神子の余分

朝山みどり

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08 町を見学

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門を出て、邪魔にならない隅に立つとオオヤナギは下を向いて待った。

「早いな」と声をかけられた。

「あぁ」

「歩きながら話そうか」

「その服で来たのか」

「他に服がなくて」とオオヤナギは答えると

「よし、先ず服を買いに行こう」

「俺はケント。お前は?」

「オオヤナギ」

「ジョンだ、オオヤナギ」

「ビルだ。治してくれてありがとな」と三人目が答えた。


露天の店が準備をしていた。その一軒で立ち止まり

「ここだ」と言われてオオヤナギは驚いた。

「古着?」

「当たり前だ」

「おい、この兄さんに着せたいのを選んでくれ」と開店準備の手伝いをしていた赤毛の娘に声をかけた。

にっこり笑ってやって来ると

「ペギーよ。そんな服着てこの店に来た人は、初めてよ」と神官見習いの制服をからかわれた。

「他に持ってなくてね」と答えると


生成りのシャツ。茶色のスボン。濃い灰色の上着を持って来た。

「どう、その金茶色の髪を引き立てるわ」

「なるほど、ここで着替えさせてくれ」

支払いを済ませ、服を受け取ると、柱の間に吊られた布の後ろで着替えた。

「バッグ売ってる店、知ってる?」

「ここにもあるわよ」とペギーは生成りの布バッグを見せた。

「それを」とオオヤナギは微笑みかけた。



「おぉやっぱり色男だね」とケントが言うと

「まったくだ。だけど色男をみても腹はふくれん。なんか食いに行こうぜ」

「悪い、待たせたな」とオオヤナギが言うと、

「いいって事よ」とジョンはオオヤナギとビルの背中を押して、広場のほうへ歩き出した。



串に刺した肉と、肉をパンに挟んだ物を食べながら、果実水を飲んだ。

食べながらケントが

「オオヤナギって背が高くてかっこいいのに、どうして自信なさそうなんだ?ずっと下向いてるし」

「そうか・・・・気がつかなかった」とオオヤナギは答えた。『仕方ないよな、前の世界からだし』と思いながら。


王宮の門の手前で、彼らと別れてオオヤナギは一人で戻って来た。

別れ際にケントは

「笑え、色男」

「そうだ、もったいないぞイケメン」とビルが

「笑ってろ。色男。またな」とジョンが肩を叩いた。




門をはいるとすぐに道を外れて植え込みの陰に行った。そこで制服に着替えると部屋に戻った。



町を歩き回ったけど、普段より足の疲れは少なかった。

「まったくこきつかってくれますね。でももうすぐ終わりだ」と言いながら、柔軟をやり、魔力を動かした。

次の休みは冒険者ギルドで登録してあれを食べて、それからと思っていたら眠ってしまった。



今日のミツルギはいつもより調子が悪いとオオヤナギは思った。こうなると八つ当たりが来る。

うんざりして、出来ては落ちる水を見ていたが、水の玉が最初の頃より小さくなっている。

教えている魔法士も神官もなにも言わない。気づいているのか黙っているのか・・・・・八つ当たりされるのはオオヤナギだ。なにか対策は・・・・

そうだ。空間収納は離れた場所にホールを作れる。それなら離れた場所に水を作れないか?

「ってくれ」「余分、なにぼんやりしてる。神官長にこの手紙を届けろ」と王子に怒鳴られた。

「失礼しました」と深く頭を下げて詫びると、ひざまずいて両手でうやうやしく、手紙を受け取った。

「それでは神子様、失礼いたします」と言うとその場を去った。


手紙の内容は推察がつく。神子の疲れが溜まっているのでしばらく王宮にとどまるというものだ。

神子は神殿に所属しているが、召喚時、王子が強引に神子の部屋を王宮に決めた。その後神殿にも部屋を設けて、交互にと決めたが、王宮に滞在するほうが多い。

そこにこういう手紙を持っていけば神官長の機嫌が悪くなり、手紙を持って行ったオオヤナギ相手にぐちぐち文句を言い続けて帰れなくなる。

どうせ遅くなるなら急いで持っていくこともないやと、オオヤナギはのんびり歩いた。

水を出しながら歩くことはできないが、収納はどうだ?

収納のホールを思い切り遠くに出してみた。十メートル位前に出現した。道の小石をみると吸い込まれた。

出来たと思い、石を吸い込みながら歩いた。



神官長から開放された時は日が沈んでいた。


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