48 / 60
たんぽぽ会 2
しおりを挟む
俺は翌日、熱を出して寝込んだ。回復すると俺は図書館で外交関係の書籍を読み、文書の保管庫にこもり、貿易収支、農業生産高の資料を調べた。
俺が犬をやっているとき、「次は小麦を咥えて来い」とか「草を大事にな」「今度従兄弟が結婚するんだ。糸繰りよろしく」とか言い合ってはげらげら笑っていたから、なにかあると思ったんだ。
父上は食事の時、俺を悲しそうに見たがなにも言わなかった、母上は
「やんちゃしたんですって、みなさまに甘えすぎですよ」と笑いながら言った。
昼間は調べ物で気が紛れたが夜は悔しさと怒りで眠れなかった。そのうち俺は犬になって、それも大きな犬になってやつらを追い回すことを想像するようになった。
俺は泣きながら逃げるツーチャンを追いかけ、転んだツーチャンを踏んだり、尻に噛み付いたりすることを想像した。
ある日、夢のなかにツーチャンが出て来た。俺はいつも通り追い回し転んだツーチャンの尻に噛み付いた。
必死に起き上がり逃げるツーチャンを転がし、仰向けになったツーチャンの上に乗って人間の言葉で
「いいか、小麦はもう、いりません」と言え、我が王国から不当に取り上げるような意地汚い真似をするな・・・・
逆らえば次はどうなると思うか?知りたいなら、逆らってみろ・・・ガォーーーと吠えたら自分の声で目が覚めた。
なんだかスキッとしていた。
今年はノーステラ皇国が、小麦の買い上げを控えたと聞いたが、それ以上のことはわからなかった。
さて、次の年のたんぽぽ会に俺はおもちゃを持って行かなかったが、エルプーチンがボールを用意していた。
俺はお座りをしたり、「ワン」と吠えたりボールを追いかけて走った。
ツーチャンは少し遠慮している素振りだったが、それなりに楽しそうだった。
俺は悔しさと怒りとちょっとの期待で眠れない夜を過ごしたが、ある日、エルプーチンが夢に出て来た。
俺は犬になったあいつにお座りをさせ、下手だと馬の短鞭で叩いた。「ワン」と鳴くように命令し、最後は足で耳の後ろを掻けと命令し、馬の短鞭でバシバシ叩いた。
人間のように泣くから、「キャイン、キャイーン」と鳴けと命令しているうちに目が覚めた。
今年は、ノーステラ帝国とアズマ法皇国が小麦を買わなかった。セントア王国は食料不足にならない冬だったそうだ。
ちなみにアズマ法皇国はシルクも買わなかったので、適正価格で売ることができたそうだ。農家は娘を売らずに済んだと聞いた。
それからも、たんぽぽ会ではみなさんに遊んで貰った。お礼は夢のなかで丁寧にした。
ほんとうに入っているかはわからない。確認のしようがないし・・・
夢の中で犬としてはっきり上下関係を理解させてからは、外交交渉で負けることはなくなった。
我が国を訪問する時の馬車列は短くなった。
あいつら軍をすすめる事を仮定して我が国の道路、地形を調べまくっていたから・・・・
入国できる人数をどんどん減らしていったんだ。
周りの三カ国は確かに大国だが、農業資源が少ないのだ。そしてセントア王国を占領しようとした事もあるようだが、一国が攻めると一国が防衛戦に加わるので決着がつかず、農地が荒らされたセントア王国からの小麦がなくなって四カ国が飢えると言った事態が起こり、手出しをしないのが一番だとなったようだ。
つまり、セントア王国の土地に手を出さないが、土地が産みだした物は遠慮なくいただくやり方が定着したのだ。
そういった、経緯でセントア王国は三カ国の中心で生き延びた。だが、三カ国に好きにされてぼろぼろになった。
ここで俺が登場した。
多分、俺の能力は体の接触をした相手の夢に入り込めることだと思う。そして相手との間に距離が必要だと思う。
たんぽぽ会で俺の頭をなでる。国に戻る。どこに国の王宮も馬車で三日とか四日とか、かかる。
国に戻った頃、夢のなかでこんにちはって事だと思う。確証はないが・・・・
ここ数年のたんぽぽ会はお茶を飲みながら、チェスなどのゲームをやり、世間話をしたり婚約者のことを話してもらったりと和やかに過ごしている。
ただ、最近どこの国も国境がきな臭い。あいつらに誰が、ボスなのか。もう一度はっきり教えてやる。しつけ直しだ・・・・・俺はお茶に混ぜてやつらに飲ませた。
リアルでふっさふさを見たかったが、夢で会えたからいいや。
ティーナって最高だよな。
◇◇◇
新作の「黙ってすっこんどいたら良かったのに」現代日本風の世界の話です。ぜひ読んでみて下さい。
新作の「なにも奪わせない 番外編」をあげています。読んでみて下さい。
俺が犬をやっているとき、「次は小麦を咥えて来い」とか「草を大事にな」「今度従兄弟が結婚するんだ。糸繰りよろしく」とか言い合ってはげらげら笑っていたから、なにかあると思ったんだ。
父上は食事の時、俺を悲しそうに見たがなにも言わなかった、母上は
「やんちゃしたんですって、みなさまに甘えすぎですよ」と笑いながら言った。
昼間は調べ物で気が紛れたが夜は悔しさと怒りで眠れなかった。そのうち俺は犬になって、それも大きな犬になってやつらを追い回すことを想像するようになった。
俺は泣きながら逃げるツーチャンを追いかけ、転んだツーチャンを踏んだり、尻に噛み付いたりすることを想像した。
ある日、夢のなかにツーチャンが出て来た。俺はいつも通り追い回し転んだツーチャンの尻に噛み付いた。
必死に起き上がり逃げるツーチャンを転がし、仰向けになったツーチャンの上に乗って人間の言葉で
「いいか、小麦はもう、いりません」と言え、我が王国から不当に取り上げるような意地汚い真似をするな・・・・
逆らえば次はどうなると思うか?知りたいなら、逆らってみろ・・・ガォーーーと吠えたら自分の声で目が覚めた。
なんだかスキッとしていた。
今年はノーステラ皇国が、小麦の買い上げを控えたと聞いたが、それ以上のことはわからなかった。
さて、次の年のたんぽぽ会に俺はおもちゃを持って行かなかったが、エルプーチンがボールを用意していた。
俺はお座りをしたり、「ワン」と吠えたりボールを追いかけて走った。
ツーチャンは少し遠慮している素振りだったが、それなりに楽しそうだった。
俺は悔しさと怒りとちょっとの期待で眠れない夜を過ごしたが、ある日、エルプーチンが夢に出て来た。
俺は犬になったあいつにお座りをさせ、下手だと馬の短鞭で叩いた。「ワン」と鳴くように命令し、最後は足で耳の後ろを掻けと命令し、馬の短鞭でバシバシ叩いた。
人間のように泣くから、「キャイン、キャイーン」と鳴けと命令しているうちに目が覚めた。
今年は、ノーステラ帝国とアズマ法皇国が小麦を買わなかった。セントア王国は食料不足にならない冬だったそうだ。
ちなみにアズマ法皇国はシルクも買わなかったので、適正価格で売ることができたそうだ。農家は娘を売らずに済んだと聞いた。
それからも、たんぽぽ会ではみなさんに遊んで貰った。お礼は夢のなかで丁寧にした。
ほんとうに入っているかはわからない。確認のしようがないし・・・
夢の中で犬としてはっきり上下関係を理解させてからは、外交交渉で負けることはなくなった。
我が国を訪問する時の馬車列は短くなった。
あいつら軍をすすめる事を仮定して我が国の道路、地形を調べまくっていたから・・・・
入国できる人数をどんどん減らしていったんだ。
周りの三カ国は確かに大国だが、農業資源が少ないのだ。そしてセントア王国を占領しようとした事もあるようだが、一国が攻めると一国が防衛戦に加わるので決着がつかず、農地が荒らされたセントア王国からの小麦がなくなって四カ国が飢えると言った事態が起こり、手出しをしないのが一番だとなったようだ。
つまり、セントア王国の土地に手を出さないが、土地が産みだした物は遠慮なくいただくやり方が定着したのだ。
そういった、経緯でセントア王国は三カ国の中心で生き延びた。だが、三カ国に好きにされてぼろぼろになった。
ここで俺が登場した。
多分、俺の能力は体の接触をした相手の夢に入り込めることだと思う。そして相手との間に距離が必要だと思う。
たんぽぽ会で俺の頭をなでる。国に戻る。どこに国の王宮も馬車で三日とか四日とか、かかる。
国に戻った頃、夢のなかでこんにちはって事だと思う。確証はないが・・・・
ここ数年のたんぽぽ会はお茶を飲みながら、チェスなどのゲームをやり、世間話をしたり婚約者のことを話してもらったりと和やかに過ごしている。
ただ、最近どこの国も国境がきな臭い。あいつらに誰が、ボスなのか。もう一度はっきり教えてやる。しつけ直しだ・・・・・俺はお茶に混ぜてやつらに飲ませた。
リアルでふっさふさを見たかったが、夢で会えたからいいや。
ティーナって最高だよな。
◇◇◇
新作の「黙ってすっこんどいたら良かったのに」現代日本風の世界の話です。ぜひ読んでみて下さい。
新作の「なにも奪わせない 番外編」をあげています。読んでみて下さい。
36
お気に入りに追加
3,122
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
奪われたものは、もう返さなくていいです
gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる