと。
なるほど・・・・
「ウィル。王子としての自覚を持ってくれた事、父は嬉しい・・・・いいか、情勢を見て行動すればいい・・・・」
「ありがとうございます。父上・・・いぇ・・・陛下。お言葉を胸に刻みます」
そう言ってウィルは下がって行った。はつらつとして若い後ろ姿を見送った。
ヘンリーが生まれた時、わたしは嬉しかった。この子を守る為に強くあらねばと思った。
それから半年後、ウィリアムが生まれた。この子も可愛かった。
第一子を生んだ妃を第一妃を呼ぶ。第二子を生んだ妃を第二妃と呼ぶ。両者に上下はない。
ただ、二人が成長するにつれてウィリアムの方を可愛いと思うようになった。
理性は両者を同じにと命ずるが、ちょっとした時に差をつけてしまうし、自然と第二妃のもとへ通ってしまった。
わたしは悩んだ。愛するウィルを王太子とするのはダメだ。周りの列強三国の後継と付き合う「たんぽぽ会」にウィルを出すことはしたくない・・・・・出来ない・・・・
それで、わたしはヘンリーを王太子とした。
初めてたんぽぽ会に出席するヘンリーの元に三国の跡取りたちから手紙が届いた。
仲良く遊びましょっと書かれたそれを読んだヘンリーは、玩具を用意しお菓子をたくさん用意してとねだり、指折り数えてその日を待った。
時間より早めに小走りで会場に向かったと、報告が来た。胸が痛かった。
ヘンリーがやんちゃして、お兄さんたちに迷惑をかけたようだと報告が来た。上着はケーキのクリームで汚れズボンも泥まみれだったと・・・・・
ヘンリーは熱を出した。
それから、ヘンリーは勉強をがんばり、書類保管庫にこもるようになった。
一週間程たったある日、ヘンリーの眉間のしわが取れた。
その秋、ノーステラ帝国が小麦の買い付けを断って来た。断られて幸いだ。不当に買い叩かれていたからだ。
飢えて死ぬ者が少し減るだろう。
二度目のたんぽぽ会に行くヘンリーは落ち着いていたと報告があった。
翌年はアズマ法皇国が小麦を買わなかった。外交担当者が鼻を高くしていたが、こいつは関係ない・・・・
その次はリバリア王国が小麦と薬草を買わなかった。
それからも取引はどんどん断られて行った。
冬に飢えて死ぬ者はいなくなった。羊毛も皆が手に入れられるようになって、寒さの心配もなくなった。
たんぽぽ会に行くヘンリーがにまにま笑っていたと報告があった。
ヘンリーお前は・・・・一体・・・
食べ物の心配がなくなると権力闘争が始まった。
王太子の交代を要求する者がちらほら出てきた。ヘンリーに直接いやみを言う者、屋敷に兵を集める者。
だが、いつのまにかそいつらは消えていた。
ある日、ヘンリーが人払いした上でこう切り出した。
「陛下、そろそろ、全権をおゆずりください」
返事が出来ず無言で見返すわたしに
「面倒なんですよ。根回しとか裏から手配して、表では誰かに配慮してとか・・・・・つまり王命を出したいですね」
「王命か」
「はい、王命で手っ取り早く解決したいですね。制度としてはくそったれですが、使えます」
「良かろう・・・・全て譲ろう・・・・戴冠式は早い方がいいな」
「いえ、王位はこのままで・・・・やはり陛下がどっしり構えていないと」
「わかった・・・・すまなかったな・・・責任は全て王が取る。責めも全てだ・・・・当たり前の事だな・・・今更すまない」
「いえ、ありがとうございます。父上」
そういうとヘンリーは印章を持って出て行った。
わたしが持てなかった自信に満ちた後ろ姿を見送った。
今日の午後、ノーステラ帝国へ行っていたウィリアムが戻って来た。おおきな戦果をあげた戦の、総大将として胸を張って行進していた。
城のまえの広場で、馬を降りるとヘンリーの前にひざまづいて戦勝報告をした。
二人の姿が涙で霞んでみえなくなった。あの日ヘンリーを選んだのは間違いなかったと自分に言い聞かせた。
84
お気に入りに追加
3,120
あなたにおすすめの小説
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
幼なじみが誕生日に貰ったと自慢するプレゼントは、婚約者のいる子息からのもので、私だけでなく多くの令嬢が見覚えあるものでした
珠宮さくら
恋愛
アニル国で生まれ育ったテベンティラ・ミシュラは婚約者がいなかったが、まだいないことに焦ってはいなかった。
そんな時に誕生日プレゼントだとブレスレットを貰ったことを嬉しそうに語る幼なじみに驚いてしまったのは、付けているブレスレットに見覚えがあったからだったが、幼なじみにその辺のことを誤解されていくとは思いもしなかった。
それに幼なじみの本性をテベンティラは知らなさすぎたようだ。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる