神子の余分

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
15 / 31

14 伏し目がちの冒険者 フェルナンド目線

しおりを挟む
一年のぶりにこの町に戻って来た。ここは国で二番目の町で冒険者も多く、とてもいごこちのいい町だ。


ギルドに行くと、顔なじみの冒険者たちに囲まれた。

「フェルナンドさんだ」「お久しぶりです」「戻ったんですね」「あっフェルナンドさん」

「戻って来た。またよろしくな」と俺は返した。

一年経つと成長しているのがわかる。ひょろひょろの少年ががっちり、しっかりした体つきになり、顔の輪郭も引き締まっている。

俺の視界の端になにか輝くものが写った。そこにいたのは男だった。茶色の髪に茶色の目、少しおおきめのマントを羽織っていた。なにかが光の加減で光ったのだろう。そう思って冒険者たちと話を続けたが、その男をつい目で追ってしまった。

男は俺を気にすることなくギルドを出て行った。


翌朝、その男を見かけた。薬草採取の依頼を受けていたが、そこに赤毛の男が寄って行って、話しかけていた。


「なぁルーク。そんなしょぼい依頼なんかやめて俺たちと一緒に行こう。魔法士でソロなんて無理だろ。俺たちが守ってやるよ」

「僕は守ってもらうような所には行かないよ。薬草を取るのが好きなんだ」

「俺たちが守って奥へ行けば、もっと薬草が取れるだろう。ついでも狩りするから手伝ってくれ」

「いや、俺は一人が好きだから」

「いやぁ、実力を生かさないのはもったいない」と赤毛が目で他の男に合図すると男が四人でルークと呼ばれた男を取り囲んで歩き出した。

「仕方ない、今日だけだぞ。それから薬草は必ずとるからな」とルークが言いながら歩いて行った。

よく見るとルークの髪は金茶色、瞳は黒に近い茶色だ。あの目に自分が写る所をみたい・・・はっとした何を考えてるんだ。俺とした事が・・・・だが・・・気づいたら、彼らの後を追っていた。


赤毛の男はルークのそばを歩きながら、いろいろ話しかけている。やがて一行は森のなかへ入って行った。

ルークが赤毛の男や他の男に注意していた。


「ここからは魔獣が出るから静かにしてくれ、無駄に戦いたくない」

「相変わらず慎重だね、ルークは」と赤毛が言うとルークは

「怖がりだからだよ」と答えた。ただ、それから彼らは黙って歩いて行った。

「待って」と言うとルークは薬草を摘んでいた。一応、他のやつらも薬草を摘んでいるようだ。

しばらくするとルークが

「待たせてすまなかった充分だ」と言うと一行はまた歩き出した。しばらくするとルークが立ち止まり

「三頭向かって来ている」と言った。

ルークはすっと後ろに下がり、赤毛ともうひとりが剣を抜いた。ひとりはルークと並んで弓を構えた。

一人は少し脇により盾を持って備えた。


するとルークが指し示した方向から、角狼が走ってきた。すぐさま盾を構えた男が、盾を叩いて角狼を引きつけた。

っと一番前の一頭がもんどりうって倒れた。前足がまとめて拘束されている。そこに後ろの二頭がぶつかって三頭とも転がった。

そこに剣を持った二人が斬りかかった。一頭は起き上がると盾に向かって突進したが、盾を持った男はがっちり受け止めた。

その角狼に弓を持っていた男が、剣を抜いて斬りかかったが、すこし危ない。だが、赤毛が加勢にはいり無事仕留めた。

ルークは一応剣を抜いていたが、使うことはなかった。一行は角狼の毛皮を剥ぎ、魔石を取り出した。

手を洗いながら、

「ルーク。さすがだな。この水、ありがたいよ。だけど俺たちがいて良かっただろう」と盾を持った男が言った。

「そうだよ、俺たち息が合ってるよな」と赤毛が、ルークの肩を抱いた。



その後彼らは、薬草を摘み、双角狼を討伐していた。この時もルークは三頭が来ることを予告した。

毛皮と肉を取っているが、ルークがちょっと青い顔になっている。


ここで彼らは少し休憩すると帰り始めた。

俺は見つからないように脇道に潜んだが、ルークが足を止めじっと俺のほうを見てきた。

「どうした?なにか来そうか?」

「うん、気配がしたような気がしたけど・・・気のせいかな」

「ルークの怖がりがでたんだな」

「俺たちといれば安心だぞ」と赤毛の男は冗談めかしてルークの手を取った。

「やめろよ。エスコートはいらないよ」とルークが言うと赤毛はあっさり手を離すと

「よし、最後まで気を抜かずに帰るぞ」と言うとルークに向かってにっと笑った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI
BL
 辺境の地で自然に囲まれて母と二人、裕福ではないが幸せに暮らしていたルフェル。森の中で倒れていた冒険者を助けたことで、魔法を使えることが判明して、王都にある魔法学園に無理矢理入学させられることに!貴族ばかりの生徒の中、平民ながら高い魔力を持つルフェルはいじめを受けながらも、卒業できれば母に楽をさせてあげられると信じて、辛い環境に耐え自分を磨いていた。そのような中、あまりにも理不尽な行いに魔力を暴走させたルフェルは、上級貴族の当主のみが使うことのできると言われる血統魔法を発現させ……。  カテゴリをBLに戻しました。まだ、その気配もありませんが……これから少しづつ匂わすべく頑張ります!

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた。

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエルがなんだかんだあって、兄達や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑でハチャメチャな毎日に奮闘するノエル・クーレルの物語です。 若干のR表現の際には※をつけさせて頂きます。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、改稿が終わり次第、完結までの展開を書き始める可能性があります。長い目で見ていただけると幸いです。 2024/11/12 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

【本編完結】まさか、クズ恋人に捨てられた不憫主人公(後からヒーローに溺愛される)の小説に出てくる当て馬悪役王妃になってました。

花かつお
BL
気づけば男しかいない国の高位貴族に転生した僕は、成長すると、その国の王妃となり、この世界では人間の体に魔力が存在しており、その魔力により男でも子供が授かるのだが、僕と夫となる王とは物凄く魔力相性が良くなく中々、子供が出来ない。それでも諦めず努力したら、ついに妊娠したその時に何と!?まさか前世で読んだBl小説『シークレット・ガーデン~カッコウの庭~』の恋人に捨てられた儚げ不憫受け主人公を助けるヒーローが自分の夫であると気づいた。そして主人公の元クズ恋人の前で主人公が自分の子供を身ごもったと宣言してる所に遭遇。あの小説の通りなら、自分は当て馬悪役王妃として断罪されてしまう話だったと思い出した僕は、小説の話から逃げる為に地方貴族に下賜される事を望み王宮から脱出をするのだった。

公爵令息は悪女に誑かされた王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...