神子の余分

朝山みどり

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02 神子の余分はがさつな男

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部屋の準備が出来るまでお茶でも、と入った部屋で、テーブルに向かいあわせに座ると

「わたくしは神官のアーサー・ブラウン。あなたの名前は」

「僕はオオヤナギ・ライトです」

「オオヤナギですね」

「はい」

「では、オオヤナギ、突然の事で驚いたとおもいますが、我々も驚きました。一人余分がいたからです」

勝手に呼んどいて余分だと、オオヤナギは思ったが黙っておく。

「まぁ来たものは返せませんので面倒は見ます」

「帰れない?」

「はい、帰れません。返せるなら返したいですけど・・・」

帰れないのか・・・この居心地の悪い所で・・・・ミツルギもいるし・・

「明日、神子様の魔力などを 鑑定はからせていただきます。ついでにオオヤナギも鑑定はかります。いいですね」

「はい」

「なにか質問は?」

「いえ」

「では行きましょうか。そろそろ準備が出来たでしょう」

お茶、出なかったよ!!と思いながらオオヤナギはブラウンさんの後ろについて行った。



案内された部屋はトイレと浴室があり、お湯も使える。オオヤナギは浴室の鏡に写った自分の顔を見て、叫んでしまった。ブラウンさんが、あわてて浴室に入ってきた。

「なんでもない、ちょっと」と答えたオオヤナギをブラウンさんは怪訝な顔で見たが、なにも言わなかった。


魔力全般について知っておきたいと思ったオオヤナギは、図書室に行きたいとブラウンさんに頼んだ。

少し考えたブラウンさんは、

「いいでしょう。許可します。図書室まで一緒に行きましょう」

「お願いします」

「その格好で歩き回るのは禁止です。そこに入っている服に着替えて下さい」とクローゼットを指し示した。


服は、ゆったりした灰色のズボン。白いシャツ。膝丈の上着は水色だった。

オオヤナギは鏡を見た。写る顔はミツルギの顔だ。茶色の髪、茶色の目、整った目鼻立ち。背が高く当然足も長い。

本来の感覚より手足が遠い所にあるので歩くのが大変で、ギクシャクした。

服のボタンを留めるのも難しかった。

服を着て現れたオオヤナギを見て、

「それは神官見習いの制服です。いつもそれを着て下さい」




図書室で受付と話をしてブラウンさんは帰って行った。

オオヤナギは教えられた入門、初級のあたりで何冊か選ぶと椅子に座って読んだ。椅子に座るときガタンを大きな音がして、首をすくめた。

書いてある通りにおへその下あたりにもわもわしたものを感じたり、手の平が暖かくなるのを感じたので余分でも異世界チートはあるかも知れない。

気づくと外が暗くなっていたので、オオヤナギは受付に挨拶して図書室を出たが閉めたドアがバターーンと大きな音を立てた。

読めなかった本は貸してもらえた。どうも、手足が変に動くので、大きな音が出るし、なんと言うか、肩をいからせて歩いているようで・・・・自分でやっていて、自分で萎縮してしまった。


オオヤナギが部屋に戻るとテーブルに食事が置いてあった。それをみるとお腹がグユーーーと鳴った。

考えてみるとコンビニを出たのがお昼前、こっちに来ていろいろあって・・・向こうだと真夜中くらいの時間かも・・・・興奮していて疲れを感じなかったのだろうか?・・・・


とりあえず。座ってナイフとフォークを持ったが、扱いが難しい・・・がちゃがちゃうるさい音を立てながら食べ終わり・・・・シャワーっと思いながらベッドに倒れ込んだ。





翌日、オオヤナギは目が覚めるとシャワーを浴びて着替えた。クローゼットにある服はどれも神官見習いの服だ。



彼は今日も鏡に写った自分の顔をみて「うわっ」と言ってしまった。無理もないと思う。

嫌がらせとイジメを自分に対して繰り返してきた相手の顔が自分の顔の代わりにあるなんて・・・・

くやしい事にやつは見た目に関しては、文句のつけようがない。茶色の髪に茶色の目、彫りの深い顔。すらりと背が高く。足も長い。勉強も出来れば、運動神経も良い。当然もてもてだった。

反してオオヤナギは、目と髪は黒。小柄で細っこくて、成績は良かったがそれだけ、運動もだめ・・・・

そんな雑魚のオオヤナギをミツルギは目の敵にしていたのだ。

ボスのオオヤナギの取り巻きも右に習えをして、彼は昼休み中あっちにジュースを届け、こっちにコーラを届けてとまともに食事も出来なかった。

それがやっと高校を卒業して目標の大学にはいり、ほっとした所であいつに会ってこんな所まで連れてこられた。

これから自分を見るたびにぎょっとするのはゴメンだ。なにかいい方法はないかとオオヤナギは考えた。

いい方法はなにも出て来ない。かわりにため息が出て来た。

その時、ノックの音がした。

「はい」と返事するとブラウンさんが食事の乗ったお盆を持って入って来た。

「おはようございます」とオオヤナギが挨拶すると

「おはよう、これをどうぞ、時間になったら迎えによこします」と出て行った。



がちゃがちゃと賑やかな音を立てて食事をすませると、神子について書いてある本を読んだ。

オオヤナギが予想してたより神子は凄かった。

治癒が出来る、治癒が出来るものはそこそこいるが、神子は抜群に出来る。大抵の怪我は治せる。浄化が出来る・・・・これをやって貰いたいから神子を呼ぶのだ。歴代の神子はこの浄化をやって国を救った。


どこかに・・・・大抵遠くの怖い場所だ。そこに瘴気が溜まると魔獣が凶暴になり被害がでる。その瘴気を浄化でなくすのが仕事だ。

神子じゃなくてよかったとオオヤナギは思った。そんな怖い所なんて行きたくない。


そうだ、魔力がどうだとか、魔法がどうだという世界だ。魔力を感じようと床に座って足を組んだ。驚く程柔らかく足が組めた。

流石ミツルギと思った自分に凹んだ。

へその下を意識した。昨日はゴルフボールより小さかったそれはゴルフボールくらいになっていた。

これもミツルギ効果かと、感心しながら悔しかった。

とドアがノックされた。立ち上がりながらオオヤナギは返事をした。

迎えに来たのはブラウンさんではなく、同じ服装の神官見習いだった。

オオヤナギを見上げてちょっと驚いたようだが

「どうぞ、こちらです」と歩き出した。オオヤナギは肩をいからせ、足音高くついて行った。


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