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リンゴンに纏わる話 ティーナ目線

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最近、ご近所さんとか、その知り合いとか、さらにその知り合いがうちの台所を見に来る。

必ずサリーさんが一緒に来てくれるので安心だ。


今日、見学に来た方が、隅に置いた籠のなかにいれてある、リンゴンの実を見て、

「まぁ懐かしいわ、この町でこれを見るとは」と言い始めた。

「これ、リンゴンを知ってるんですか?ここに来る途中で買ったんですが、どうやればいいのかわからなくて」

「そうでしょうね、皮と言うか、殻が固いものね」

「えぇさわると痛いし。どうやってすりおろすのか」

「ふふ、簡単なのよ。茹でればいいの」

「茹でる?」

「そう、ほら、そこのお鍋だと二個入るかしらね。リンゴンを入れて水を入れて火にかける。沸騰してしばらくするとトゲも皮も柔らかくなるから、取り出して手で皮を剥くの。それから実をすりおろしてフライパンで焼くの。パンのようになるのよ」

お話の途中で、鍋に二個いれて水を入れて火にかけた。わたしが水を宙に出して鍋に入れたとき、サリーさんの知り合いが

「えっ」と声を出したが、すぐにサリーさんが

「おろし金がないわね。うちのを持ってくるわ」と二人で出て行った。

すりおろすのは二人がやってくれた。わたしがやるのは危なくて見ていられないとか・・・・

焼くのはわたしがやったが、二人がはらはらしてしていた。

できあがりは、不格好だったが・・・・引っくり返すのに失敗したから・・・お皿にいれるとそれなりになった。

味はパン。ただ、少しリンゴンの香りがして好きな味だ。



珍しいと聞いたので、セイレンさんの所に行くときにリンゴンの実を持って行った。

実を渡した時、セイレンさんはリンゴンの事を知っていて、喜んでくれた。

今日も食事をごちそうになったが、リンゴンのパンもあった。

お姉さんたちも美味しいと食べていた。


食後、セイレンさんの部屋に呼ばれた。

「今日、リンゴンを見て思い出したんだ。ティーナに言って置きたくてね」

「うん」

「ティーナは子供だったから知らないだろうけどね、十年前まではこの国は貧しくてね。田舎の庶民は飢え死にする者が多くいたんだよ。子供を売って食べ物を買ってなんとか生き延びたり・・・・」

「・・・・・」

「ティーナは孤児院に居たんだね。わたしに言わせりゃ、運がよかった。いい孤児院にいたんだよ。まぁ今はその話じゃないね」

「リンゴンも皮を捨てずに皮を細かく刻んで混ぜて焼いたり、木の皮を混ぜたりね・・・・美味しいものだと今日初めてわかったよ」

「それがある年から、急に小麦が出回るようになったんだよ。ティーナの言う金髪極道が政治に関わるようになってからなんだよ」

「その時あの極道って子供でしょ?関係ないよ」

「王家は子供じゃいられない」

「あの王太子様は子供の頃から国の運営をやってるよ。お父様の国王様が病気がちでね・・・・十歳とおやそこらで国を背負ったんだよ。よくやって下さる。飢えなくなった。薬も手に入るようになった。

ティーナ、あんた、あのお人を極道と言ってただろう。確かにね、極道だよ。政治の道を極めてらっしゃる」

「・・・・・セイレンがそういうなら、こずるい顔だからって嫌わないようにするけど・・・・」

「あぁ、話してみるとわかるからね」

「うーーん、やってみる」と答えるとセイレンさんは

「王太子とか公爵とか言っても同じように馬鹿な男だから、ティーナが 理解わかってやるんだよ」

とすごくしみじみと言った。


◇◇◇

新作の「黙ってすっこんどいたら良かったのに」現代日本風の世界の話です。ぜひ読んでみて下さい。

新作の「なにも奪わせない 番外編」をあげています。読んでみて下さい。


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