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たんぽぽ会 1
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さて、今年の「たんぽぽ会」が近づいて来た。年に一度、四カ国の君主もしくは継承位首位が親しく付き合う会合だ。
これは、大昔から続いている会合で四カ国の親善、平和を目的として毎回、我がセントア王国の王宮で開かれている。
四カ国の歴史は子供の頃から繰り返し学ばされた。
位置関係は中央のセントア王国を囲んで、北にノーステラ帝国。東にアズマ法皇国。西にリバリア王国。南に海がある。
中央のセントア王国は周りの三カ国から守られ、平和・独立を保っている。
故に我々は三カ国に感謝して過ごさねばならないと言う事だ。
そして、四カ国の君主もしくは継承位首位が、親しく友達付き合いをすれば、平和が保たれるという考えのもと、「たんぽぽ会」という会が作られた。
俺は八歳になった年、この会合に初参加した。事前に三人の参加者から手紙を貰っていた。
ノーステラ帝国の十四歳のツーチャン皇太子。リバリア王国の十二歳のポール王太子。アズマ法皇国の十二歳のエルプーチン皇太子。彼らは揃って一緒に遊ぶのを楽しみしていると書いて来た。
俺はそれは楽しみにして、ボードゲームを用意し、ボールとかシャボン玉とか用意して会える日を指折り数えて待った。
そして当日俺は嬉しくて小走りで会場に向かった。この会合は厳重に人払いがされてほんとに四人だけの会合だ。
時間前だったが会場に入って驚いた。すでに三人が揃っていて、俺の用意したボードゲームは踏み潰され床に散らばっていた。
見たものの意味が理解できずに入口で固まっていた俺を見て彼らは、げらげら笑いながら菓子のクリームで汚れた手を俺の服で拭いた。
「おい、挨拶ぐらいしろよ。やっぱり犬は口が聞けないか」と一人が言うと
「犬ですからね。でも躾をしましょう。まずは、お座りだな」と言うと俺を押さえつけた。床に座りこんだ俺に向かって
「おい、ツーチャン様にワンと言って挨拶しろ」
「ちゃんと躾けろ、ポール様」とツーチャンが言うと
「かしこまり」とポールは俺の尻を蹴った」
「ワン。ワンだ。言ってみろ」
「わ・・ん」
「犬らしくない。ワンだ」
「ワ・・・ん」
「惜しい、ワンだ」
「ワン・・・」
「偉いぞ」と言うとエルプーチンがビスケットを俺の口に入れた。
俺の犬修行は続いた。自分で用意していたボールを咥えては三人の元に戻り、追いかけては咥えて戻っている時に
ベルが鳴り響いた。
「残念ヘンリー様と遊んであげてると時間が早く過ぎたね」とツーチャンは言うと
「よーし、いい子だ」と食べかけのビスケットを俺の口に押し込んだ。
「いい子だ」とエルプーチンは俺の頭を撫でた。
「よしよし」と言いながらポールは俺の顎を撫でた。
ポールは俺を立たせると四人が向かい合う位置に立たせた。
「ヘンリー様、合図をしたら頭をさげて下さい」
「礼」の声に三人が頭を下げた。俺も慌てて頭を下げた。
扉が開いて各自の侍従が入ってきた。
「つい楽しくて遊びすぎてしまいました」
「お止めしないといけませんのに、楽しそうなヘンリー様を見てるとつい」
「久しぶりに楽しく過ごさせて頂きました」
そう言いながら彼らは侍従に伴われて去って行った。
皆が行ってしまうと侍従は無言で俺の上着を着替えさせた。
◇◇◇
新作の「黙ってすっこんどいたら良かったのに」現代日本風の世界の話です。ぜひ読んでみて下さい。
新作の「なにも奪わせない 番外編」をあげています。読んでみて下さい。
これは、大昔から続いている会合で四カ国の親善、平和を目的として毎回、我がセントア王国の王宮で開かれている。
四カ国の歴史は子供の頃から繰り返し学ばされた。
位置関係は中央のセントア王国を囲んで、北にノーステラ帝国。東にアズマ法皇国。西にリバリア王国。南に海がある。
中央のセントア王国は周りの三カ国から守られ、平和・独立を保っている。
故に我々は三カ国に感謝して過ごさねばならないと言う事だ。
そして、四カ国の君主もしくは継承位首位が、親しく友達付き合いをすれば、平和が保たれるという考えのもと、「たんぽぽ会」という会が作られた。
俺は八歳になった年、この会合に初参加した。事前に三人の参加者から手紙を貰っていた。
ノーステラ帝国の十四歳のツーチャン皇太子。リバリア王国の十二歳のポール王太子。アズマ法皇国の十二歳のエルプーチン皇太子。彼らは揃って一緒に遊ぶのを楽しみしていると書いて来た。
俺はそれは楽しみにして、ボードゲームを用意し、ボールとかシャボン玉とか用意して会える日を指折り数えて待った。
そして当日俺は嬉しくて小走りで会場に向かった。この会合は厳重に人払いがされてほんとに四人だけの会合だ。
時間前だったが会場に入って驚いた。すでに三人が揃っていて、俺の用意したボードゲームは踏み潰され床に散らばっていた。
見たものの意味が理解できずに入口で固まっていた俺を見て彼らは、げらげら笑いながら菓子のクリームで汚れた手を俺の服で拭いた。
「おい、挨拶ぐらいしろよ。やっぱり犬は口が聞けないか」と一人が言うと
「犬ですからね。でも躾をしましょう。まずは、お座りだな」と言うと俺を押さえつけた。床に座りこんだ俺に向かって
「おい、ツーチャン様にワンと言って挨拶しろ」
「ちゃんと躾けろ、ポール様」とツーチャンが言うと
「かしこまり」とポールは俺の尻を蹴った」
「ワン。ワンだ。言ってみろ」
「わ・・ん」
「犬らしくない。ワンだ」
「ワ・・・ん」
「惜しい、ワンだ」
「ワン・・・」
「偉いぞ」と言うとエルプーチンがビスケットを俺の口に入れた。
俺の犬修行は続いた。自分で用意していたボールを咥えては三人の元に戻り、追いかけては咥えて戻っている時に
ベルが鳴り響いた。
「残念ヘンリー様と遊んであげてると時間が早く過ぎたね」とツーチャンは言うと
「よーし、いい子だ」と食べかけのビスケットを俺の口に押し込んだ。
「いい子だ」とエルプーチンは俺の頭を撫でた。
「よしよし」と言いながらポールは俺の顎を撫でた。
ポールは俺を立たせると四人が向かい合う位置に立たせた。
「ヘンリー様、合図をしたら頭をさげて下さい」
「礼」の声に三人が頭を下げた。俺も慌てて頭を下げた。
扉が開いて各自の侍従が入ってきた。
「つい楽しくて遊びすぎてしまいました」
「お止めしないといけませんのに、楽しそうなヘンリー様を見てるとつい」
「久しぶりに楽しく過ごさせて頂きました」
そう言いながら彼らは侍従に伴われて去って行った。
皆が行ってしまうと侍従は無言で俺の上着を着替えさせた。
◇◇◇
新作の「黙ってすっこんどいたら良かったのに」現代日本風の世界の話です。ぜひ読んでみて下さい。
新作の「なにも奪わせない 番外編」をあげています。読んでみて下さい。
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