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二人の王子 国王目線

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第二王子のウィリアムが、会いに来た。内密に相談したい事があると言うのだ。


ヘンリーがある貴族家の門を封鎖した。その際、その家の護衛を半殺しにして放り出したそうだ。

その、貴族家はヘンリーの愚かさに呆れ果て、ウィリアムに王太子になって欲しいと懇願していたが、多分、それに気づいたヘンリーが両家を封鎖したとか・・・・

軽くうなづいくと、勇気が出たのか、実はレッド公爵家がその家でジルフォードは廃嫡されたようだ。おそらくヘンリーの側近だったばっかりにジルフォードが犠牲になったと思うから、自分がジルフォードを救いたいのだと。


なるほど・・・・

「ウィル。王子としての自覚を持ってくれた事、父は嬉しい・・・・いいか、情勢を見て行動すればいい・・・・」

「ありがとうございます。父上・・・いぇ・・・陛下。お言葉を胸に刻みます」

そう言ってウィルは下がって行った。はつらつとして若い後ろ姿を見送った。



ヘンリーが生まれた時、わたしは嬉しかった。この子を守る為に強くあらねばと思った。

それから半年後、ウィリアムが生まれた。この子も可愛かった。

第一子を生んだ妃を第一妃を呼ぶ。第二子を生んだ妃を第二妃と呼ぶ。両者に上下はない。

ただ、二人が成長するにつれてウィリアムの方を可愛いと思うようになった。

理性は両者を同じにと命ずるが、ちょっとした時に差をつけてしまうし、自然と第二妃のもとへ通ってしまった。


わたしは悩んだ。愛するウィルを王太子とするのはダメだ。周りの列強三国の後継と付き合う「たんぽぽ会」にウィルを出すことはしたくない・・・・・出来ない・・・・

それで、わたしはヘンリーを王太子とした。

初めてたんぽぽ会に出席するヘンリーの元に三国の跡取りたちから手紙が届いた。

仲良く遊びましょっと書かれたそれを読んだヘンリーは、玩具を用意しお菓子をたくさん用意してとねだり、指折り数えてその日を待った。

時間より早めに小走りで会場に向かったと、報告が来た。胸が痛かった。


ヘンリーがやんちゃして、お兄さんたちに迷惑をかけたようだと報告が来た。上着はケーキのクリームで汚れズボンも泥まみれだったと・・・・・


ヘンリーは熱を出した。

それから、ヘンリーは勉強をがんばり、書類保管庫にこもるようになった。

一週間程たったある日、ヘンリーの眉間のしわが取れた。


その秋、ノーステラ帝国が小麦の買い付けを断って来た。断られて幸いだ。不当に買い叩かれていたからだ。

飢えて死ぬ者が少し減るだろう。


二度目のたんぽぽ会に行くヘンリーは落ち着いていたと報告があった。


翌年はアズマ法皇国が小麦を買わなかった。外交担当者が鼻を高くしていたが、こいつは関係ない・・・・

その次はリバリア王国が小麦と薬草を買わなかった。

それからも取引はどんどん断られて行った。


冬に飢えて死ぬ者はいなくなった。羊毛も皆が手に入れられるようになって、寒さの心配もなくなった。

たんぽぽ会に行くヘンリーがにまにま笑っていたと報告があった。

ヘンリーお前は・・・・一体・・・


食べ物の心配がなくなると権力闘争が始まった。

王太子の交代を要求する者がちらほら出てきた。ヘンリーに直接いやみを言う者、屋敷に兵を集める者。

だが、いつのまにかそいつらは消えていた。


ある日、ヘンリーが人払いした上でこう切り出した。

「陛下、そろそろ、全権をおゆずりください」

返事が出来ず無言で見返すわたしに

「面倒なんですよ。根回しとか裏から手配して、表では誰かに配慮してとか・・・・・つまり王命を出したいですね」

「王命か」

「はい、王命で手っ取り早く解決したいですね。制度としてはくそったれですが、使えます」

「良かろう・・・・全て譲ろう・・・・戴冠式は早い方がいいな」

「いえ、王位はこのままで・・・・やはり陛下がどっしり構えていないと」

「わかった・・・・すまなかったな・・・責任は全て王が取る。責めも全てだ・・・・当たり前の事だな・・・今更すまない」

「いえ、ありがとうございます。父上」

そういうとヘンリーは印章を持って出て行った。

わたしが持てなかった自信に満ちた後ろ姿を見送った。



今日の午後、ノーステラ帝国へ行っていたウィリアムが戻って来た。おおきな戦果をあげた戦の、総大将として胸を張って行進していた。

城のまえの広場で、馬を降りるとヘンリーの前にひざまづいて戦勝報告をした。

二人の姿が涙で霞んでみえなくなった。あの日ヘンリーを選んだのは間違いなかったと自分に言い聞かせた。


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