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11 脱出
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三人が休みの日まで、オオヤナギは部屋に隠れていた。
門をでる方法は考えに考えた。単純に三人で出て、二人で戻るのは、面倒になりそうだった。
三人に見せかけた四人が出て、三人が戻る。これしかないが、どうやって?
三人は仕事の合間に門の出入りを観察した。そして方法を一つ見つけた。
三人から借りた服を着て、オオヤナギはビルとケントと三人で歩いた。普段通り喋った。
借りた服とペギーからのマントの代金は餞別だと受け取ってもらえなかった。
ジョンは三人から少し遅れて、歩いた。
門に向かって歩く者にさりげなく近づき、ひと塊になる。ビルが外出許可証を出そうとして戸惑った。後ろの列から「なんだ」とか「速くしろ」とか聞こえる。さっとオオヤナギとケントが外に出た。
あわてた門番に止められて、ケントが戻り
「すみません、うっかり」と謝ると
「二人出ただろ。もう一人は?」
「ここです」と合流したジョンが手をあげる。
「俺たちいつも三人です」とビルが三人分の許可証を出した。
門番の頭にはいろんな疑問が湧いたが、
「いつまで待たせるんだ」「まだか」の声にそれも消えた。
三人は門を出て、ゆっくりと歩いた。なんの騒ぎも起きていない。
オオヤナギは無事に、姿を消したようだった。
三人は広場で肉を食べながら、黙ってお互いを見た。いろいろな思いがあったがうまく表現できない。
わかっているのは、オオヤナギはとてつもないやつで、三人は多分、とてつもないことに一役買ったと言う事だ。
その頃、オオヤナギは西に向かう馬車に揺られていた。この馬車の護衛として冒険者パーティが乗っていた。
四人組の冒険者で腰に武器。それとは別に大きな盾を持った男、弓を持った男、大剣を背負った男、杖を持った女だった。
「ねぇあなた、冒険者」と女がオオヤナギに話しかけて来た。
「うん、登録だけね」とオオヤナギが答えると
「あたしは、イジュ、回復とか支援をやってるの。あなたの名前は」
「僕はルーク・・・取り柄は・・・ない」
「そうなんだ。あたしが回復できるから安心よ」とイジュがにこりと笑った。
「イジュの悪いくせが出たな、いい男を見るとすぐに」と盾も背負った男が話に加わった。
「おれはサミーだ」ついで
「弓を持っているのが、デイビー。大剣がクロスだ」
「よろしく、ルーク」「よろしくな」と二人も話に加わった。
オオヤナギはルークという名前で冒険者登録をしていた。
初めて他人からルークと呼びかけられた。
『今日からほんとの異世界ライフだ』とルークは椅子の上で座り直しながら思った。
四人は王都を拠点に活動をしているが、この馬車の終点にあるダンジョンで一稼ぎしようと思っていたら、ちょうど護衛の依頼があったそうだ。交通費は節約できるし、依頼料は貰えるし・・・確かにいい事だ。
「今晩、泊まる町はどんな所かな?」
「うん、近くに寂れた鉱山があって、そこからでるクズ宝石を使った装身具を扱う店が多い。意外に人気があるから王都からも仕入れに来てるね」
「ふーーん、装身具は関係ないね」とルークが言うと
「確かに」とサミーが答えた。
そこに馭者の声がした。
「右から来る」
護衛四人は立ち上がった。それから窓に板をはめて行く。
それから、外に出ると中からかんぬきを止めるよう言うと、馬車の扉を閉めた。
門をでる方法は考えに考えた。単純に三人で出て、二人で戻るのは、面倒になりそうだった。
三人に見せかけた四人が出て、三人が戻る。これしかないが、どうやって?
三人は仕事の合間に門の出入りを観察した。そして方法を一つ見つけた。
三人から借りた服を着て、オオヤナギはビルとケントと三人で歩いた。普段通り喋った。
借りた服とペギーからのマントの代金は餞別だと受け取ってもらえなかった。
ジョンは三人から少し遅れて、歩いた。
門に向かって歩く者にさりげなく近づき、ひと塊になる。ビルが外出許可証を出そうとして戸惑った。後ろの列から「なんだ」とか「速くしろ」とか聞こえる。さっとオオヤナギとケントが外に出た。
あわてた門番に止められて、ケントが戻り
「すみません、うっかり」と謝ると
「二人出ただろ。もう一人は?」
「ここです」と合流したジョンが手をあげる。
「俺たちいつも三人です」とビルが三人分の許可証を出した。
門番の頭にはいろんな疑問が湧いたが、
「いつまで待たせるんだ」「まだか」の声にそれも消えた。
三人は門を出て、ゆっくりと歩いた。なんの騒ぎも起きていない。
オオヤナギは無事に、姿を消したようだった。
三人は広場で肉を食べながら、黙ってお互いを見た。いろいろな思いがあったがうまく表現できない。
わかっているのは、オオヤナギはとてつもないやつで、三人は多分、とてつもないことに一役買ったと言う事だ。
その頃、オオヤナギは西に向かう馬車に揺られていた。この馬車の護衛として冒険者パーティが乗っていた。
四人組の冒険者で腰に武器。それとは別に大きな盾を持った男、弓を持った男、大剣を背負った男、杖を持った女だった。
「ねぇあなた、冒険者」と女がオオヤナギに話しかけて来た。
「うん、登録だけね」とオオヤナギが答えると
「あたしは、イジュ、回復とか支援をやってるの。あなたの名前は」
「僕はルーク・・・取り柄は・・・ない」
「そうなんだ。あたしが回復できるから安心よ」とイジュがにこりと笑った。
「イジュの悪いくせが出たな、いい男を見るとすぐに」と盾も背負った男が話に加わった。
「おれはサミーだ」ついで
「弓を持っているのが、デイビー。大剣がクロスだ」
「よろしく、ルーク」「よろしくな」と二人も話に加わった。
オオヤナギはルークという名前で冒険者登録をしていた。
初めて他人からルークと呼びかけられた。
『今日からほんとの異世界ライフだ』とルークは椅子の上で座り直しながら思った。
四人は王都を拠点に活動をしているが、この馬車の終点にあるダンジョンで一稼ぎしようと思っていたら、ちょうど護衛の依頼があったそうだ。交通費は節約できるし、依頼料は貰えるし・・・確かにいい事だ。
「今晩、泊まる町はどんな所かな?」
「うん、近くに寂れた鉱山があって、そこからでるクズ宝石を使った装身具を扱う店が多い。意外に人気があるから王都からも仕入れに来てるね」
「ふーーん、装身具は関係ないね」とルークが言うと
「確かに」とサミーが答えた。
そこに馭者の声がした。
「右から来る」
護衛四人は立ち上がった。それから窓に板をはめて行く。
それから、外に出ると中からかんぬきを止めるよう言うと、馬車の扉を閉めた。
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