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22 お揃いのドレス
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二人は優雅に踊りだした。判定前は二人は仲が良くダンスの練習もしていたのだ。
あの頃はレベッカは踊りながら笑いかけ、たまに靴を踏んでは『ごめんあそばせ』とふざけて言うと笑い転げていた。
それが、顔ははっきりとこちらを向いているが、視界に入っているはずのリチャードの顔をはっきりと見ない。徹底的な拒否。だが、リチャードは諦めない。
「やっぱり、レベッカとは踊りやすいな」「自慢の妹をまた見せびらかせる」と踊りながら言葉を紡ぐ。レベッカはなんの反応も示さないが、ふいに
「少し右に。お揃いが踊ってますわ。並んだら素敵ですわ」と言った。
「並ぶ?お揃いと・・・いいのか」
「もちろんですわ。同じ趣味ですもの」
ほんとうに、同じデザインだった。色違いだし、レースの種類は違うが同じだった。
リチャードはいやじゃないのか?と疑いながらも、レベッカの言葉に従って横で踊った。
踊り終わってからも、二組の男女は並んでいた。
そして、レベッカが声をかけた。
「そのお色も素敵ね」
気の毒なその令嬢は、びっくりした。
「ありがとうございます」と答えてレベッカたちを見て、もっとびっくりした。
いかにも高位貴族といった美しい二人だったから。
そして、すごく高そうなドレスと素敵だなと見て、もっともっとびっくりした。
令嬢はおもわず
「わーーお揃い。すごーーい」とはしゃいだ。するとレベッカは
「そうなのよ。お揃いなのよ。その色も素敵。どこで買ったの?」と声を弾ませた。
「マダム・ドレスってお店」と聞いて
「ありがとう。マダム・ドレスって言うのね」と言うとその場から離れた。
その後、残された二人を令嬢たちが取り囲む気配がして、レベッカは薄く笑った。
リチャードはレベッカと一緒に国王のもとへ向かった。
「本日はすばらしい夜でございますね」とリチャードが言い、レベッカは黙ってカーテシーをした。
「ヘンリーは一緒じゃないのね。仕方ないわね」と王妃が言うと
「親公認と思ってました」とレベッカが答えた。
「いや、そんなことは・・・」と国王が呟いた。
「そうですわ・・・婚約した意味が分からない程」と王妃も国王の方を向いて言った。
その時、サクラが声をかけた。
「レベッカ嬢。また会えましたね。なんてわざとらしいですね。会えるのを期待しておりました」
「サクラ様」とだけ言うとレベッカは笑った。
「一曲よろしいですか?」とサクラが手を差し出すとレベッカは嬉しげにその手を取った。
リチャードの存在は忘れられた。
二人は息のあったターンから始めて、フロアを自由自在に使って踊った。
サクラは後ろが見えているような動き、鋭くてそれでいて優雅だった。
お揃いの二人組は
「同じ衣装とは思えないね」「やっぱ同じ衣装じゃないよね」「値段が違うんだよ」とか平和に話していて、別の意味で会場の注目を集めていた。
いつのまにか、お揃いは二人は令嬢に囲まれて、この衣装を購入した経緯を話して聞かせていた。
「マダム・ドレスってお店でね、いろいろな色があったのよ。これは紺色で地味なんだけど、長く着られる色でしょ?色はね。ピンクが綺麗だった。オレンジとか緑に黄色もあった。水色も素敵だった。それがね、なんだか間違えてお店に出したみたいで、お金を払っている時、慌て引っ込めてた。返してって言われそうだったから、急いでお店を出たのよ」
令嬢たちは、長く着られるという下りで頷く者も、えっと驚く者もいた。
そしてマダム・ドレスと言う名前は人々に浸透した。
サクラは
「レベッカショウサ。サクラです」と言った。
「まえから知っているような言い方ですね。たしかにその声は・・・でもショウサと言うのがわかりません」
レベッカのその声を聞きながら、サクラはレベッカを優しく見つめた。
踊り終わるとサクラはレベッカをバルコニーに誘った。
「レベッカショウサ。わたしはあなたのことを最後にそう呼びました。それまでは中尉と呼んでいました。レベッカとつけずにチュウイと・・・チュウイ。前世です」
「前世の話です。チュウイ・・・この貴族の世界はしっくり来ますか?」
「えぇ他は知らないですが・・・なぜか知らないことを知ってる時があって」
「それはどんな感じですか?」
「公爵令嬢として生活してました。別の公爵家です。矜持とか皮肉、あてこすり。上手に交わしたり、こちらから攻撃したり・・・とてもやりやすい・・・質問に答えると。しっくり来ます」
「レベッカ・キルメニイ」
「それ・・・そう呼ばれてた・・・え?」
「かなり思い出しています。マルチネス王国へ一緒に行きましょう。おふねが待っています」
「オフネ・・・サクラ」とレベッカは首を傾げたが
「レベッカ・キルメニイ。いいえ、しばらくここにいるわ。このわたしを・・・このわたくしを無能扱いした報いを受けて貰うわ」
「わかりました。レベッカ。わたしがこちらに来ます」とサクラは言うと
「わたしの大事な人はあなた、レベッカでした。今も、これからもレベッカです。わたしは」と言うと手をとってくちづけをした。
それから、サクラはリチャードの元へレベッカを送ると、適当に令嬢とダンスをした。
サクラと別れたレベッカは、更に冷たい目になっていたが、リチャードは機嫌をとるように
「どうするかい?帰るなら一緒に」とレベッカに囁いた。その時、あるご婦人のドレスのウエストの色が変わった。
え?と見ると縫い目がパックリと開いている。
ある軽はずみな令嬢が、言い立てた。
「大変、ドレスが破れてる」
黙っていれば、何事もなかったことに出来るのに・・・回りがそのご婦人に注目してしまった。
運の悪いことにアンダードレスが可愛い花柄だったせいで、その場所が目立ってしまった。
一緒にいた男性が、腰をとってピタリと体を寄せようとしたが、女性の体格は標準より立派だった。
その婦人はパーカー子爵夫人。イザベル・フォレノワール公爵令嬢の取り巻き、ガーベラ・パーカーの母親だった。
彼女は半泣きで部屋から出て行った。このドレスはマダム・ボーテ・メルバの物で、フォレノワール家の口利きで、やっと注文出来た大事なドレスだった。
それが、こんな恥をさらすことになるなど、絶対に仕返しをしてやる、慰謝料もとってやるとパーカー子爵夫人は決心した。
パーカー子爵夫人が退場して行くのを見ながらレベッカはリチャードにエスコートされて馬車に向かった。
『レベッカ。先程は・・・マダム・ドレスからあのドレス回収しておきました。おやすみなさい』
『さすが、サクラ。ありがとう。おやすみなさい』
レベッカはなんとなくワクワクして寝るのがもったいないと、思いながらぐっすりと眠った。
あの頃はレベッカは踊りながら笑いかけ、たまに靴を踏んでは『ごめんあそばせ』とふざけて言うと笑い転げていた。
それが、顔ははっきりとこちらを向いているが、視界に入っているはずのリチャードの顔をはっきりと見ない。徹底的な拒否。だが、リチャードは諦めない。
「やっぱり、レベッカとは踊りやすいな」「自慢の妹をまた見せびらかせる」と踊りながら言葉を紡ぐ。レベッカはなんの反応も示さないが、ふいに
「少し右に。お揃いが踊ってますわ。並んだら素敵ですわ」と言った。
「並ぶ?お揃いと・・・いいのか」
「もちろんですわ。同じ趣味ですもの」
ほんとうに、同じデザインだった。色違いだし、レースの種類は違うが同じだった。
リチャードはいやじゃないのか?と疑いながらも、レベッカの言葉に従って横で踊った。
踊り終わってからも、二組の男女は並んでいた。
そして、レベッカが声をかけた。
「そのお色も素敵ね」
気の毒なその令嬢は、びっくりした。
「ありがとうございます」と答えてレベッカたちを見て、もっとびっくりした。
いかにも高位貴族といった美しい二人だったから。
そして、すごく高そうなドレスと素敵だなと見て、もっともっとびっくりした。
令嬢はおもわず
「わーーお揃い。すごーーい」とはしゃいだ。するとレベッカは
「そうなのよ。お揃いなのよ。その色も素敵。どこで買ったの?」と声を弾ませた。
「マダム・ドレスってお店」と聞いて
「ありがとう。マダム・ドレスって言うのね」と言うとその場から離れた。
その後、残された二人を令嬢たちが取り囲む気配がして、レベッカは薄く笑った。
リチャードはレベッカと一緒に国王のもとへ向かった。
「本日はすばらしい夜でございますね」とリチャードが言い、レベッカは黙ってカーテシーをした。
「ヘンリーは一緒じゃないのね。仕方ないわね」と王妃が言うと
「親公認と思ってました」とレベッカが答えた。
「いや、そんなことは・・・」と国王が呟いた。
「そうですわ・・・婚約した意味が分からない程」と王妃も国王の方を向いて言った。
その時、サクラが声をかけた。
「レベッカ嬢。また会えましたね。なんてわざとらしいですね。会えるのを期待しておりました」
「サクラ様」とだけ言うとレベッカは笑った。
「一曲よろしいですか?」とサクラが手を差し出すとレベッカは嬉しげにその手を取った。
リチャードの存在は忘れられた。
二人は息のあったターンから始めて、フロアを自由自在に使って踊った。
サクラは後ろが見えているような動き、鋭くてそれでいて優雅だった。
お揃いの二人組は
「同じ衣装とは思えないね」「やっぱ同じ衣装じゃないよね」「値段が違うんだよ」とか平和に話していて、別の意味で会場の注目を集めていた。
いつのまにか、お揃いは二人は令嬢に囲まれて、この衣装を購入した経緯を話して聞かせていた。
「マダム・ドレスってお店でね、いろいろな色があったのよ。これは紺色で地味なんだけど、長く着られる色でしょ?色はね。ピンクが綺麗だった。オレンジとか緑に黄色もあった。水色も素敵だった。それがね、なんだか間違えてお店に出したみたいで、お金を払っている時、慌て引っ込めてた。返してって言われそうだったから、急いでお店を出たのよ」
令嬢たちは、長く着られるという下りで頷く者も、えっと驚く者もいた。
そしてマダム・ドレスと言う名前は人々に浸透した。
サクラは
「レベッカショウサ。サクラです」と言った。
「まえから知っているような言い方ですね。たしかにその声は・・・でもショウサと言うのがわかりません」
レベッカのその声を聞きながら、サクラはレベッカを優しく見つめた。
踊り終わるとサクラはレベッカをバルコニーに誘った。
「レベッカショウサ。わたしはあなたのことを最後にそう呼びました。それまでは中尉と呼んでいました。レベッカとつけずにチュウイと・・・チュウイ。前世です」
「前世の話です。チュウイ・・・この貴族の世界はしっくり来ますか?」
「えぇ他は知らないですが・・・なぜか知らないことを知ってる時があって」
「それはどんな感じですか?」
「公爵令嬢として生活してました。別の公爵家です。矜持とか皮肉、あてこすり。上手に交わしたり、こちらから攻撃したり・・・とてもやりやすい・・・質問に答えると。しっくり来ます」
「レベッカ・キルメニイ」
「それ・・・そう呼ばれてた・・・え?」
「かなり思い出しています。マルチネス王国へ一緒に行きましょう。おふねが待っています」
「オフネ・・・サクラ」とレベッカは首を傾げたが
「レベッカ・キルメニイ。いいえ、しばらくここにいるわ。このわたしを・・・このわたくしを無能扱いした報いを受けて貰うわ」
「わかりました。レベッカ。わたしがこちらに来ます」とサクラは言うと
「わたしの大事な人はあなた、レベッカでした。今も、これからもレベッカです。わたしは」と言うと手をとってくちづけをした。
それから、サクラはリチャードの元へレベッカを送ると、適当に令嬢とダンスをした。
サクラと別れたレベッカは、更に冷たい目になっていたが、リチャードは機嫌をとるように
「どうするかい?帰るなら一緒に」とレベッカに囁いた。その時、あるご婦人のドレスのウエストの色が変わった。
え?と見ると縫い目がパックリと開いている。
ある軽はずみな令嬢が、言い立てた。
「大変、ドレスが破れてる」
黙っていれば、何事もなかったことに出来るのに・・・回りがそのご婦人に注目してしまった。
運の悪いことにアンダードレスが可愛い花柄だったせいで、その場所が目立ってしまった。
一緒にいた男性が、腰をとってピタリと体を寄せようとしたが、女性の体格は標準より立派だった。
その婦人はパーカー子爵夫人。イザベル・フォレノワール公爵令嬢の取り巻き、ガーベラ・パーカーの母親だった。
彼女は半泣きで部屋から出て行った。このドレスはマダム・ボーテ・メルバの物で、フォレノワール家の口利きで、やっと注文出来た大事なドレスだった。
それが、こんな恥をさらすことになるなど、絶対に仕返しをしてやる、慰謝料もとってやるとパーカー子爵夫人は決心した。
パーカー子爵夫人が退場して行くのを見ながらレベッカはリチャードにエスコートされて馬車に向かった。
『レベッカ。先程は・・・マダム・ドレスからあのドレス回収しておきました。おやすみなさい』
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