王命なんて・・・・くそくらえですわ

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
9 / 60

客間にて 2 ジルフォード目線

しおりを挟む
俺は水を一口飲むと続けた。

「彼女のお金が公爵家に入るように工作されました。その書類には公爵家の印章が押されていました」

「「・・・・・・」」二人は息を飲んだようでなにも言えなかった。


「彼女の手元にはほんのわずかなお金しかはいらなくなり、食事も事欠く生活になったようです。というか満足に食べられない生活になりました。

その上、この請求書が彼女に送られました」とマダム・ボーテメルバの請求書を二人に見せました。

「それは・・・・お母様が作って下さるって」とフォグ夫人が言いだし

「そうです、二人に呼び出されて・・・」

「二人ってなによ。あいつに請求書を送るって言ったら賛成したでしょ」

「そりゃ、あいつは奴隷でしょ」

「スーザン!王命で決まった公爵夫人だぞ、おまえは」とマレーナ伯爵が怒鳴った。

「この請求書の宛名は家名が、入ってないがわざとなのか?」とフォグ侯爵が静かに言った。

ほう、口にしたか知らんぷりすると思ったが・・・・

「当たり前でしょ、恥ずかしくて公爵夫人だと言えないもの」

「そうよ。平民なんて払わせて貰えるだけ名誉でしょ。あの女、のりのりで多めに請求したはずよ」

あわてて前公爵夫人がマレーナ伯爵夫人の口をふさいだが、おそかった。


「レッド公爵閣下、夫人を連れて帰ります。閣下にご迷惑のないよう責任を持ちます。離縁は致しません。罪は償わせます」とマレーナ伯爵は俺に頭を下げた。

「レッド公爵閣下、わたくしも夫人を連れて戻ります。わたくしも離縁をせず責任を取りますし、必ず本人に罪を償わせます」とフォグ侯爵も頭を下げた。

「ありがとう・・・・あっ金はいらない。金の問題ではない。印章の事もこの公爵家の問題だから・・・・しばらく忙しくなるが、そのうちに・・・・」

「かしこまりました」

「かしこまりました。義兄上。いえ、フォグ侯爵殿、先に馬車に乗って下さい。わたくしは後で行きます」

「いや、そちらが先に・・・・夫人が辛そうだ」

「ありがとうございます」

そういうとマレーナ伯爵は夫人を助けて部屋を出た。

伯爵はわざとドアを開けっ放しにした。すぐ夫人の声が聞こえた。

「あなた、怖かったわ。あの女のせいで・・・・でもよかったあなたがわかってくれて」

伯爵は答えなかった。二人は遠ざかって行った。


はっとフォグ夫人は頭を上げて侯爵を見た。希望の光が目に浮かんでいる。

しばらくすると二人は出て行った。



「母上、後は公爵家の問題だけですね」

「母と呼んでくれるの?」

「面倒なんでそう呼ぶだけです。まぁこの家の問題は明日にしましょう。明日朝食の後で話しましょう」



しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。 「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」 「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」  私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。  そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。  でも――。そんな毎日になるとは、思わない。  2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。  私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

【完結】妹に婚約者まであげちゃったけれど、あげられないものもあるのです

ムキムキゴリラ
恋愛
主人公はアナスタシア。妹のキャシーにほしいとせがまれたら、何でも断らずにあげてきた結果、婚約者まであげちゃった。 「まあ、魔術の研究やりたかったから、別にいいんだけれどね」 それから、早三年。アナスタシアは魔術研究所で持ち前の才能を活かしながら働いていると、なんやかんやである騎士と交流を持つことに……。 誤字脱字等のお知らせをいただけると助かります。 感想もいただけると嬉しいです。 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...