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前公爵夫人 ジルフォード目線

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翌朝、俺は母親がいる部屋に向かった。

ノックをしてなかにはいると、やつれてろくに身仕舞いをしていない母親が座っていた。

「母上、遡って父上と離縁して下さい。公爵家を守る為には必要な事です」

「ジルフォード、母にそんな酷い仕打ちを・・・・」

「あなたは公爵夫人に酷い仕打ちをしましたよ」

「王命の重みを理解できない者が公爵家にいたという事実は消します。公爵を返上するのが一番簡単ですが、それでは公爵夫人を守る力を失います」

「許して、謝るわ。彼女にも頭を下げる・・・・だから・・・・」

「あなたの頭になんの価値もありません・・・・署名して下さい」

泣き伏した姿を見ても情けないなとしか思えなかった。貴族の矜持を見せるかと思ったが・・・・

「お願い、許して・・・・離縁なんて・・・今更実家にも戻れないわ」と泣き伏した。泣き顔は醜い。

父上の葬式泣いていた時は綺麗に泣いていたが、あれは外向きの顔だったんだな・・・・

「見苦しいですよ」とだけ口に出して残りは飲み込んだ。貴族らしさのかけらもない姿だが、指摘するのも無駄だ。

「追い出すなんて我が家の恥を広めたりしません。ずっとここにいて貰いますよ」

「本当に!・・・・ここにいていいのね」

「もちろんです」

母親は安堵の表情を浮かべて署名をした。これで公爵家から下賎な存在を追い出せた。


「それではマリールイーズ、この部屋でずっと過ごしてくれ。最初は侍女長に手伝わせるが自分の事は自分でやれるように努力して・・・・掃除も一人でできるように教えてもらって・・・入浴も一人で・・・・それから仕事として小物に刺繍をして貰いたい。食事は部屋まで運ばせるが三食は無理だね。適当に二度運ばせる」

「そんな・・・そんな・・・・・・」


うつろな眼で力なくつぶやく女を残して部屋を出た。


その後けじめだからとお金を持って訪ねて来た侯爵と伯爵にマリールイーズの処遇を、匂わせた。

あの二人は、間違えない。


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