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17 あの日のこと
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公爵はレベッカの判定の日を忘れたことはない。あの日の衝撃と悲しみと保身を。
ウィリアム・ブルークリフ公爵は、魔力の多さを買われて公爵家のティナリーの婿となった。
彼は公爵家に魔力の多い子供をもたらすのを期待されているのを理解していた。
だが、ティナリーに惹かれてもいた。だから自分の結婚を幸せなものを考えていた。
一男、二女に恵まれた。長男の判定結果にほっとした。長女は判定前から、教えてもいない魔法で遊んでいた。
その長女の判定はまさかの魔力なしだった。
自分の存在を否定されたと感じた。魔力なしの父親・・・婿として役立たず・・・貴族としても恥だ。
それで、レベッカに冷たい言葉を浴びせ・・・いや罵倒した。
涙ぐんだ目で見られると、自分の立場の危うさを突きつけられたようで、手がでてしまったこともある。
その度に後悔した。辛かった。
気がついたら、レベッカは自分を冷たい目で見ていた。温度のないその目に自分のやったことが、どんなに罪に深いことかわかったが、妻の手前、魔力なしを自分の娘として扱うわけにいかなかった。
だが、今になって娘は石版を光らせたと聞かされた。
それに魔法も自分で工夫して上達、いや誰よりも優れた使い手になっている。
そしてお茶会で石版を誰よりも光らせたことを、ステラが黙っていたことが情けなかった。
そうなのだステラは、わたしたちや、リチャードの影響でレベッカを見下していた。その相手の魔力が多いことを認められないのも無理もないが、もともと血が繋がった姉妹だ。ちょっとした焼き餅だ。すぐに仲のいい姉妹になれるだろう。
可愛い、お姫様のレベッカが戻って来るのだ。
公爵夫人は涙が止まらなかった。そしてレベッカに言われた言葉が頭のなかでぐるぐる回っていた。
「お気楽に泣けるなんて羨ましい。わたしは泣けばぶたれて部屋に放り込まれていた」
それを聞いた時、そんなひどいことを誰がやったのだ!と思ったが、それをやっていたのは自分だった。
レベッカに魔力がないとわかった時、そんな子を生んだ自分を非難するお母様の顔が浮かんだ。
お母様はわたしより妹を可愛がっていた。わたしのほうが魔力も高いし魔法も上手。公爵家を継ぐにふさわしかった。
なのにお母様は魔法ができるからなに?そんなに価値がある?貴族に大事なのは社交をして家の名誉を高めることよと言って、お茶会から帰ると『あそこでみっともない反応をした』『笑い方が下品だった』『あの皮肉に気付かなかったの?あきれた!』そんな言葉を浴びせられていた。
そして妹が結婚する前に母娘で旅行したいと出かけた先で、事故死した。正直、ほっとした。
でも、なにをする時でも、母はどう言うだろう。母に文句を言われないようにとか、妹にくすくす笑われないようにとか、考えてしまう。
だから、自慢の娘だったレベッカの魔力がなかった時、強く当たってしまった。
ウィリアムが厳しいことを言った時、レベッカは涙を浮かべてわたくしに助けを求めた。抱きしめて慰めたかったのに、公爵家の者として恥ずかしくない態度を取るべきだと思ってしまったのだ。
あの娘は教えなくとも本を読めるようになったし、甘えん坊だったステラの面倒もよく見てくれたし、魔法で縫いぐるみにダンスをさせたりとか、才能。そう、才能があったのに・・・わたくしたちは無能だと決めつけた・・・
あの娘が石版を光らせたことを、ステラがわたくしたちに言わなかったのはどうしてなのだろう。公爵家の汚点がなくなったというのに、でもお茶会の時に誰もそのことに触れなかったのはどうして?おめでとう、良かったですねって言う場面なのに・・・
王室だって、石版の件を知っているから婚約を申し込んだはずなのに、一言も教えてくれなかった。魔力のことを知っていたらもっと強気で応対出来たのに、引き取ってくれてありがたいと思ってしまった。
だめだ。こんなことでは。妹だったら、もっと上手に対応しただろうに・・・
ステラがちゃんと報告していれば、ステラが下らない焼き餅を焼いたからだ。自分より魔力の多い姉を妬むから・・・ほんと、妹と言うのは・・・姉の邪魔をする。
公爵夫人はそういったことを思いながら、レベッカに謝って仲直りをしようと計画を立て始めた。マダム・ボーテ・メルバでドレスを作ろう。どんなのが好きかお喋りしながら選んで、そしてそれを着たレベッカと二人で出かけよう。姉と母。素敵な組み合わせだ。
人気のカフェに行って女同士のお喋りをしよう。
いつしか、涙は乾いていた。ティナリーの描く未来は明るかった。
ウィリアム・ブルークリフ公爵は、魔力の多さを買われて公爵家のティナリーの婿となった。
彼は公爵家に魔力の多い子供をもたらすのを期待されているのを理解していた。
だが、ティナリーに惹かれてもいた。だから自分の結婚を幸せなものを考えていた。
一男、二女に恵まれた。長男の判定結果にほっとした。長女は判定前から、教えてもいない魔法で遊んでいた。
その長女の判定はまさかの魔力なしだった。
自分の存在を否定されたと感じた。魔力なしの父親・・・婿として役立たず・・・貴族としても恥だ。
それで、レベッカに冷たい言葉を浴びせ・・・いや罵倒した。
涙ぐんだ目で見られると、自分の立場の危うさを突きつけられたようで、手がでてしまったこともある。
その度に後悔した。辛かった。
気がついたら、レベッカは自分を冷たい目で見ていた。温度のないその目に自分のやったことが、どんなに罪に深いことかわかったが、妻の手前、魔力なしを自分の娘として扱うわけにいかなかった。
だが、今になって娘は石版を光らせたと聞かされた。
それに魔法も自分で工夫して上達、いや誰よりも優れた使い手になっている。
そしてお茶会で石版を誰よりも光らせたことを、ステラが黙っていたことが情けなかった。
そうなのだステラは、わたしたちや、リチャードの影響でレベッカを見下していた。その相手の魔力が多いことを認められないのも無理もないが、もともと血が繋がった姉妹だ。ちょっとした焼き餅だ。すぐに仲のいい姉妹になれるだろう。
可愛い、お姫様のレベッカが戻って来るのだ。
公爵夫人は涙が止まらなかった。そしてレベッカに言われた言葉が頭のなかでぐるぐる回っていた。
「お気楽に泣けるなんて羨ましい。わたしは泣けばぶたれて部屋に放り込まれていた」
それを聞いた時、そんなひどいことを誰がやったのだ!と思ったが、それをやっていたのは自分だった。
レベッカに魔力がないとわかった時、そんな子を生んだ自分を非難するお母様の顔が浮かんだ。
お母様はわたしより妹を可愛がっていた。わたしのほうが魔力も高いし魔法も上手。公爵家を継ぐにふさわしかった。
なのにお母様は魔法ができるからなに?そんなに価値がある?貴族に大事なのは社交をして家の名誉を高めることよと言って、お茶会から帰ると『あそこでみっともない反応をした』『笑い方が下品だった』『あの皮肉に気付かなかったの?あきれた!』そんな言葉を浴びせられていた。
そして妹が結婚する前に母娘で旅行したいと出かけた先で、事故死した。正直、ほっとした。
でも、なにをする時でも、母はどう言うだろう。母に文句を言われないようにとか、妹にくすくす笑われないようにとか、考えてしまう。
だから、自慢の娘だったレベッカの魔力がなかった時、強く当たってしまった。
ウィリアムが厳しいことを言った時、レベッカは涙を浮かべてわたくしに助けを求めた。抱きしめて慰めたかったのに、公爵家の者として恥ずかしくない態度を取るべきだと思ってしまったのだ。
あの娘は教えなくとも本を読めるようになったし、甘えん坊だったステラの面倒もよく見てくれたし、魔法で縫いぐるみにダンスをさせたりとか、才能。そう、才能があったのに・・・わたくしたちは無能だと決めつけた・・・
あの娘が石版を光らせたことを、ステラがわたくしたちに言わなかったのはどうしてなのだろう。公爵家の汚点がなくなったというのに、でもお茶会の時に誰もそのことに触れなかったのはどうして?おめでとう、良かったですねって言う場面なのに・・・
王室だって、石版の件を知っているから婚約を申し込んだはずなのに、一言も教えてくれなかった。魔力のことを知っていたらもっと強気で応対出来たのに、引き取ってくれてありがたいと思ってしまった。
だめだ。こんなことでは。妹だったら、もっと上手に対応しただろうに・・・
ステラがちゃんと報告していれば、ステラが下らない焼き餅を焼いたからだ。自分より魔力の多い姉を妬むから・・・ほんと、妹と言うのは・・・姉の邪魔をする。
公爵夫人はそういったことを思いながら、レベッカに謝って仲直りをしようと計画を立て始めた。マダム・ボーテ・メルバでドレスを作ろう。どんなのが好きかお喋りしながら選んで、そしてそれを着たレベッカと二人で出かけよう。姉と母。素敵な組み合わせだ。
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