35 / 60
エリクサーの材料 王太子目線
しおりを挟む
今から一年前、俺が保護したいと思っている薬師になぜかジルが一目惚れしたので、二人を王命で結婚させた。
ジルが本気で口説けば彼女はイチコロだったと思うが、ジルは即効で結婚したがり最速、最善の策は王命だと主張し譲らなかった。それで俺は親友の為に権力を使った。ついでにいくつかの家門同士を王命で結びつけた。これでいろいろやりやすくなった。
結婚して安心したのかジルはなんだかポヨンとしていた。これから全力で口説くらしい。うらやましい・・・いやほとほと呆れた。
そういうときに、早馬で知らせが来た。
エリクサーの材料の青雷花草の群生地が見つかったと言うのだ。それを聞いたときジルの野郎「げっ」と言った。
あのジルが「げっ」とは女がかかわると男はダメになる。
だが、ジルは彼女、ティーナの事を家族に頼んですぐに出発すると決断した。
俺も王命で結婚させてよかったと思った。そうでなければジルのやつ、遠征をしなかったと思う。公爵家に預ければ安心だし、ほんとあの判断はよかったと思っていたのだ。・・・・おめでたくも、まだ甘かったんだ、俺って・・・
ぐたぐた、だったが、俺たちは使者が乗って来た馬と、すれ違う速さで出発していた。
一刻を争うのだ。
青雷花草は、水の女神星が空に現れた時から消えるまでの約一年間、群生地に咲き続ける。その群生地はその時に、なにもない所に一夜にして現れるらしい。その知らせがあの早馬だ。
そしてその青雷花草のなかで、なぜか色を変えて白くなる花があるらしい、それがエリクサーの材料だ。
全速力で駆けつけたが、すでにリバリア王国のやつらが陣を組んで誰も寄せ付けないようにしている。
ジルは馬から飛び降りると駆け出した。最初の敵の横を通りすぎる時、剣を抜いて振った。
そのまま一直線に敵将の前に飛び出すと剣を振った。兵たちはジルの後を懸命に追って行く。
「このまま引け、無駄に死ぬな」とジルが言うと敵が二・三歩下がり、それから反対を向くと去って行った。
「半数はこのあたりを片付けろ。残りは花を見張れ。なにを探すかわかっているか?」と問いかけると
「はい。白い花です」と答えがあった。
「よし」と俺が答えた。
細かい見張りの順番は、俺が侍従と相談して決める。ジルのやつ手紙を書いている。キスとかしてやがる・・・・
花を一緒に贈るのか・・・・普通に枯れるだろ・・・・枯れ草もらってうれしいか?・・・もしかして薬師はうれしいのか?まさか
それからの一年は、やって来る他国軍を退ける日々だ。そんなに忙しいのにジルは近くの町まで馬を飛ばしてなにか買っては奥様に贈っているようだ。
こんな小さな町、王都で買うような宝石やなんかはないが、ジルが「妻への贈り物を探してる」と言うと、おばちゃんの売り子が親切に選んでやってるようだ。
ジルが贈り物を買う時、ジルはもちろん周りも幸せそうだ。結婚って言うやつは・・・・
落ち着いたらここを占領しに来るかな・・・ツーチャンが我慢すればいいんだし・・・・いや、平和が一番だ。
◇◇◇
新作の「なにも奪わせない」を投稿しています。四話完結の短い話です。ぜひ読んでみて下さい。
ジルが本気で口説けば彼女はイチコロだったと思うが、ジルは即効で結婚したがり最速、最善の策は王命だと主張し譲らなかった。それで俺は親友の為に権力を使った。ついでにいくつかの家門同士を王命で結びつけた。これでいろいろやりやすくなった。
結婚して安心したのかジルはなんだかポヨンとしていた。これから全力で口説くらしい。うらやましい・・・いやほとほと呆れた。
そういうときに、早馬で知らせが来た。
エリクサーの材料の青雷花草の群生地が見つかったと言うのだ。それを聞いたときジルの野郎「げっ」と言った。
あのジルが「げっ」とは女がかかわると男はダメになる。
だが、ジルは彼女、ティーナの事を家族に頼んですぐに出発すると決断した。
俺も王命で結婚させてよかったと思った。そうでなければジルのやつ、遠征をしなかったと思う。公爵家に預ければ安心だし、ほんとあの判断はよかったと思っていたのだ。・・・・おめでたくも、まだ甘かったんだ、俺って・・・
ぐたぐた、だったが、俺たちは使者が乗って来た馬と、すれ違う速さで出発していた。
一刻を争うのだ。
青雷花草は、水の女神星が空に現れた時から消えるまでの約一年間、群生地に咲き続ける。その群生地はその時に、なにもない所に一夜にして現れるらしい。その知らせがあの早馬だ。
そしてその青雷花草のなかで、なぜか色を変えて白くなる花があるらしい、それがエリクサーの材料だ。
全速力で駆けつけたが、すでにリバリア王国のやつらが陣を組んで誰も寄せ付けないようにしている。
ジルは馬から飛び降りると駆け出した。最初の敵の横を通りすぎる時、剣を抜いて振った。
そのまま一直線に敵将の前に飛び出すと剣を振った。兵たちはジルの後を懸命に追って行く。
「このまま引け、無駄に死ぬな」とジルが言うと敵が二・三歩下がり、それから反対を向くと去って行った。
「半数はこのあたりを片付けろ。残りは花を見張れ。なにを探すかわかっているか?」と問いかけると
「はい。白い花です」と答えがあった。
「よし」と俺が答えた。
細かい見張りの順番は、俺が侍従と相談して決める。ジルのやつ手紙を書いている。キスとかしてやがる・・・・
花を一緒に贈るのか・・・・普通に枯れるだろ・・・・枯れ草もらってうれしいか?・・・もしかして薬師はうれしいのか?まさか
それからの一年は、やって来る他国軍を退ける日々だ。そんなに忙しいのにジルは近くの町まで馬を飛ばしてなにか買っては奥様に贈っているようだ。
こんな小さな町、王都で買うような宝石やなんかはないが、ジルが「妻への贈り物を探してる」と言うと、おばちゃんの売り子が親切に選んでやってるようだ。
ジルが贈り物を買う時、ジルはもちろん周りも幸せそうだ。結婚って言うやつは・・・・
落ち着いたらここを占領しに来るかな・・・ツーチャンが我慢すればいいんだし・・・・いや、平和が一番だ。
◇◇◇
新作の「なにも奪わせない」を投稿しています。四話完結の短い話です。ぜひ読んでみて下さい。
90
お気に入りに追加
3,133
あなたにおすすめの小説

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」
私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。
そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。
でも――。そんな毎日になるとは、思わない。
2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。
私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

【完結】婚約破棄? 正気ですか?
ハリネズミ
恋愛
「すまない。ヘレンの事を好きになってしまったんだ。」
「お姉様ならわかってくれますよね?」
侯爵令嬢、イザベル=ステュアートは家族で参加したパーティで突如婚約者の王子に告げられた婚約破棄の言葉に絶句した。
甘やかされて育った妹とは対称的に幼い頃から王子に相応しい淑女に、と厳しい教育を施され、母親の思うように動かなければ罵倒され、手をあげられるような生活にもきっと家族のために、と耐えてきた。
いつの間にか表情を失って、『氷結令嬢』と呼ばれるようになっても。
それなのに、平然と婚約者を奪う妹とそれをさも当然のように扱う家族、悪びれない王子にイザベルは怒りを通り越して呆れてしまった。
「婚約破棄? 正気ですか?」
そんな言葉も虚しく、家族はイザベルの言葉を気にかけない。
しかも、家族は勝手に代わりの縁談まで用意したという。それも『氷の公爵』と呼ばれ、社交の場にも顔を出さないような相手と。
「は? なんでそんな相手と? お飾りの婚約者でいい? そうですかわかりました。もう知りませんからね」
もう家族のことなんか気にしない! 私は好きに幸せに生きるんだ!
って……あれ? 氷の公爵の様子が……?
※ゆるふわ設定です。主人公は吹っ切れたので婚約解消以降は背景の割にポジティブです。
※元婚約者と家族の元から離れて主人公が新しい婚約者と幸せに暮らすお話です!
※一旦完結しました! これからはちょこちょこ番外編をあげていきます!
※ホットランキング94位ありがとうございます!
※ホットランキング15位ありがとうございます!
※第二章完結致しました! 番外編数話を投稿した後、本当にお終いにしようと思ってます!
※感想でご指摘頂いたため、ネタバレ防止の観点から登場人物紹介を1番最後にしました!
※完結致しました!

【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる