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サリーさんとポーラさん

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「ねぇポーラ、この年になってこんな経験すると思ってなかったわ」

「同感よ」

「確かにティーナはただのお嬢さんじゃないと思ってたわ。だけどね」

「でもお似合いだし、このまま結婚したら・・・・あっもうしてるのね。このままでいいかしらね」

「王都に戻っちゃうのが残念」

「そこよね。だけどジルはあれで、国の中枢にいる人だから、いろいろ考えてくれるわよ」


「そうね。ねぇポーラ。ある年、急に冬を越せたの覚えてる?」

「うん、小麦がなくならなかった。毎年覚悟してたよね。春を迎えられないかもと・・・」

「そう。買いだめしようにも値が上がって・・・・」

「それが、なんの前触れもなく店に小麦がずっとあって・・・・パン屋も冬中商売した」

「いつのまにか、飢えを心配しなくなり、薬も衣類も・・・・」

「どうしてかしらって、ふと思ったの」

「王宮になにかあったのかしら」

「ほら、わたしたち庶民でも優秀な息子が、お父さんに代わって商売を立て直したりするでしょ」

「そうそう、なにか新しいやり方とか、外国の方法を取り入れたりとか・・・・そう、可でも不可でもないお店が急成長したり・・・・国もそうかもって思ったの。あのジルって王太子様の仲良しでしょ・・・・仲良し同士で協力しあってたりとか」

「その家を建て直す話は、割と聞くけど・・・・あの小麦の事って、あの人達、まだ子供だよ」

「そうか・・・・子供だよね」

「まぁジルはいい人だし、もう結婚してるから身分がどうのこうのっていうのは、解決してるんだよね」

「だよね」

「もしかしたら、私たちもお芝居に登場したりして」

「あるかもーー」

「頼りになる近所のおば様でさ・・・」

「そうそう、うじうじ悩むジル様にかつをいれるの」

「それいい」


『恋にもう遅いはありませんことよ』

『そうよ、ジルさん。あなたの思いはあなたの足に翼を授けてますわ。さぁティーナの元へ』

「わたしたち、脚本家になれるかも」とサリーさんが言えば

「恋をしたらみんな詩人になるって聞いたことある?」

「ある、ある。恋を囁かないといけないもの。後で恥ずかしいけど」とポーラさんが答えた。

「ジルの書いた手紙ってどんなだったでしょうね」とサリーさんが言えば

「くそばばぁはさぞ腹が立ったでしょうね」

「そう思うわ。殺してやるって思うほど」とサリーさんが呟くと

「わかるわ」とポーラさんが答えた。

二人はしばらくお互いの目を見つめ合った。


◇◇◇

新作の「黙ってすっこんどいたら良かったのに」現代日本風の世界の話です。ぜひ読んでみて下さい。

新作の「なにも奪わせない 番外編」をあげています。読んでみて下さい。

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